(本記事は、保手浜洋介氏の著書『相続税は過払いが8割』かんき出版、2018年6月11日刊の中から一部を抜粋・編集しています)
顧問税理士との関係は保ちつつ、相続税専門のプロに相談する
国税庁によれば、2016年に亡くなった人の数は約131万人で、その中で相続税の課税対象となったのは約万6000人だそうです。
課税対象資産の評価額は合計で兆7813億円で、被相続人(財産を残した人)の1人当たりの遺産額の平均は1億3960万円でした。
そして、税額の合計は1兆8681億円で、被相続人1人当たりでは1764万円となっています。この数字を見て、平均の納税額は思っていたほど高くなかったと感じた人がいるかもしれません。
ただ、年間に死亡した人の数に対し、相続税が課せられる人の割合は2014年まで4%台で推移してきましたが、基礎控除が縮小された2015年以降は8%台に倍増しています。
さらに注目したいのは、相続財産の金額ベースにおける構成比です。
土地が38%で最も高いウエイトを占めており、次いで現金・預貯金等(31.2%)、有価証券(14.4%)の順となっています。
土地の割合が高いということから、「土地の相続税において過払いの疑いのある人が少なくない」という可能性が見えてきます。
年間約10万6000件の相続税申告に対し、日本全国に存在している税理士の数は、日本税理士会連合会によると、7万7327人(2018年3月末時点)。
税理士1人当たり1年間に1.3件ほどしか相続税の申告案件がないことがわかります。
それに対し、同じく国税庁によれば、2016年分の所得税に関して確定申告書を提出した人の数は2169万人、法人税の申告件数は286万1000件に上りました。
そのため、大半の税理士は、もっぱら個人の所得税や企業の法人税の申告をビジネスの中心に位置づけており、大多数の税理士は相続税の申告に関する実務経験がほとんどないのが実情です。
きわめて税負担の重くなる相続税の申告において、土地などの財産評価について、経験不足・知識不足で臨むのは、お客さまにとって致命的なリスクをもたらすものであると言っても過言ではありません。
自分がすでに済ませた相続税の申告内容に不安を感じ始めているなら、相続税を専門とする税理士にきちんと調べてもらったほうがいいでしょう。
もしも、以前から顧問を務めてきた税理士に相続税の申告も任せていたなら、あくまでセカンドオピニオンという位置づけで、申告内容を精査してもらえばいいでしょう。
評価に間違いがなければそれでよしということになりますし、評価ミスが発覚した場合も、相続税を専門とする税理士にはその「更正の請求」手続きのみに携わってもらえばいいのです。
そして、所得税や法人税などの申告に関わる税務処理については、今まで通り顧問の税理士に依頼すれば、角が立たなくて済むはずです。
申告時期を今すぐ確認!
相続税の還付請求の期限は申告後5年以内です。相続税の申告は相続開始から10ヵ月ですから、還付には亡くなった時点から5年と10ヵ月の期限があります。
私たちのような相続税の申告を数多く手がけてきた事務所であれば、最短で1~2ヵ月で対応しますが、経験が少ない事務所の場合は半年以上の時間がかかることもめずらしくないため、まずは早めに問い合わせることが大切です。
その際、相続税の申告書を手元に用意して相談しましょう。経験豊富な税理士が対応した場合、還付の可能性について、その場である程度の情報をもらえるはずです。
相続財産に土地が含まれていた人は、念のために専門家の見解を聞いておきましょう。
不動産の評価方法には、イレギュラーなケースがたくさんあるからです。