(本記事は、八木 宏之氏の著書『コロナのお金110番 会社と個人のお金、コロナからこうやって守れ!』=アスコム、2020年5月23日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
コロナで売り上げが大きく落ち込んだ中小企業の利用できる給付金、特別貸付制度、制度の特例措置などが、続々と登場しています。コロナの影響を証拠立てる書類が必要ですが、ふつうの融資より容易に認められるうえ、事実上の無利子、3年程度の据え置き(返し始めるのは3年たった後から)、無担保・無保証人などの措置が講じられています。
ただ漠然と、お金が足りなくなりそうだから、というのでなく、自社にとっての必要性をよく吟味し、経営計画や返済の見通しをしっかり立てたうえで利用してください。
●「持続化給付金」(中小企業向け)
コロナで売り上げが大きく落ち込んだ中堅企業・中小企業・小規模事業者(零細企業)、個人事業主を対象とした「事業の継続を支え、再起の糧となる、事業全般に広く使える給付金」です。資本金10億円以上の大企業は除きますが、医療法人・農業法人・NPO法人・社会福祉法人など、会社以外の法人も幅広く対象となります。事業全般に広く使うことができ、返済する必要はありません。給付額の上限は200万円です(個人事業主向けは上限100万円)。
給付の条件は、2020年1月~12月のいずれかのひと月(自由に選べる)に、売り上げが直前の事業年度の同月に比べて50%以上減少していること。
給付額は、次の式で計算します。
給付額=前年の総売り上げ(事業収入)−(前年同月比▲50%月の売り上げ×12か月)
申請に必要な書類は、①19年の確定申告書類の控え、②減収月の事業収入額を示した売上台帳(様式は問いません)、③振り込みに使う銀行口座の通帳(法人名義)の写しなどです。
オンライン申請を基本とし、必要に応じて、感染症対策を講じた完全予約制の申請支援(必要情報の入力など)窓口が設置されました。
すでに給付は開始されています。オンライン申請ならば申請から給付(振り込み)まで2週間ほどと想定されています。現時点では一度きりの給付ですが、もしかすると今後、給付回数が増えるかもしれませんので、持続化給付金のサイトをチェックしましょう。
●日本政策金融公庫「新型コロナウイルス感染症特別貸付」(中小企業)
対象は、コロナの影響を受けて一時的な業況悪化をきたし、①か②どちらかに当てはまり、しかも中長期的な業況の回復・発展が見込まれる中小企業です。
①最近1か月の売上高が、前年または前々年の同期と比較して5%以上減少。
② 業歴3か月以上で1年1か月未満の場合などは、最近1か月の売上高が、(a)最近1か月を含む過去3か月の平均売上高、(b)19年12月の売上高、(c)19年10月~12月の平均売上高のうちいずれかと比較して5%以上減少(創業後3か月未満は対象外)。
使い道は、コロナの影響にともなう社会的要因などで必要な設備資金・運転資金。融資限度額は直接貸付3億円、拡充後6億円(既存融資があっても別枠)。1億円を限度として融資後3年目までは実質無利子、4年目以降は基準利率。返済期間は設備資金が20年以内(うち据置期間5年以内)、運転資金が15年以内(うち据置期間5年以内)。担保は不要です。
5年経過ごとに金利見直し制度を選択できます。追加で融資を受ける場合は、すでに受けた融資についても実質無利子融資への借り換えができます。
提出書類は、①借入申込書、②法人の登記事項証明書(原本)、③代表者個人の印鑑証明書(原本)、④納税証明書、⑤最近3期分の税務申告書・決算書、⑥コロナの影響による売上減少の申告書。もよりの日本政策金融公庫支店に電話で相談し、以上の書類を郵送のうえ、面談となります。審査の結果、希望にそえない場合はあります。(提出書類と申し込み手続→https://www.jfc.go.jp/n/finance/saftynet/pdf/covid_19_info_b.pdf)
商工組合中央金庫も、ほぼ同様の「危機対応融資」を実施しています。
補正予算が成立し、地方公共団体の制度融資を活用するかたちで、民間金融機関からも、実質的に無利子・無担保の融資を受けることができるようになりました。
※ただし、個人事業主については売上高5%以上減少、小・中規模事業者については売上高15%以上減少で、個人事業主、小・中規模事業者いずれもセーフティネット保証4号、5号、危機関連保証のいずれかの認定を受けている場合に限る
●日本政策金融公庫「生活衛生改善貸付」
「生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律(生衛法)」に規定されている飲食業、理・美容業、クリーニング業、ホテル・旅館業など18業種 を営む小規模事業者で、生活衛生同業組合などの長の推薦を受けた、常時使用する従業員数が5人(旅館業と興行場営業は20人)以下の会社に対しては、以前から日本政策金融公庫が「生活衛生改善貸付」をおこなっています。これが、コロナの拡大で強化されています。
対象となるのは、コロナの影響で、最近1か月の売り上げが前年か前々年同期と比較して5%以上減少している場合。融資限度額は、通常の融資額2000万円+別枠1000万円。当初3年間、実質無利子となる予定です。返済期間は設備資金が10 年以内(うち据置期間4年以内[別枠1000万円以内])、運転資金が7年以内(うち据置期間3年以内[別枠1000万円以内])。
●東京都「中小企業従業員融資(新型コロナウイルス感染症緊急対策)」
東京都は、コロナの影響による休業や収入減などで苦しくなる中小企業の従業員向けに、実質無利子の生活資金融資をおこなっています。
対象となるのは、①中小企業の従業員で、②現在の勤務先に6か月以上勤務し、現住所に3か月以上居住しており、しかも勤務先か現住所のどちらかが都内にあり、③年間収入(税込)が800万円以下で、④住民税の滞納がなく、⑤借り入れ金の使い道が生活の安定のためで、返済の見込みのある人です。①~⑤のすべてに当てはまる必要があります。
主な融資条件は、融資限度額100万円、融資期間5年以内、元利均等月賦返済、融資利率1・8%のところ全額を東京都が負担、連帯保証人や保証料は不要(日本労働者信用基金協会が保証し、保証料は全額東京都が負担)などです。中央労働金庫に出向いて申し込むことになります。
「家賃支援給付金」(中小企業・個人事業主向け)
7月14日より、売上げ減少に直面する中小企業、個人事業主に対し、家賃の負担を軽減する「家賃支援給付金」の申請受付が開始されました。その内容は、前年と比べて1か月間の収入が50%以上の減少か、3か月間の平均収入が30%以上の減少を条件に、事業者が支払う家賃の3分の2相当を半年間、国の給付(中小・小規模事業者には1か月あたり最大100万円、個人事業主には最大50万円)があります。家賃支援給付金のこちらサイトをチェックしましょう。https://yachin-shien.go.jp/
●公式サイト「コロナのお金110番 会社と個人のお金、コロナからこうやって守れ!」
●八木宏之YouTube公式チャンネル