相続はいつか誰もが経験することである。にもかかわらず、実際に相続税の申告をしたことがある人を除いて、いつまでに誰が手続き行わなければならないかなど、意外と知られていない。ここでは、相続税の申告期限を中心に、相続税の納付期限や間に合わなかった場合の対応など、詳しく説明したい。

井上 通夫
井上 通夫
行政書士。大学卒業後、大手信販会社、大手学習塾などに勤務後、福岡市で行政書士事務所を開業。現在、相続・遺言、民事法務(内容証明、契約書、離婚協議書などの作成)、公益法人業務、各種許認可業務など幅広く担当。

相続税の申告期限に関するQ&A

相続税申告書 添付書類
(画像=PIXTA)

Q


タイムリミットはいつか?

相続税の申告期限は、被相続人が亡くなって10ヵ月以内である。正確には、相続が開始した日の翌日から10ヵ月までだ。被相続人が2020年2月1日に亡くなった場合、2020年12月1日までということになる。

相続税の申告期限は、被相続人が亡くなって10ヵ月以内である。正確には、相続が開始した日の翌日から10ヵ月までだ。被相続人が2020年2月1日に亡くなった場合、2020年12月1日までということになる。


Q


誰が、いつ、どこに申告するのか?

申告は相続によって財産を得た人が行うことになる。ただし、相続人が2人以上いる場合は、1通の申告書に相続財産を取得した相続人全員が記載する必要がある。提出先は、被相続人が死亡時に住んでいた住所地を管轄する税務署である。

申告は相続によって財産を得た人が行うことになる。ただし、相続人が2人以上いる場合は、1通の申告書に相続財産を取得した相続人全員が記載する必要がある。提出先は、被相続人が死亡時に住んでいた住所地を管轄する税務署である。


Q


期限に間に合わせるための申告書の記載方法とは?

相続税の申告書は記載する書類、箇所が多いため、できるだけ早めに申告書を入手しよう。国税庁のホームページからダウンロードできるほか、税務署でも入手できる。相続財産や相続人も早めに確定させる必要がある。

相続税の申告書は記載する書類、箇所が多いため、できるだけ早めに申告書を入手しよう。国税庁のホームページからダウンロードできるほか、税務署でも入手できる。相続財産や相続人も早めに確定させる必要がある。


相続税の申告期限はいつか?

相続税の申告期限は、被相続人が死亡した翌日から数えて10ヵ月以内である。法的には、「相続が開始した日から」という書き方をしているが、意味は同じである。

「10ヵ月以内」と聞くと、十分な時間があるように思えるが、相続財産や相続人の確定、相続放棄の期限(3ヵ月以内)などを考えれば、意外と時間は少ない。期限内に申告書、添付書類を提出できるように、綿密な準備をしておかなければならない。

相続税の納付期限はいつか?

相続税の納付期限は、申告期限と同じである。つまり被相続人が死亡した翌日から数えて10ヵ月以内だ

納付は、相続人全員分をまとめて支払うのではなく、相続人が個別に行う。納付先は、税務署や金融機関、郵便局の窓口などである。

基本的に、相続税は現金一括で支払う。現金以外の財産あるいは分割で支払うことは原則として認められていない。

相続税の期限を過ぎたときのペナルティとは?

期限内に相続税の申告、納付をしなかった場合には、延納税が課されることになる。

延納税の利率は、年月日によって異なる。例えば、2018(平成30)年1月1日から2020(令和2)年12月31日の3年間を対象とした延滞税の率は、以下のとおりである。

・納付期限の翌日から2ヵ月を経過する日まで……2.6%
・納付期限の翌日から2ヵ月を経過する日の翌日以後……8.9%

相続税の納付期限から2ヵ月内にすべて納めるか、2ヵ月を超えても滞納しているかによって延滞税の利率は大きく異なる。

相続税の期限を延長するには?

相続税の申告は、基本的に期限の延長は認められない。被相続人が亡くなって10ヵ月以内には、相続税の申請を行わなければならない。ただし例外がある。天災などの不可抗力によって、物理的に申請できない場合だ。どのような場合に申請の延長が認められるかは、相続税を取り扱う国税庁が決定する。

国税庁では、例えば新型コロナウイルス感染症に感染した場合、あるいは新型コロナウイルス感染症の影響で以下のような状況のために、申告が困難なときは、申告期限の延長を認めるとしている。

延長期限は、「申請することができないやむを得ない理由」が止んでから2ヵ月以内となる。ただし、相続税の申告期限後に申告書を提出すれば、その提出日が納税の期限となる。よって、申告書の提出前に納税すれば、滞納税がかからない。

相続税の納付期限までに支払えないときには?

