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不動産収入の「損益分岐点」が法人化の決め手

いよいよ平成27年1月1日より、相続税の基礎控除減額がスタートになりました。このところの大都市圏の路線価上昇に伴い、課税評価額が上がる土地保有者には痛い話ですが、最近はサラリーマンが「会社経営者」となり、不動産経営で相続資産を守る方法が注目を集めています。ところが、最近はビル所有者や賃貸物件所有者に「法人化のメリット」ばかり伝えるケースが多いようです。重要なポイントは「損益分岐点」ですが、これを外すと返って税負担が重くなります。詳しく説明していきましょう。


「不動産規模」をよく考え、法人化する

不動産収入の多くは「賃貸ビル、マンション経営」や「駐車場経営」というものです。以前は一部の資産家が多数物件を所有していましたが、現在は多くの所有者に分散され、本業とは別に副収入としているケースが増えました。そのため、個人保有の形態のまま代々引き継ぎ、莫大な所得税を払っているケースが散見されます。

これに対して、「不動産所有法人」というものを設立し、自らが代表となる人が増えています。税制改正により同じ不動産経営でも、個人所得より法人所得にした方が「税率が低い」ケースが出て来たのです。実は、固定資産税や都市計画税は、個人法人での納税負担は変わりません。

問題なのは、法人税も所得税(個人)も「累進課税方式」ということです。ですから、収入から経費を差し引いた所得が800万円、あるいは1000万円を超えた時点で、法人税の方が個人の所得税、復興特別所得税(2037年(平成49年)まで継続)、また事業税などを含めても安い場合は、法人化するメリットが十分出て来るといえるのです。


「2次相続」を想定した法人化を行う

個人事業から法人化への移行は、タイミングやその「将来図」を考えておかなければなりません。相続は「1次相続」「2次相続」を分けずに、連続性を前提とします。1次相続の場合は、配偶者と子供に相続されるため、「不動産は配偶者」に「金銭資産は子供」という遺産分配がよく見られます。配偶者控除の利点を使うためなのは、いうまでもありません。

ところが、2次相続では配偶者控除はなく、基礎控除だけですから、残された不動産を巡っての「分割問題」あるいは「納税資金問題」が発生します。そこで、不動産所有法人として法人化し、収益を「社員である子供たち」が分配するならば、問題は起こらなくて済みます。また、株式会社にした場合は「代表取締役」を子供にしておくことも考えましょう。

株式会社は「出資割合」で経営権を掌握できますので、まず「父」が代表になることが多いのですが、あえて「母」にしておきます。1次相続で「父」が死亡した際、もし不動産経営が発展していて、株式の評価額が上がっていた場合、相続税が莫大になることがあるためです。2次相続では「母」の株式がターゲットになりますので、生前に子供たちに株式譲渡していくことで、相続税の負担を軽減します。むろん贈与税の控除を使うなど、対策が必要です。


個人保有から法人保有への「手続きと諸費用」を知る

さて、ここまで不動産業の法人化と、相続のタイミングなどを列記してきましたが、大事なことは「法人化」のメリットとデメリットが「将来どうなるか」ということです。よく、法人化というと「株式会社」だけを思い浮かべますが、実は「合同会社」という方法も選択できるのです。株式会社も合同会社も、法務局に登記する費用などがかかりますが、合同会社の方が安く済みます。そして、なにより株主総会の実施(議事録の作成)、 年一回の決算報告などの義務が生じ、合同会社には不用です。そして出資額の大きさで報酬額を決める必要もありません。

株式会社にするメリットは、やはり不動産経営から多角化を考えて行く際に「出資者」を広く募集できる点ですが、不動産所有法人だけで納まる場合は、合同会社という選択肢も考えて損はないでしょう。最後に、個人から法人へ所有権が移動するのは「建物」です。もし「土地」を個人から法人へ「売却」した場合(実際は名義が変わるだけ)は、ゼロ円で法人が借地権を買うことになり、多額の法人税からは逃れられません。


相続で慌てるまえに、法人化するメリットとは

相続は単に資産が遺産に変わる、だけではありません。生前に遺言書を用意していた被相続人の遺志が公開されてしまえば、遺産分割は相続税の有無に関わらず、執行されなければならないのです。逆にいえば、不動産収入が「年金代わり」と考える世代を親に持つ人や、自分たちが不動産収入を得ている人は、今のうちから積極的に資産防衛を図るメリットは、有り余るほどといってよいでしょう。

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