6月のNFPは、中小企業向け融資の「給与保証プログラム(PPP)」などの政府の支援策で雇用者数の増加は5月実績を上回ると見られている。しかし、週次のイニシャルクレイムを見ると、労働市場は依然として厳しい状況だ。NFPは振れやすいので波乱に注意したい。問題は雇用統計がサプライズとなった場合、市場参加者が少ないなかでその結果を受け止めなければならないことだ。7月3日は独立記念日の振替休日で米国市場が3連休となることから週末に向けて薄商いが予想される。値幅が飛びやすいので注意が必要だ。

そうした点が今回の雇用統計の注意点だが、もう少し長い視点で見ていく必要がある。DeepMacroが述べている通り、失われた雇用の一部が戻ってきているに過ぎない。これまでは悪い状況は当たり前だったから、悪いニュースに市場は反応しなかった。少しでも改善すれば素直にポジティブな反応を示した。これからは「回復」というのがコンセンサスになる以上、その回復度合いが鈍ければネガティブな反応に変わるだろう。

グローバル・マクロ・ウォッチ
(画像=Thinkstock/GettyImages)

再雇用の動きは継続しており、NFPはポジティブサプライズとなる見込み

先月、非農業部門雇用者数(NFP)は予想外の大幅増となったが、これ以降も米国では経済再開の動きが続いている。DeepMacroのビッグデータソースによると、今月もさらなる大幅増が見込まれており、雇用の伸びは再びポジティブサプライズとなることが予想される。DeepMacroでは今月の民間のNFPを360万人増と予測しており、ブルームバーグのコンセンサスである300万人増を上回る。

ここ数ヶ月の状況を考えてみると、たとえ2ヶ月続いて予想を上回る大幅な雇用者数増となったとしても、パンデミックによって失われた何百万人分もの雇用を補うには十分ではないだろう。民間の雇用者数は3月と4月で約2,100万人減少している。5月に戻ってきた310万人分の雇用は、予想を大幅に上回ったものの、失われた雇用の15%を回復したにすぎない。仮に、今月も同水準の数字となった場合でも、民間の雇用者数はCOVID-19以前の水準と比べて、約1,500万人減少していることになる。米国の労働市場は、依然として、非常に大きな苦境から抜け出そうとしている状況である。

しかし、経済が再開され、活動レベルが上昇していく中で、これらの雇用の一部が戻ってくることは予測できる。先月、(われわれも含めて)ほとんどの人が見落としていたのは、実際に発生していた再雇用の規模である。企業は、営業を再開するために全従業員を必要とするわけではない。しかし、企業が事前に準備をし、営業を再開するためには、最低限、一定数の人員を必要とするのである。営業再開に必要な人員数について、先月は全面的に過小評価されていた。今月、DeepMacroのビッグデータソースは事業再開の波がさらに押し寄せており、これが雇用者数を押し上げていることを示唆している。

コンセンサスを上回る予測となった要因は以下の通り。

・DeepMacroのデータソースによると、オンライン上の求人情報は、6月の雇用統計調査期間中も引き続き増加していた。新規求人件数は4月中旬から5月中旬にかけて31%、5月中旬から6月中旬にかけて28%増加しており、これはそれぞれ5月と6月の調査期間をカバーしている。興味深いことに、新規求人数の増加率が最も大きかったのは、経済再開の時期が遅かった州であった(Figure 1参照)。これは雇用の増加が、すでに再開されていた事業所における追加的なものではなく、異なる事業所での新規の営業再開によるものであることを示唆している。営業を再開する企業は、すでに再開した企業よりも多くの従業員を再雇用する傾向があり、ビジネス規模もわずかに増加する。したがって、これらの州では、一定数の従業員が仕事に復帰していくことで、今後さらに雇用増となる可能性がある。

・携帯電話の位置情報データを利用して、小売店や飲食店への来店者数の回復状況を検証した。現時点での来店者数の増加は、今後の更なる営業再開を示唆するものである。6月の調査対象期間中において、来店者数は前月比で約 27%増加となり、5月の調査期間中の25%の回復からは微増となった。

・DeepMacro成長ファクターは、10年のトレンド線を未だ大きく下回っているものの、5月から6月にかけては上昇に転じた。ただし、4月から5月の変化に比べるとその変化幅は小さい。

・失業保険申請件数の変動を考慮し、ここ数ヶ月にわたって過大に計上されている可能性があることから、モデルの比重を調整した。

新規求人数
(画像=マネックス証券)

DeepMacroの取引ルールでは、今月のように、DeepMacroの予測が市場コンセンサスを上回った場合には、米金利(債券)の売り、米ドルの買い、S&P500の売りを推奨している。金利モデルでは、現在、買いポジションを推奨しており、雇用統計発表を前にヘッジとしてポジションを中立にしておく。為替モデルでは、現在、米ドルの小幅なネットショートポジションを推奨している。これも取引ルールに基づいてヘッジしたいと考えている。最後に株式について、最新の更新で戦術的資産配分(GTAA)戦略では株式のアンダーウェイトポジションを推奨しており、雇用統計を前にこのポジションを維持しておくこととする。

広木隆 広木 隆(ひろき・たかし)マネックス証券 チーフ・ストラテジスト
上智大学外国語学部卒業。国内銀行系投資顧問。外資系運用会社、ヘッジファンドなど様々な運用機関でファンドマネージャー等を歴任。長期かつ幅広い運用の経験と知識に基づいた多角的な分析に強み。2010年より現職。著書『9割の負け組から脱出する投資の思考法』『ストラテジストにさよならを』『勝てるROE投資術

【関連リンク マネックス証券より】
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