勤務先から「従業員持株会」への加入を勧められて、判断に困っているという話を耳にします。そもそもこの「従業員持株会」とはなんのための制度なのでしょうか。その概要と、加入した場合のメリットや注意点について説明しましょう。

給与や賞与から一定額を天引きして自社株を買い付ける

従業員持株会,メリット,デメリット
(画像=nd3000/Shutterstock.com)

「従業員持株会」は証券取引所に上場している企業のほとんどが導入しており、非上場企業の一部も採用しています。これは、従業員の毎月の給与や賞与から一定額を天引き(自動引き落とし)して、自社の株式購入に充てていくという制度。給与や賞与の一部で、こつこつと自社株の積立投資を続けていくものです。

購入額に対し一定割合を奨励金として給付する企業も多く、それだけ時価よりも割安に自社株を手に入れられることになります。2019年11月に東京証券取引所が公表したデータによると、調査対象となった企業の 96.6%にあたる 3,097 社が奨励金を給付しているとのことです。

自社の業績に関して、従業員の間で当事者意識が高まる

天引きで自動的に資産形成が進められていくうえ、持株会規約によってあらかじめ定めた日に自社株を買い付けるので、自分自身で投資のタイミングを見計らう必要がないことが「従業員持株会」のメリットだと言われています。しかしながら、それは積立投資全般に言えることで、「従業員持株会」に限ったことではありません。

ただ、従業員が自社の業績向上のために業務に励み、それが結実して利益が大きく伸びれば、株価の上昇に結びついたり、増配(配当額の引き上げ)が実施されたりする可能性が考えられます。「従業員持株会」を通じ、個々の従業員の間でも自社の業績などに対して当事者意識の高まりが期待できるわけです。

「勤務先と一蓮托生」の集中投資とせず、他と併用する分散投資も考えたい

純粋に資産運用という観点から捉えれば、「従業員持株会」の他は預貯金に預けているだけという集中投資パターンは、少々リスキーかもしれません。勤務先の業績が低迷すれば賞与が減ってしまうという直接的なダメージのみならず、「従業員持株会」を通じて買い集めてきた自社株の時価が低下してしまう恐れも出てくるからです。

資産運用ではリスクの軽減を図るために分散投資が基本とされていますが、「従業員持株会」を通じた投資だけに偏ってしまうと、結果的に「勤務先と一蓮托生」の集中投資となってしまいます。従業員持株会への加入を検討すると同時に、NISAやiDeCoなど他の個人向け投資制度についても考える好機とされてみてはいかがでしょうか。(提供:Wealth Road