本記事は、岡野 雄志氏・舟田 浩幸氏の著書『土地評価に強い税理士に頼んだら相続税がビックリするほど安くなりました』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

住宅を販売する男性
(画像=ビーボーイズ / stock.adobe.com)

こんな仲介業者には気をつけようー①売却で後悔しないために物件査定の基礎知識を身につけるー

査定価格は売却価格ではない

不動産を売却する際、査定価格が高値の不動産会社と媒介契約を結べば、「高く売れるのでは?」と思うかもしれません。しかし、不動産の査定価格は、不動産会社によってかなりの幅が出ることがありますし、査定価格=売却価格ではありません。査定価格だけで不動産会社を選ぶと、後々こんなはずではなかったと後悔することもあり得ます。不動産の売却を考えている人は、不動産査定に関する基礎知識を身につけておきましょう。

基礎知識としてまず押さえておきたいのが、不動産会社によって、不動産査定価格と実際に売却できた価格との差が大きいケースが多々あることです。売り出し価格・時期等を間違えると、売主が損した例もあります。一般に、不動産会社の物件サイトで行うネット机上査定では、「所在・面積・築年数・用途地域(容積率、建ぺい率)・周辺売り出し物件、周辺成約物件、マンションであれば所在階、間取り等」の情報を記載すれば、これらの項目をもとに大まかな査定価格を示してくれます。ところが一部の不動産会社では、この机上査定価格を操作して、反響が取得できるように机上査定価格を高くしている会社があります。また、机上査定では、騒音などの立地条件や土地の形、建物の不具合、建築基準法等の細かな調査や高低差の有無の確認などを行っていないため、実際に現地調査をした結果、大幅に査定価格が下がるケースがあります。

不動産査定の依頼方法

不動産査定をする方法には、大きく分けて2つあります。

(1) 机上査定(AI査定を含む)

住所・所在、登記簿面積・建物面積、築年数、用途地域、駅からの距離、バス利用時間、住宅地図、接道方向、道路幅員、周辺の売り出し物件・成約物件などを確認し、査定価格を算出します。あくまで概算価格で、訪問査定価格との差が大きくなるケースがありますので、注意してください。特に相続時において遺産分割等の際には机上査定はおすすめできません。

(2) 訪問査定(現地確認を含む)

訪問査定の現地確認では、外観・部屋の状況とリフォーム履歴、道路からの高低差、日当たり、周辺環境、公道か私道(持分)か、接道、間口、土地の形、分割可か、適正な用途、古家であれば建物解体費用の概算、マンションであれば、修繕計画、管理費等、騒音、歩道があるか、隣地越境・境界等、役所調査等、不動産市況・引渡希望時期等を考慮して確認を行い、より確度の高い査定価格を算出します。そのため、本当の査定価格を知るには、現地訪問査定をおすすめします。

どんな査定も完璧ではありませんので、相場の確認を前もって自分で行っておくことが大切です。物件のあるエリアにおける不動産の売り出し価格の相場を調べ、自分自身が想定している金額が高いか低いか、適切であるかを判断しましょう。

なお、依頼する不動産会社が信頼するに足りるかどうかを見極めることも大切ですが、特に不動産会社の担当との信頼関係も欠かせません。査定内容について、きちんとした根拠を説明してくれる、信頼できる担当者を選ぶことをおすすめします。

こんな仲介業者には 気をつけようー②査定価格があまりにも高い不動産会社や囲い込みをする不動産会社に注意ー

契約をひかえたい不動産仲介業者とは?

不動産会社が提示する査定額には、法的な証明能力はありません。「契約をひかえたい業者」は一概に線引きできない面もありますが、査定額を吊り上げて契約をとろうとする業者がいます。

単純に査定額の高い業者と意図的に吊り上げている業者の違いを見抜くのはむずかしいものです。ではどうすればよいのか?その判断基準を詳しく見ていくこととしましょう。

⑴ 不動産査定価格があまりにも高い不動産会社

大手不動産会社・中小不動産会社を問わず、査定価格をかなり高くして、自社の仲介(媒介)で行えるようにする専属専任媒介契約や専任媒介契約を締結する業者がいます。その不動産会社は物件が高く売れないのを知っていて、このような契約を取得しようとするのです。

その後、こうした業者は2週間から3週間後、売主に「価格を下げましょう」と提案し、どんどん価格を本当の査定価格に近くして売却しようとします。この場合、売却時期を逃して、通常の査定価格以下になってしまうことがあります。

考えられるケースとして、本当の査定価格が当初5,000万円の戸建だとすると、7,000万円の査定価格を売主に伝えて媒介契約し、7,300万円から売却をスタートします。