前述のように、相続税は現金一括払いが基本である。しかし、相続財産のうち、大部分を不動産が占める場合、つまり現金が極端に少ないケースでは、期限を延ばして納税する「延納」という方法や不動産などを現金の代わりに納税する「物納」という方法がある。

延納は、相続税を分割して5~20年かけて支払う方法である。この場合、本来の相続税に加えて、ローンの利息に当たる「利子税」という税金が加算される。ただし延納は無条件に認められるものではなく、以下の4つの条件を満たさなければならない。

  1. 相続税額が10万円を超えること
  2. 金銭で一度に納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額を限度としていること
  3. 延納税額及び利子税の額に相当する担保を提供すること。なお、延納税額が50万円未満で、延納期間が3年以下である場合、担保は不要である
  4. 相続税の申告期限(延納申請期限)までに、延納申請書に担保提供関係書類を添付して、税務署長に提供すること

延納のための担保として提供できる財産は、以下の6つである。

  1. 国債および地方債
  2. 社債その他の有価証券で税務署長が確実と認めるもの
  3. 土地
  4. 建物、立木、登記された船舶などで保険に附したもの
  5. 鉄道財団、工場財団などの財団
  6. 税務署長が確実と認める保証人の保証

これらの担保は、相続や遺贈で取得した財産に限定されない。相続人が元々所有していた財産、共同相続人や第三者が所有している財産でも構わない。ただし、担保にふさわしくない財産や必要な担保額を満たしていない財産は、担保として認められない。

一方、物納は相続税を現金で納税する代わりに、有価証券や土地などで納税する方法である。延納を選択しても、現金で納税することが困難な場合は、納税者の申請によって、納付困難な金額を限度として、認められる。

なお、物納できる財産は、相続や遺贈で取得した財産に限られる。土地を物納する場合は、相続税評価額になる。

物納できる財産は、次の4つに限られ、この順番で充当される。

  1. 国債、地方債
  2. 不動産、船舶
  3. 社債、株式、証券投資信託、貸付信託の受益証券
  4. 動産

物納するためには、次の4つの条件をすべて満たす必要がある。

  1. 延納を選択しても金銭で納付することを困難とする事由があり、かつ、その納付を困難とする金額を限度としていること
  2. 申請財産は、納付すべき相続税の課税価格計算の基礎となった相続財産のうち、先述した物のできる財産1~4であり、日本国内にあること
  3. 物納しようとする財産が、管理処分不適格財産に該当しないものであること。その財産が物納劣後財産に該当する場合には、他に物納に充てるべき適当な財産がないこと
  4. 相続税の申告期限(物納申請期限)までに、物納申請書に物納手続き関係書類を添付して、税務署長に提出すること

期限までに相続財産が確定しないときは?

前述したように、続税の申告期限は、基本的に延長できない。したがって、期限までに相続財産を確定できないことを理由に、申告しない(できない)という事態は避けなければならない。

相続開始から申告まで10ヵ月間あるので、相続財産・相続人の確定を行い、計画的に申請書の作成、添付資料の収集を行う必要がある。

申告内容が間違っていたときは?

相続税の申告後に、申告内容が間違っていた場合は、改めて正しい税額に修正する。これを「修正申告」という。

修正申告で、新たにプラスになった税額は、申告を行った当日に追加納付しなければならない。税務署から税務調査が実施される前に、納税者から修正申告を行った場合には、加算税は課税されない。もし税務調査後に指摘されて、修正申告を行えば、故意でなかったとしても、申告漏れと取られてしまう。そうなると、延滞税や加算税が課されることになる。

一方、実際の相続財産よりも金額を多く計算して申告した場合には、提出した税務署に対して、納めすぎた税額の払い戻しを請求できる。これを「更生の請求」という。ただし、更生の請求ができるのは、原則として申告期限から1年以内である。1年を超えると請求できない。

相続税の申告が終わり、相続税を納めても、相続財産の内容を再度検証しておく必要がある。相続財産に誤りがあれば、すぐに修正申告するなどの対応が必要だ。

納付後に新たな相続財産が見つかったら?

相続税を納付した後で、新たな相続財産が見つかった場合には、「修正申告」あるいは「更生の請求」を行う。ただし、その前に新たに見つかった相続財産の分割をする必要がある。

相続財産については、すでに「遺産分割協議書」を作成し、財産の分割は終了している。しかし、新たに相続財産が見つかったわけなので、その財産について、再度、相続人全員で話し合って、誰がどの割合で相続するかを決定しなければならない。その結果について、「遺産分割協議書」を作成し、相続人全員の署名、捺印(実印)が必要となる。

「遺産分割協議書」ができれば、新たに見つかった相続財産を証明する書類を添えて、「修正申告」を行うことになる。

相続税の専門家を探すコツ

遺産分割などの相続に関する業務は、弁護士、司法書士、税理士、行政書士など、多くに士業が参入している。だが、相続税の申告は、税理士にだけに認められた「独占業務」だ。税理士は、税の申告を行うスペシャリストなので、基本的には誰に頼んでもよいだろう。

しかし税の申告といっても、税には所得税、固定資産税、贈与税、相続税など多くの種類があり、税の申告者には個人、法人(会社)の2通りある。よって、個人申請の相続税を得意とする税理士を探す必要がある。

税理士を探すのに最も早く有効な方法は、ホームページのチェックである。その際、相続に関する業務を専門としているかどうかがポイントとなる。相続を専門としている税理士だと記載されていれば、相続税に関するスペシャリストと考えても構わないだろう。