引っ越しをすると、さまざまな箇所で住所変更の手続きが必要になる。健康保険証もそのひとつだ。健康保険証の住所変更の方法は、加入している公的医療保険が国民健康保険か社会保険かで異なる。特に国民健康保険の加入者は、手続きの際の注意点を確認しておきたい。
国民健康保険証の住所変更の手続きは引っ越し先によって2パターンある
国民健康保険は、主に自営業やフリーランスの人とその家族、年金生活者などが加入している公的医療保険だ。国民健康保険の運営は各市区町村が行っており、住所変更の手続きは基本的に市区町村役場の窓口で行う。引っ越し先が同じ市区町村内か、それ以外かによって手続きが異なる。
国民健康保険証の住所変更手続きに必要なもの
国民健康保険証の住所変更の手続きには、引っ越し先が同一市区町村内でも、他の市区町村でも、以下のものが共通して必要になる。
・国民健康保険証
・印章(認印可)
・本人確認書類(運転免許証・パスポート・マイナンバーカードなど)
・マイナンバーを確認できる書類(マイナンバーカード・通知カードなど)
国民健康保険の届け出は、原則として世帯主が行う。世帯主以外の人が届け出を行う場合には、上記に加えて世帯主が自署・押印した委任状が必要だ。代理人による届け出では、代理人(窓口で手続きを行う人)の本人確認書類と印章もあわせて必要になる。
⑴同一市区町村内で引っ越す場合の国民健康保険証の住所変更手続き
国民健康保険に加入している人が同一の市区町村内で引っ越す場合、市区町村役場の窓口で住民票の住所変更手続きを行ってから、国民健康保険証の住所変更を行う。住所変更の届け出期限は転居日から原則14日以内だ。
国民健康保険の住所変更はその場で完了し、住所変更された国民健康保険証が即日交付される。場合によっては郵送による交付になる。
⑵他の市区町村へ引っ越す場合の国民健康保険証の住所変更手続き
国民健康保険の加入者が他の市区町村へ引っ越す場合、現在住んでいる市区町村の国民健康保険を脱退(資格喪失)し、引っ越し先の市区町村の国民健康保険へ加入し直さなければならない。そのため転出する市区町村と、転入する市区町村の両方で手続きが必要になる。
・転出する市区町村で国民健康保険の脱退手続きをする
現在住んでいる転出元の市区町村では、国民健康保険の脱退(資格喪失)の手続きが必要である。手続きは役場の窓口で届け出書類に記入し、国民健康保険証を返却すればよい。転出手続きとあわせて行うのがスムーズだ。
国民健康保険の住所変更の手続き期限は、転出日から14日以内に実施する必要がある。転出日を指定して住所変更の届け出を行えば、転出日前に手続きを済ませられる。転出元の国民健康保険証は、転出(予定)日の翌日から利用できなくなる。
・転入する市区町村で国民健康保険の加入手続きをする
転入する市区町村では、新たに国民健康保険へ加入する手続きが必要になる。手続きは役場の窓口で届け出書類を記入・提出して行う。転入手続きとあわせて行うのがスムーズだ。
転出と同様、国民健康保険への加入手続き期限は転入日から原則14日以内に行う。転入日を指定して届け出を行えば、転入日前に手続きを済ませられる。
通常、国民健康保険証は即日に交付され、その日から利用できる。郵送による交付では自宅に国民健康保険証が届くまで数日程度かかる。その間に医療機関を受診するような場合に備え、保険証の代わりとなる「受療証」の交付を受けられる。
国民健康保険の保険料納付を口座振替により行う場合は、上述した4つのほかに、通帳またはキャッシュカード(口座番号などのわかるもの)とその届け出印も必要になる。
国民健康保険証の住所変更をするときの5つの注意点
国民健康保険証の住所変更を行うときには、以下に気を付けたい。
(1)住所変更の手続き期限は原則14日以内
国民健康保険証の住所変更は、転居日または転出入日から原則14日以内に行う。同一市区町村へ引っ越す場合なら、仮に14日を過ぎても手続きは可能で罰則もない。しかし他の市区町村への引っ越しであれば、転出日の翌日に被保険者資格はなくなる。
