矢野経済研究所
(画像=PIXTA)

資源価格が急落している。国際原油相場は1バレル30ドル前後と年初の半分の水準まで落ち込んだ。暴落のきっかけは原油市場におけるサウジアラビアとロシアの価格競争であった。しかし、相場の先行き懸念は「実体経済における需要減」に変わった。言うまでもなく要因は新型コロナウイルスの感染拡大である。
世界に拡散した国境閉鎖、都市封鎖、外出制限の影響は、運輸、小売、サービス業にとどまらず、川上から川下まであらゆる産業活動に急ブレーキをかける。グローバル経済は完全に機能不全に陥りつつある。

政府は50兆円規模の緊急経済対策の準備に入った。現金給付、商品券、雇用助成、納税猶予、延滞税免除、政府系金融機関を通じての各種制度金融の拡充などが検討されている。民間金融機関も支援策を具体化する。三井住友銀行はサプライチェーンの維持に使途を絞った2,000億円規模の大手企業向けファンドと中堅中小企業を対象とする特別ファンドを組成する。三菱UFJ銀行も法人、個人事業主向けに新型コロナに対応した「災害等特別融資」を開始した。
生活支援、経営支援、消費喚起、需要創出、、、政策目的を明確にした施策の迅速な実行が望まれる。もちろん、優先課題は治療薬の開発である。国や研究機関のメンツや利益を越えた次元での国際的な開発、生産、配給体制の確立を急いでいただきたい。

26日、東京都の小池都知事は突如「首都の封鎖」に言及した。東京オリンピック・パラリンピック延期決定直後に表明した「今後3週間が重大局面」との危機認識は、習近平氏の来日延期の正式決定直後に発表された「中国全土からの入国規制強化」と同様に、例えそれが医学的必然性ゆえのタイミングであっても政治的都合、あるいは自身の “やってる感” の演出という違和感を残すものとなった。
つまり、行政への不信を助長させたという意味で、また、メッセージ効果を軽減させたという意味において時を逸したと言える。社会全体に漂う先行き不透明感を払拭するためにも情報の共有と政治的決定におけるプロセスの透明化は必須である。行政、情報への「信頼」があって、はじめて政策効果は最大化する。

今週の“ひらめき”視点 3.22 – 3.26
代表取締役社長 水越 孝