● 民間企業の2020年夏のボーナス支給額を前年比▲4.0%と予想する(毎月勤労統計ベース)。19年夏(▲1.4%)、冬(▲0.1%)に続いて3季連続の減少となり、減少幅も大きく拡大するだろう。
● 今夏のボーナスは大企業と中小企業で差が生じる可能性が高く、中小ではより厳しい結果が予想される。大企業においても夏のボーナスは減少が予想されるが、これは主に、新型コロナウイルス問題が発生する前に既に生じていた19年の企業業績の悪化を反映したものである。輸出が低迷していたところに消費増税による悪影響が加わったことで、年後半にかけて企業業績は悪化したが、こうした業績低迷が大企業のボーナス減に繋がるだろう。なお、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、春闘の交渉時点で既に売上に影響が生じていた企業については、これによるボーナスの減額が一部行われた可能性もある。
● 落ち込みがより大きくなりそうなのが中小企業だ。中小・零細企業は組合組織率が低く、労使交渉自体が実施されないことも多い。ボーナス支給額を決定する時期も組合がある企業に比べて遅くなる傾向があり、相対的に直近の収益状況・業況がボーナスに反映されやすい。そのため、新型コロナウイルスによる業績の急激な悪化の影響を強く受ける形で、中小・零細企業ではボーナス支給の見送り・大幅減額を行うところが多いだろう。こうした中小企業のボーナス大幅減の影響を受ける形で、夏のボーナスの減少幅は大きなものになると予想する。
● さらに厳しいのは今年の冬や来年夏だ。今年の夏のボーナスには新型コロナウイルスの影響は反映しきれていないが、今冬や来年夏の交渉は、急激に落ち込むことが予想される2020年の業績をもとに行うことになる。リーマンショック後の2009年のボーナスは前年比10%近い減少幅となったが、今冬や来年夏のボーナスはそれに迫る悪化幅になってもおかしくない。
● 減少はボーナスにとどまらない。3月以降、店舗の営業時間短縮や休業、工場の操業時間短縮・停止といった動きがみられており、生産活動は大幅に落ち込んでいるが、緊急事態宣言の発令によってそうした動きが一段と強まるだろう。その分、所定外給与(残業代)も大幅に減少する可能性が高い。雇用についても、この先予想される景気の急激な落ち込みの影響が出ることから明確に悪化する可能性が高く、失業率も上昇が見込まれる。賃金、雇用とも大きく悪化するとみられ、家計の所得環境はこの先厳しさを増していくだろう。(提供:第一生命経済研究所)
第一生命経済研究所 調査研究本部 経済調査部長・主席エコノミスト 新家 義貴