やむを得ない事情もなく加入の届け出が遅れた場合、医療費の給付は届け出日からとなるケースがある。もしその間に医療機関を受診すると、保険給付を受けられず、医療費全額を自己負担しなければならない。資格喪失日と加入日との間が空かないよう、なるべく早めに届け出を行っておくべきだ。
転出入日は予定日での届け出ができるため、前もって手続きをしておくのがよいだろう。
(2)医療費を返還請求されるケースがある
転出(予定)日以降に転出元の保険証を使って医療機関を受診した場合、その医療費(保険給付分)は不当利得として返還しなければならなくなる。
該当者には転出元の市区町村から「国民健康保険給付費返還請求通知書」が届く。返還は同封されている「納入通知書兼領収書」を使い、指定期日までに金融機関などで納付する。
ただし受診日時点で転入先の国民健康保険への加入が済んでいれば、返還した医療費の払い戻しを受けられる場合がある。払い戻しを受ける際には上記の領収書が必要になるため、なくさないように保管しておこう。払い戻しの申請ができるのは受診日から2年以内だ。
(3)転入日から国民健康保険料の納付義務が生じる
保険給付が受けられるのは原則、国民健康保険への加入届け出日以降だが、保険料の納付義務は転入日(国民健康保険に加入すべきとき)から生じる。届け出が遅れた場合でもその間の保険料が免除されるわけではなく、最長2年間分の保険料はさかのぼって納付しなければならない。
(4)国民健康保険料の計算・納付は月単位で行う
他の市区町村への引っ越しでは、国民健康保険料の納付先が転入先の市区町村に変わる。保険料の計算と納付は月単位で行う。たとえば3月20日にA市からB市に引っ越すのであれば、2月分までの保険料はA市に、3月分以降の保険料はB市にそれぞれ納付する。
新たな国民年金保険料は、届け出日ではなく転入日(加入資格取得日)を基準に計算される。
(5)国民健康保険に加入する子供が転出する時は手続きが必要
国民健康保険に加入している子供が、大学などの修学のため他の市区町村へ転出する場合、届け出を行えば転出元の保険証をそのまま使える。手続きには在学証明書(入学前の申請であれば合格通知書など修学を証明できる書類)が必要だ。
社会保険加入者が健康保険証の住所変更手続きをする場合は勤務先へ
会社員や公務員の人など加入する社会保険(協会けんぽ・組合管掌健康保険・共済組合など)の住所変更は、それぞれが加入する健康保険組合などで手続きを行う。
社会保険の住所変更手続きは勤務先を通して行う
社会保険に加入している人の住所変更は、基本的に勤務先を通して行う。保険者が変わらないため登録情報の変更のみである。住所変更届を提出したうえで、健康保険証は通常そのまま使うことができる。
健康保険証に手書きで変更(修正)を行えばよい
社会保険の健康保険証の多くは住所が印字されておらず、裏面の記入欄に手書きで記入するようになっている。このタイプの健康保険証では、住所変更時には記入されている住所を二重線で消し、新しい住所に書き換えで済む場合が多い。勤務先への届け出は必要だが、保険証の返却や再発行などの手続きは基本的に不要だ。
手続きは加入する健康保険などにより異なる場合もあるため、勤務先の担当部署などに確認のうえ、指示に従ってほしい。
健康保険証の住所変更の届け出はなるべく早めに
健康保険証の住所変更はしなければならない手続きだ。特に国民健康保険の加入者が他の市区町村への引っ越す場合、届け出が遅れると無保険期間が生じてしまう。その間に医療機関を受診すれば、大きな経済的負担につながる恐れがある。届け出はなるべく早めに行うようにしよう。
文・竹国弘城(ファイナンシャル・プランナー)/MONEY TIMES
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