普通は売れず、7,300万円から6,500万円に価格を下げ、それでも売れないと6,500万円から5,000万円に価格を下げ、結局、売れずに4,800万円に価格を下げてしまうようなケースです。

⑵ 囲い込みをする不動産会社

不動産売買における「囲い込み」とは、「売主と専任(専属)媒介契約を締結した不動産会社が、故意に自社のみで買主を見つけて両手取引をする行為」です。

通常、売主と媒介契約を締結したら、レインズ(不動産流通機構)に売却物件を登録し、他社の不動産会社にも買主を探してもらうようにします。他社がレインズを見て、条件に合う人がいる場合、その他社に、詳しい情報提供や物件の案内をしてもらい、購入希望がまとまった場合には契約を結びます。そして、売主は売主側の不動産会社に仲介手数料を支払い、買主は買主側の不動産会社に仲介手数料を支払います。これを片手契約といいます。

しかしながら、囲い込みをする不動産会社は、情報公開をなかなかしなかったり、申し込みが入っていないのに申し込みが入っているといったり、物件の案内を妨害するなど、他社の不動産会社のお客さまに申し込みさせないようにします。その間に自社が買い手を見つけて両手取引下図参照)に誘導します。これにより、売主は売却の機会を損失したり、条件の悪い契約を結ばされてしまう可能性があります。囲い込みによる両手取引は売主の利益にそむく行為であり、決して許されるべきでありません。

土地評価に強い税理士に頼んだら相続税がビックリするほど安くなりました
(画像=土地評価に強い税理士に頼んだら相続税がビックリするほど安くなりました)

考えられるケースとして、3,500万円のマンションの売却依頼を受け、他社のお客様から3,450万円で購入の申し込みをいただき、同時に自社のお客様から3,300万円で購入の申し込みがあった場合を想定してみましょう。

売主へは他社のお客様からの3,450万円での購入の申し込みを教えず、自社のお客様の3,300万円での購入申し込みで契約をまとめてしまうのです。

片手の仲介手数料は、3,450万円の場合は109万5,000円(税抜)です。ところが、3,300万円の両手取引の場合は、仲介手数料210万円(税抜)が囲い込みをする不動産会社に入ることになります。売主側の不動産会社は売主のためでなく、買主からも仲介手数料を得て、自社の利益を優先することになるのです。

査定が高い場合は、根拠を明確にしてもらう

査定額が極端に高い不動産会社を選ぶと、まず、購入希望者に割高物件とみなされてしまい、相手にされません。これを防ぐには、査定額が高い根拠を必ず確認することです。高く売れる戦略があるなど、その業者が適正価格を理解したうえで、高く売れる確信があるかどうかが重要なのです。

なお、高い査定額を売り出し価格とし、その後修正しても悪影響は残ります。売れ残りが続くと、適正価格に値引きしたとしても売れ残りというレッテルが貼られ、売れない可能性が高くなります。さらに値下げをすると、最終的に適正価格よりも下がってしまうこともあるのです。

査定額だけ高い不動産会社と契約しないポイント

自分で不動産会社と担当者を見分けるポイントとして、周辺エリアの売り出し物件の価格を参照したり、成約価格の参照、不動産市況の説明、査定価格の根拠を聞いたりして、不信感があれば契約をしないことが大事です。きちんとした査定価格を示してくれる不動産会社は、査定根拠や項目などを詳しく、理路整然と説明してくれます。

なお、媒介契約をあせる不動産会社ほど、何度も電話をしてきたりして、しつこい営業をかけてきます。こうした営業には毅然と対応することが欠かせません。

トラブルを避けるためにも、査定価格だけでなく、信頼できる不動産会社の担当者に任せることをおすすめします。

土地評価に強い税理士に頼んだら相続税がビックリするほど安くなりました
岡野 雄志(おかの・ゆうし)
税理士・行政書士。 岡野相続税理士法人代表社員。 1971年千葉県生まれ。 早稲田大学商学部卒業。 相続税を専門に取り扱う税理士法人の代表。著書に「納めてしまった相続税が驚くほど戻ってくる本」(あさ出版)。「得する相続、損する相続」「相続税専門税理士が教える 相続税の税務調査完全対応マニュアル」(ともに、幻冬舎メディアコンサルティング)がある。
舟田 浩幸(ふなだ・ひろゆき)
税理士 岡野相続税理士法人東京駅支店長。 1963年神奈川県生まれ。明治大学政治経済学部卒。 1987年、東京国税局に採用。東京国税局及び東京都、神奈川県の税務署にて勤務。 2016年、税理士登録。 2022年、岡野相続税理士法人東京駅支店長に就任。
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