私のFP事務所では保険に関する悩みが多く寄せられるのですが、中には「相続税対策」としての生命保険の活用について相談を受けることもあります。いわゆる富裕層や企業経営者など一定の資産を有する層(資産家)からの相談が多いのですが、生命保険は病気やもしもの時の備えとしてはもちろんのこと、相続税を節税するうえでも有効です。
彼ら資産家が相続税対策として生命保険を活用する理由は、死亡保険金が「みなし相続財産」として優遇されるからです。死亡保険金は民法上は相続財産に含まれませんが、相続税法では相続財産とみなされます。これを「みなし相続財産」と言いますが、相続税の基礎控除と別枠で「死亡保険金の非課税枠」があり、節税に利用できるのです。この非課税枠は「法定相続人×500万円」となります。たとえば法定相続人が5人の場合、2500万円までは相続税が課税されません。
ただ、注意を要するのは、生命保険の契約の仕方によって贈与税が適用されたり、雑所得が適用される「落し穴」がある点です。相続税対策のつもりで生命保険を契約したにもかかわらず、いざ相続の日を迎えたら、なんと贈与税の対象になっていた、という笑えない事例もあります。
今回は「相続税対策と生命保険」をテーマにお届けしましょう。
その「保険で相続税対策」本当に大丈夫ですか?
相続税対策に活用できる保険は「終身保険」です。現在の終身保険は予定利率が低く「貯蓄性」ということではまったく魅力がありませんが、非課税枠が使えるので相続税対策には非常に有効な手段です。
一般的な契約の形を見てみましょう。たとえば、下記のような生命保険の契約は「相続税の非課税枠」が使えます。
契約者:夫
被保険者:夫
保険金受取人:妻
しかし、良く誤解されるのが以下のケースです。妻の終身保険の保険料は夫が支払っているのだから契約者が夫になっても当然ではないかとの「思い込み」で下記のような契約になっている場合です。
契約者:夫
被保険者:妻
保険金受取人:夫
上記のケースでは「夫が支払ったお金が夫に戻ってくる」という形になってしまい、相続税ではなく一時所得となります。つまり、所得税・住民税の課税対象になり、税金を多く支払うことになるのです。こうして文章で説明すると理解しやすいかと思いますが、現実には上記のようなミスが意外と見られます。最大の原因は「思い込み」「勘違い」です。私はFPとして様々なお金の悩みと向き合う機会があるのですが、今回の相続税対策に限らず保険については相談者の「思い込み」「勘違い」に起因するミスが少なくありません。