(本記事は、保手浜洋介氏の著書『相続税は過払いが8割』かんき出版、2018年6月11日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

土地の使い方でも評価はガラリと変わる

相続税は過払いが8割
(画像=Svitlana Hrabova/Shutterstock.com)

土地の区分(分け方)によって相続税は変わってきますが、これを「評価単位の見直し」と言います。

土地を評価する際には、「その土地をどのように利用しているか」という視点で、土地の権利の状況を考慮して「評価単位」を定め、それに基づいて評価することになります。

「評価単位」の見定めは土地評価のスタート段階で行うことなので、ここで間違えてしまうと最終的に正しい結果にたどり着くのはほぼ不可能です。

それだけ、重要な意味を持っているということ。

しかし、残念ながら、スタートラインでつまずくケースが非常に多いのです。

●区分を変えただけで、2000万円が戻ってきた

東京近郊に在住のKさん(60代)のケースがその1つです。

Kさんが相続した地続きの900平方メートルの土地には2棟のアパートが建っています。

敷地は個人の所有で、建物(アパート)は2棟とも同族会社の所有となっていました。

Kさんから依頼された税理士は、アパート2棟を別々に、それぞれの敷地を区分して評価し、6000万円ずつ合計1億2000万円に相当する資産として申告手続きを行っていました。

Kさんから相談を持ちかけられた私たちは、その「評価単位」が適切だったかどうかというポイントからも、土地の再評価をしてみたのです。

そして、私たちは、国税庁のホームページで「土地の評価は借地権者ごとに評価する」と記されていたことに着目しました。

この内容から、私たちは2つのアパートが建っている敷地を一体として評価を行ったわけです。

アパート1棟当たりの敷地は450平方メートルで、2つを一体化させれば900平方メートルに達します。

その結果、「広大地」に該当する可能性が出てきました。

私たちはこの土地を広大地として税務当局に認めてもらえるようレポートを作成し、結果として敷地全体の評価を6700万円にほぼ半減することができました。

そして、戻ってきた税金は2000万円を超えたのです。

●アパートと駐車場の敷地を一体評価して、1200万円の還付

同じく「評価区分」の見直しという方法で税金を取り戻せた例として、大阪府在住のYさん(50代)のケースも挙げられます。

こちらは、敷地内に1棟のアパートと入居者専用の駐車場がある土地を相続したというパターンでした。

具体的には、図のような相続財産です。

手続きを担当した税理士はアパートのある敷地と駐車場のある敷地との2つに区分したうえで、前者を7000万円、後者を4000万円、合計1億1000万円の資産として申告を行っていました。

しかし、私たちは実際に現場も確認し、入居者専用でアパートの附属施設となっている状況を踏まえれば、2つに区分して評価するのはおかしいと考えました。

そして、それら2つを一体評価し、「広大地」に当てはまるとして評価の引き下げを行ったのです。

税務署側もこの指摘は妥当だと判断し、敷地全体の評価は6800万円となって、およそ1200万円の税金が戻ってきました。

土地の分け方だけで、こんなに評価額と税額が変わってくることがあるので、覚えておいてください。

道路の種類が違えば、7割以上も下がる!

建物を建てる際には建築基準法で定めた道路と2メートル以上接していることが義務づけられている。この条件を満たしていない土地は「無道路地」と呼ばれ、一部の例外規定を除いて、建物を建てられないのが原則です。

この「無道路地」には、次のような土地が該当します。

(1)建築基準法上の道路とはもちろん、単なる道とも接していない。
(2)道に接しているものの、それは建築基準法で定められている道路に該当しない。
(3)道路と接しているものの、2メートル未満にとどまっている。

おそらく、(1)は誰が見ても見分けがつくでしょうが、(2)の道路か単なる道なのかの判断は容易ではないでしょう。驚くべきことに、建築基準法上の道路ではないにもかかわらず、路線価が定められているケースもよくあります。

ですから、そういった事情を知らなければ、建築基準法上の道路か否かもロクに確認せず、単純に路線価を当てはめて評価を行ってしまうことになります。

次に紹介するのも、まったく自覚のないまま相続税を過払いしていた例です。

●無道路地とわからず、4倍以上の値付けをされていた!

東京都在住のTさん(40代)が相続したのは、図のような土地で、道とは接しているものの、道路とは接していない「無道路地」でした。

Tさんの土地と接していたのは、「協定道路」と呼ばれるものだったのです。

「協定道路」とは、その道に接している住民や通行者が利用に関して協定を結び、覚書などを作成したうえで、「建築基準法43条1項ただし書による許可」という制度に基づいて「接道義務」を免除されたものです。

周辺に広い空き地があるなど、交通面や安全面などにおいて支障がないと所轄の自治体の建築審査会が判断すれば、道路と接していなくても建物を建てられるわけです。

こちらは「ただし書き道路」とも呼ばれています。

これらの土地は、すんなりと建物を建てられないだけでなく、将来的にも建て替えをするたびに建築審査会の許可が必要です。

このように制約のある土地だったのですが、Tさんの土地の前にある「協定道路」にもなぜか路線価が定められていました。

管轄の自治体で確認したところ、容易には建物を建てられない「無道路地」とわかり、更正の請求を行うと5000万円と評価されていた土地が1200万円まで下がり、もともと払っていた相続税1250万円のうち、900万円近くの税金が還付されました。

とくに東京の都心部には「協定道路」が散在しているので、こうした評価ミスが数多く潜んでいるはずです。

相続税は過払いが8割
保手浜洋介(ほてはま・ようすけ)
税理士法人アレース代表社員税理士、公認会計士、行政書士、宅地建物取引士。慶應義塾大学経済学部卒業後、大和銀行(現りそな銀行)勤務を経て、監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)に入社。外資系金融機関や大手電子部品メーカーの金融商品取引法監査および会社法監査の業務に携わったのち、税理士法人トーマツ(現デロイトトーマツ税理士法人)にて国際税務などの大型案件に従事。2012年、独立。2015年、資産税に特化した税理士法人アレースを設立。相続税過払いを1件でも減らすべく尽力し、これまで手がけた案件は100%還付に成功している。 ※画像をクリックするとAmazonに飛びます