企業型DCとも呼ばれる「企業型確定拠出年金)は、転職してもそれまで積み立てていた年金を継続できる便利な仕組みを備えています。ただし、その際にきちんと手続きを済ませておかないと、不都合が生じて後悔を招いてしまう恐れもあるので注意が必要です。

ここでは企業型確定拠出年金に加入している人が、転職した場合に必要となってくる変更手続きについて様々なパターン別に見てみることにしましょう。

転職先にも「企業型確定拠出年金」がある場合の手続きは?

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(画像=rangizzz/Shutterstock.com)

新しい勤務先で「企業型確定拠出年金」を導入している場合は、担当部署の指示に従って手続きを進めていくことになります。ただ、前職時代に加入していたものに「マッチング拠出制度」があった場合には、新たな職場に同制度があるかどうかで事情が異なります。

「企業型確定拠出年金」では、勤務先が払ってくれる掛金に加入者本人が自分のお金を上乗せすることが可能となっており、これを「マッチング拠出制度」と呼んでいます。加入者の負担額はすべて所得控除の対象となるので、その分だけ所得税の負担を軽減できます。

マッチングには限度額が定められており、勤務先が払ってくれる掛金との合計で年額66万円(月額平均5万5,000円)までです。勤務先が確定給付型の企業年金も導入している場合は、年額33万円(月額平均2万7,500円)となっています。

転職先に「マッチング拠出制度」があれば、以前と変わらない条件ですんなりと移管手続きを進められるでしょう。これに対し、同制度がないケースも移管は可能ですが、自分では掛金を上乗せできなくなる可能性が考えられます。

自分で掛金を支払いたいなら「個人型確定拠出年金(iDeCo)」に移管するのも一考で、転職先の担当者に相談してみてください。

転職先に「企業型確定拠出年金」がない場合の手続きはどうなる?

転職先が「企業型確定拠出年金」を導入していない場合、または公務員へ転職した場合には、2つの選択肢のどちらにするのかを決めることになります。

その1つは「企業型確定拠出年金」から「個人型確定拠出年金(iDeCo)」に移管するというもので、以降は自分自身で掛金を払っていきます。その場合、転職先が「企業型確定拠出年金」以外の企業年金制度を設けていると、掛けられる金額の上限は年額14万4,000円(月額平均1万2,000円)です。これは公務員となった場合でも同金額となります。転職先に他の企業年金制度がなければ、掛金の上限は年額27万6,000円(月額平均2万3,000円)となります。

2つめに、自分自身で掛金を継続して負担するのは避けたい場合もあるでしょう。その場合は「個人型確定拠出年金(iDeCo)」に移管したうえで、以降は掛金を納めない手続きを行い、それまでに積み立てた資金の運用だけを指図する「運用指図者」となることができます。いずれにしてもiDeCoへの移管手続きなどを個人で行う必要があります。

転職して個人事業主(自営業)という道に進んだ場合は?

会社を辞めて個人事業主(自営業)に転じた場合、「企業型確定拠出年金」から「個人型確定拠出年金(iDeCo)」に移管し、今度は自分自身で掛金を払いながら運用を続けます。その際に掛けられるお金の上限は年額81万6,000円(月額平均6万8,000円)となります。自営業のため、国民年金保険料を毎月負担することが前提ですが、掛け金の上限が大きいため有効に活用したいところです。もちろん、iDeCoに移管したら、他のケースと同様「運用指図者」となることも可能です。

前職を辞めてすぐに新たな仕事に就かない場合は要注意!

前職を辞めても、直ちに新たな仕事には就かないという人もいることでしょう。こうしたタイムラグが半年以上に及ぶ場合は、個人型確定拠出年金(iDeCo)への移管の手続きをきちんと行っておくのが無難でしょう。

退職の翌月から起算して6ヵ月以内に移管手続きを行わない場合は、積み立てたものがいったん現金化されたうえで、国民年金基金連合会に移管されます。「自動移管」と呼ばれるもので、この扱いになっていると運用が行われないばかりか、管理手数料が差し引かれてしまいます。注意しておきましょう。

老後の重要な資金となる確定拠出年金。おろそかにしないよう注意

確定拠出年金とは、厚生年金や国民年金といった公的年金を補完するために設けられた制度で、自らの判断で投資先を選び、その運用成果に基づいたお金を老後に受け取ることができます。老後の生活を、よりゆとりあるものとするための大切な存在ですから、転職先が同制度を導入しているかなどをきちんと確認したうえで、必要な手続きを漏れなく済ませるようにしましょう。(提供:Wealth Road