自分が老齢になった時、年金がいくらもらえるのか気がかりだろう。将来の年金額を把握するには、毎年の誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」を活用すると良いが、その見方には注意点がある。決して面倒だからといって破棄せず、各項目の見方を知って老後の資金計画に役立てよう。

「ねんきん定期便」には年金がいくらもらえるかが明記されている

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(画像=Antonio Guillem/Shutterstock.com)

日本年金機構からハガキや封書が送られてきても、そのまま放置してはいないだろうか。「ねんきん定期便」は将来の年金給付額や保険料の納付状況が記された非常に貴重な資料だ。かつてのように年金事務所に赴かなくても年金の加入状況が分かり、申請しなくても自動的に送られて来る。

「ねんきん定期便」には、これまでの保険料納付の累計額と年金の見込み額が加入実績に応じて見積もられている。たとえば保険料納付額が800万円で、見込み年金額が80万円の場合、75歳までの10年間受給すれば元が取れるというように、老後の資金計画の参考にできる。

ただし見込み額はあくまでも年金の予想額である。その時点で分かっている情報をもとに計算されているだけで、その金額が保証されるわけではない。保険料を予想より多く払えば年金額も多くなるし、逆に少なくなれば年金は目減りする。

年金保険料は国民年金が60歳まで、厚生年金は就労している限り70歳まで支払いが続く。支払いを続けている以上、納付保険料納付額の累計は増える。

年金がいくらもらえるかの記載方法は年齢により異なる

「ねんきん定期便」で覚えておきたいのが、50歳未満と50歳以上では送られて来るハガキや封書の様式が異なるということだ。もうすぐ年金がもらえる年齢に達する人と、まだ現役で給与水準がどう変化するかも不明な人とでは、載せられる情報が違うからである。

50歳未満の人は加入実績を基にした予想給付額

現役世代の人が年金の受給見込み額を見ると「え、こんなに少ないの」と感じるだろう。50歳未満の被保険者向け定期便には、これまでの加入実績に基づいた年金給付額のみが記載されており、60歳まで支払う予定の保険料は考慮されていない。50歳未満の人は転職や給与水準の変化、年金の種類や区分の変更がある可能性が高く、見込み額の見積もりが難しいためである。したがって見込み額は少なく見積もられている。ただし今後、保険料を納付し続けることで年金額は増加していく。

50歳以上の人は60歳まで今の給与水準が続くと仮定した給付額

50歳を過ぎると大きな働き方の変更は少ないと見立てられる。年金の見込み額は現在と同じ条件で年金制度に加入し続けたと仮定して算出される。年金制度の改正や早期退職・雇用延長といった大きな変化がない限り、記載されている金額とほぼ同じ水準の年金がもらえると考えて良い。

また50歳以上の定期便は、50歳未満の様式よりも詳細になっている。これは老齢基礎年金と老齢厚生年金のほか、老齢厚生年金は報酬比例部分と経過的加算部分の内訳が記載されているからだ。老齢厚生年金の受給開始年齢は基本的に65歳からだが、「特別支給の老齢厚生年金」を受け取る資格のある人は60歳から64歳までの報酬比例部分と定額部分の内訳も確認できる。

35歳、45歳、59歳にはより詳しい年金加入履歴の封書が届く

「ねんきん定期便」は毎年、被保険者の誕生月に発送されるハガキタイプと、35歳と45歳、それに59歳という節目の時に発送される封書タイプの2種類ある。ハガキタイプは直近1年間の情報が記載されているが、封書タイプはこれまでの年金加入履歴や保険料納付状況、厚生年金の標準報酬月額の履歴が別表で同封されている。もらえる年金額の目安などは基本的にハガキタイプと変わらない。

年金がいくらもらえるかなど状況を確認する時の注意点

年金の状況を確認する際は、特に次のことに気を付けると良いだろう。

年金の加入期間は特に確認しておく

年金は加入期間が一定以上ないと受給資格がない。かつては保険料納付期間が合算して25年以上ないと年金がもらえなかったが、厳しすぎるとの批判を受けて2017年からは10年に変更されている。まずはこの条件を満たしているかチェックしておきたい。なお保険料免除期間がある人はその間を加入期間に含めて良い。

基本的な老齢年金以外にも、以下のような年金制度の恩恵を受ける条件を満たしているかの確認が必要だ。

・年金がもらえる基準……全体で10年
・遺族年金がもらえる基準……全体で25年
・加給年金や振替加算がつく基準……厚生年金保険に20年
・長期加入者の特例に該当する基準……厚生年金保険に44年

加給年金や振替加算は配偶者の年金が上乗せされる制度だ。長期加入者の特例も長期勤務の退職者の年金が上乗せされる制度なので、漏れがあるともらえる年金をもらいそこなう恐れがある。

将来もらえるすべての年金が記されているとは限らない

「ねんきん定期便」は公的年金の受給見込み額が分かる便利な情報源だが、すべての年金額が含まれているとは限らない。

たとえば加給年金と振替加算は「ねんきん定期便」の項目に載っていない。厚生年金基金に加入していた期間がある人は、老齢厚生年金の一部の支給を基金が代行しておこなっている。その部分は「ねんきん定期便」には含まれない。

また企業年金など年金制度の3階部分に該当する年金も記載されていない。見込み額を確認したい場合は勤務先か企業年金連合会に確認する方法がある。あとは保険料を多めに支払った場合の加算額が反映されていない点にも注意だ。保険料の支払いは60歳までを前提に見積もられており、60歳以降も支払うことは想定されていない。

もちろん私的年金である個人年金保険や個人型確定拠出年金(iDeCo)も「ねんきん定期便」には記載がない。これらの存在を忘れていると無用に将来の資金計画に不安を覚えてしまうことになる。

情報が間違っていたら年金加入記録回答票に記入して届け出る

加入している年金の制度や加入期間、勤務先や給与水準に漏れや誤りがあると、将来受け取る年金額が減ってしまう可能性がある。節目の時に郵送される封書タイプの「ねんきん定期便」には「年金加入記録回答票」が同封されている。追加や修正すべき記録がある場合はこれに記入して近くの年金事務所へ郵送しよう。日本年金機構が調査・確認に動いてくれるはずだ。

インターネットでも年金がいくらもらえるか確認できる

「ねんきん定期便」のハガキや封書を失くしてしまったが、今すぐ確認したいと思う場合もあるだろう。そんな時は「ねんきんネット」が便利だ。

「ねんきんネット」は日本年金機構のサービスで、インターネットで年金記録や見込み額の確認ができる。「ねんきん定期便」と同じ内容がいつでも閲覧できるほか、ダウンロード機能があるため記録の管理や保存に役立つ。

「ねんきんネット」を利用するには最初にユーザーIDの登録が必要だ。登録には基礎年金番号とアクセスキー、メールアドレスの記入を求められるので用意をしておこう。基礎年金番号は年金手帳や国民年金保険料の納付書・通知書で確認できる。アクセスキーは「ねんきん定期便」に記載されている17桁の番号だ。

インターネットで閲覧できれば紙の通知は不要ということならば、ハガキ・封書版の「ねんきん定期便」の郵送停止を申請できる。ただし電子版通知書の保存期間は5年間なので、自身でダウンロードして保管しておく必要がある。

文・篠田わかな(フリーライター、ファイナンシャル・プランナー)/MONEY TIMES

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