住宅ローンの審査が否決されれば、借り入れ条件を変更したり別の金融機関へ融資を申し込んだりする必要がある。余裕をもって物件購入の手続きを進めるためにも、本審査の結果がわかるまでの日数や否決される理由は把握しておきたい。

住宅ローンの本審査の日数を把握しておくことが重要な理由

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(画像=Billion Photos/Shutterstock.com)

住宅ローンの手続きは、物件購入の手続きと並行して行われ、住宅ローンの審査・契約は次のような流れで進む。

住宅ローンの審査・契約手続き (参考)物件購入の手続き
事前審査 物件決定
購入申込・重要事項説明
本審査申込 売買契約・手付金支払
本審査・決定 (中間金支払)
ローン契約
融資実行 残金決済
抵当権登記 引き渡し・所有権登記

※筆者作成

住宅ローンの審査は事前審査と本審査の2種類があり、本審査は融資実行・残金決済前に通っていなければならない。それまでに住宅ローンの審査に通っていなければ、売買契約は白紙(ローン特約がある場合)になってしまう。

融資実行と購入代金の残金決済は、購入者(買主)と不動産業者等(売主)、借入先金融機関の三者(+登記手続きを行う司法書士)が一堂に会し、同日に行われるものだ。

あらかじめ住宅ローンの本審査にかかる日数を把握しておき、融資実行と購入代金の残金決済までに審査に通過していることが重要なのだ。

ローン特約があれば住宅ローンの審査が否決されても支払い済みの代金は返金される

ローン特約(条項)とは、融資の承認が得られなかった場合に買主が売買契約を無条件で解除でき、売主は手付金等の支払い済み代金を返還することを約す特約のこと。

住宅ローンの審査で否決となってしまった場合でも、ローン特約があれば違約金などを請求される心配もない。ただし特約設定時に約束した内容と違う条件で融資を申し込んでしまうと、ローン特約は無効となり手付金は返還されない。

ローン特約の内容が曖昧だとトラブルの原因となるため、特約設定時には次の項目を明確にしておくことが大切だ。

・融資申込先金融機関
・融資金額
・融資が承認されるまでの期間
・融資が承認されなかった場合の対応策(他の金融機関にも融資を申し込むかなど)
・解除権を行使した場合の買主の義務(損害賠償義務が存在しないことなど)
・解除権を行使した場合の売主の義務(手付金・代金の返還義務の内容など)

融資が承認されるまでの期間を定められている場合、融資の未承認により売買契約を解除するには、その期間経過後から契約解除期限内に売主(不動産業者など)に申し出る。ただし自動解約となる定めのある場合はこの限りではない。

住宅ローンの審査が否決され、改めて融資を申し込む場合には、売主との間で契約解除期限延長の合意を得ておくことが大切だ。

住宅ローンの本審査結果がわかるまでの日数を金融機関・商品ごとに紹介

住宅ローンの本審査にかかる日数は金融機関が申込書類を受理してから結果がわかるまでを指す。住宅ローンの本審査にかかる日数は金融機関により異なるが、目安としては1~2週間程度である。ただし金融機関や審査の状況によっては1ヵ月近くかかるケースもある。

住宅ローンの本審査の日数……メガバンク(都市銀行)の場合

メガバンク(都市銀行)の住宅ローンの本審査にかかる日数は、三井住友銀行の場合で1~2週間程度。メガバンクの住宅ローン審査では安定性が特に重視される。ホームページなどに掲載されている最優遇金利は比較的低いが、公務員や大企業の正社員など属性の高い人でないとその金利水準で融資を受けるのは難しい。

住宅ローンの本審査の日数……地銀・信用金庫の場合

地銀や信用金庫の住宅ローンの本審査にかかる日数は、京都銀行の場合で5~10営業日程度。地銀や信用金庫の住宅ローンは柔軟な審査が期待でき、比較的融資を受けやすいのが特徴だ。

属性にやや不安のある人の場合、担保や連帯保証人、保有する資産・資格など、属性を補完する条件を金融機関側から提示してくれ、審査に通るよう個別に対応してくれるケースもある。

住宅ローンの本審査の日数……ネット銀行の場合

ネット銀行の住宅ローンの本審査にかかる日数は、ソニー銀行の場合で5~10日程度。手続きは基本的にはインターネットや郵送で行われるため、書類に不備などがあると審査が長引くこともある。郵送のやりとりにかかる時間も考慮しておくべきといえる。

