「洋服の青山」を展開する紳士服大手の青山商事が、2020年3月期の業績の下方修正を発表した。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、売上の減少が見込まれることなどが理由だ。3月はスーツ業界の繁忙期だが、大学の入学式の延期・中止などが続々決まり、大きな痛手となっている。
2020年3月期通期、青山商事は203億円の赤字に
青山商事が3月11日に発表した2020年3月期通期(2019年4月~2020年3月)の業績予想の下方修正について、売上高と営業利益、経常利益、そして純利益の数字を見てみよう。
・売上高:2,355億円(前回予想)→2,190億円(修正後)
・営業利益:プラス90億円(同上)→マイナス4億円(同上)
・経常利益:97億円(同上)→4億円(同上)
・純利益:マイナス20億円(同上)→マイナス203億円(同上)
各数値の下方修正は新型コロナウイルスの影響で、ビジネスウェア事業を展開する既存店の売上高が大きく減少することが見込まれることなどが理由だ。
前期は57億円の黒字を計上していただけに、株主のショックも大きいようだ。
入学式や入社式の延期・中止がスーツ業界に影響
新型コロナウイルスの感染拡大は、さまざまな形で企業業績に影響を与えている。青山商事にとっては、大学の入学式や企業の入社式が延期・中止となったことが大きい。3月は、スーツ業界のかき入れ時。入学式や入社式のタイミングに合わせてスーツを新調する人が多いからだ。
すでに東京大学や慶應義塾大学、近畿大学などが、入学式の延期・中止を発表している。たくさんの人が同じ場所に密集すると、その場所が「クラスター」になる可能性が高くなる。大学の社会的責任を考えれば、やむを得ない判断だろう。
また、入社式を延期する企業も増えている。自動車メーカー最大手のトヨタ自動車は、4月1日に予定していた入社式を中止した。小売大手のセブン&アイ・ホールディングスも、3月中に予定していた入社式を中止している。
入学式や入社式は、時期をずらして開催される可能性がある。そうなれば現在のスーツの売上減少を多少は補えるかもしれないが、現時点のキャッシュフローが厳しいことに変わりはない。それは業界大手の青山商事だけでなく、スーツ業界全体に言えることだ。
オフィスウェアのカジュアル化も売上減につながっている
新型コロナウイルスの問題が目立つが、実は青山商事の2019年4~12月期の業績も厳しい。売上高は前年同期比7.2%減の1,562億3,100万円に留まり、前年同期の黒字から一転、82億2,700万円の損失を計上している。
青山商事の主力事業はビジネスウェア事業だが、その事業の売上高が第3四半期は前年同期比11.2%減となり、全体の売上高を大きく押し下げた。ビジネスウェアの売上減について同社は、オフィスウェアのカジュアル化を要因として挙げている。市場環境が変化したことが、客数の減少につながっているようだ。
ただし青山商事は、この状況を指をくわえて見ているわけではない。中長期的な業績改善を目的として、ビジネスウェア事業の再構築に乗り出している。その第一歩としてすでに価格改定を行っており、売上や来店客数の回復を狙っている。
コロナ終息の時期まだまだ見えず
このような取り組みによって業績改善を目指すが、新型コロナウイルスの終息時期が読めない中で、厳しい局面は続くだろう。この苦境をどう乗り切るか、青山商事にとって今年は正念場であることは間違いない。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)/MONEY TIMES
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