ネット銀行の住宅ローンは金利の低さや審査期間が比較的短い点などが魅力だが、一般的に対面で個別審査を行う金融機関に比べて審査は厳しめだ。

メガバンクや地銀などが取り扱うネット専用住宅ローンは、金利や審査などの面でネット銀行の取り扱う住宅ローンに近い。

住宅ローンの本審査の日数……フラット35の場合

フラット35の住宅ローンの本審査にかかる日数の目安は、1~2週間程度。代表的な全期間固定金利型住宅ローンであり、多くの金融機関が取り扱う。フラット35には勤続年数や雇用・勤務形態の要件がなく、審査は返済比率(年収に占める年間返済額の割合)を基準に行われる。

勤続年数の短い人や自営業の人など、他の住宅ローンの審査に通りにくい人でも、収入要件(返済比率)の条件を満たしていれば本審査に通りやすい。ただし対象となる建物が住宅金融支援機構の定める技術基準に適合していなければ利用できない。

<代表的な金融機関の本審査にかかる目安日数>
・三井住友銀行……1~2週間程度
・横浜銀行……5営業日程度
・京都銀行……5~10営業日程度
・新生銀行……7営業日程度
・ソニー銀行……5~10日程度
・住信SBIネット銀行……1週間~10日程度
・楽天銀行……1~2週間程度
・イオン銀行……1~2週間程度
・au住宅ローン……最短2~3営業日
・ARUHI(住宅ローン専門金融機関)……最短3営業日(来店申込)・10~14日前後(ネット申込)

住宅ローンの本審査を長引かせる3つの要因

住宅ローンの本審査の目安となる日数を過ぎても審査結果の連絡がないからといって、必ずしも否決されるわけではない。住宅ローンの本審査を長引かせる要因としては、主に次のようなものが考えられる。

(1)住宅ローンの申し込みが集中している

住宅ローンの申し込みが集中して審査に時間がかかるケースがある。金融機関側の都合で審査が遅れているだけであり心配はない。不動産業界の繁忙期である1~3月は申し込みが集中する傾向がある。

(2)住宅ローンの審査中に属性の変化や新規借り入れをした

住宅ローンの審査中に収入や雇用形態などの属性の変化や新規の借り入れなどがあると、審査のやり直しや追加資料の提出などが必要になり、審査が長引く要因になる。

収入の減少や借り入れ金の増加など審査にマイナスな変化があると、住宅ローンの審査が否決される可能性は高まる。新規の借り入れや転職など自分の意思でコントロールできるものは、少なくとも融資が実行されるまで避けるべきだ。

(3)審査書類に不備などがある

提出した書類に不備があった場合や審査の過程で書類の追加提出を求められた場合など、住宅ローンの審査に必要な書類がそろうまで審査は進まない。住宅ローンの審査をスムーズに進めるには、書類不備はなるべく早く解消し、求められた書類はなるべく早く提出することだ。

個人信用情報に問題があると住宅ローンの本審査ですぐ否決されることもある

本審査の申し込み後すぐに否決になってしまった場合、これまでの借り入れ状況や返済履歴といった個人信用情報(以下、信用情報)に問題がある可能性もある。住宅ローンの本審査ではまず信用情報の確認が行われ、「異動」の記録があればその時点で審査が否決される可能性が高い。

住宅ローン審査で否決の要因になる「異動」情報が記録されるケース

信用情報に「異動」が記録されるのは次のようなケースだ。

・クレジットカードの支払いやローンの返済などに61日以上または3ヵ月以上の遅れがある
・支払いなどの遅れにより保証会社が代わりに返済した
・自己破産(破産手続き開始が決定)した

知らないうちに信用情報に傷がつき住宅ローンの本審査で否決されるケースもある

本人はローンやクレジットの支払いに遅れた覚えがなくても、携帯料金が未納となっていたなどで、気付かないうちに信用情報が傷ついているケースもある。信用情報に傷がある状態ではいくらローンを申し込んでも住宅ローンの審査で否決されてしまう。

自分の信用情報の内容は、個人信用情報機関に開示請求を行えば確認できる。住宅ローンを申し込む前に確認しておくと安心だ。開示請求は郵送やインターネットから行える。手数料1,000円だ。

【開示請求先】 CIC(https://www.cic.co.jp/mydata/index.html)
JICC(https://www.jicc.co.jp/kaiji/
KSC(https://www.zenginkyo.or.jp/pcic/open/

住宅ローンの本審査の日数には余裕を持ち否決されても冷静に対処を

住宅ローンの本審査にかかる日数の目安はおよそ1~2週間程度である。本審査が否決された場合に備え、住宅購入手続きにはなるべく余裕を持って設定をしておきたい。住宅ローンの本審査が否決された場合は、返済計画や属性、信用情報などに問題がないか原因を探り、冷静に対処することが大切だ。

文・竹国弘城(ファイナンシャル・プランナー)/MONEY TIMES

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