会社員として働いていれば、退職時には誰でも退職金がもらえると思っていませんか。退職金がない会社もありますが、それは違法なのでしょうか。定年退職が近づいた時期や、退職を検討するタイミングで慌てることのないように、今のうちにしっかり確認しておくことが重要です。

退職金なしでも違法ではない?

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(画像=elnur/stock.adobe.com)

実は、退職金制度は必ず設けなくてはいけないものではありません。

労働基準法では、「退職金制度を設ける場合は就業規則に記載すること」と定めていますが、「退職金制度の有無」については触れていません。つまり、退職金制度が無いとしても、違法だとは言えないのです。

ただし、退職金制度があるのに、適切な対応がないまま支払われない場合は違法となります。既に設けた退職金制度を変更する場合は、必ず労働者との合意か就業規則の改訂を行わなければなりません。

就業規則に記載があるか確認する

勤務先に退職金制度があるかどうかは、就業規則で確認できます。就業規則には、「適用される労働者の範囲・退職金の支給要件」の他、「退職金計算基準・支払方法・支払時期など」も記載されているため、おおよその目安を立てられます。

10名以上の従業員がいる事業所では、就業規則の作成と周知が義務づけられています。入社時に全従業員に配布されるところもあれば、総務部や人事部などで閲覧用冊子を保管しているところもあります。いずれにせよ、就業規則の閲覧は従業員としての当然の権利です。まずは、自分の勤務先に聞いてみましょう。

退職金は一時金とは限らない?さまざまな形の退職金

退職時にまとまった金額を受け取る「退職一時金」だけが退職金ではありません。

退職後に年金として受け取る企業年金には、厚生年金基金の上乗せ給付など生涯年金に反映されるものや、受け取り時に一時金と有期年金を選択できるものがあります。会社によっては、一時金と年金の両方を受け取ることができます。

中には、代替退職金として株式報酬型ストックオプションが用意されている場合や、退職時ではなく在職中の給与やボーナスに上乗せ支給をしている会社もあります。

そもそも労働基準法には規定のないものですから、どのようなタイプにするかは各事業所の自由です。

退職金なしでも老後はやってくる!今すぐ対策が必要

老後資金として退職金をあてにしていたのに、勤務先に退職金制度がなかったという場合は、すぐに対策を始めたほうがいいでしょう。退職金制度はあっても、期待していた金額とかけ離れている場合もあるかもしれません。

定年退職年齢から今の年齢を引いた数字が、あなたの老後資金準備期間です。しっかりと向き合い、その間に何ができるか探しましょう。

安易な転職は危険

「退職金制度がある会社に転職したい」と思う人もいるでしょう。しかし、安易な転職は危険です。

なぜなら、一般的に退職金は在職年数を基準にして計算することが多いからです。慌てて転職しても、定年退職までの期間が短ければ支給額は少額、それどころか年数によっては支給対象外の可能性もあります。また、今の勤務先が「退職金代わりに、ボーナスや給与を増やしている会社」だった場合は、結果的に総報酬額が下がってしまうかもしれません。

今がたまたまキャリアアップとしての就職活動中ならば、転職先の条件のひとつに「退職金の有無」を加えてもいいでしょう。ただし、募集要項などに退職金制度を明記する決まりはないため、担当者に確認する必要があるかもしれません。

資産運用は長期的な視点で考える

将来の安心のために、貯蓄や資産運用は有効な手段です。

資産運用では、目先の利益ではなく長期運用を念頭において行うことが重要です。例えば、NISAの中でも「つみたてNISA」では、長期運用に適した低コスト商品のみが投資対象となっています。投資額のうち年間40万円までは分配金や譲渡益などの運用利益が「非課税」となり、投資開始から20年間適用されます。

また、「個人型確定拠出年金(iDeCo)」は、月々5,000円からの掛金で投資を行い、その運用利益を将来の年金のために積み立てるものです。こちらも、運用益は非課税となっているため、節税効果が見込めます。今の勤務先に「財形貯蓄制度」がある場合は、そちらを利用するのもいいでしょう。

資産運用にはリスクもありますが、手段のひとつとして知っておくことに損はありません。

退職金制度は終身雇用あってこその制度

退職金は、隠居する武士への「退隠金」、永年勤続後に独立する奉公人への「暖簾分け」などが始まりだと言われています。明治以降は、熟練労働者確保のために在職年数が長いほど退職金が多いシステムが生まれ、昭和初期には失業保険制度や老齢年金を補填する目的で発展しました。

退職金制度の普及が急速に進んだのは、第二次世界大戦以降のことです。最初は安月給でも、定年まで勤め上げることでまとまった資金を手にすることができる退職金制度は、当時の「終身雇用」と相性がよかったのでしょう。

総務省の「労働力調査」によると、2019年の雇用者数のうち「非正規雇用者」の割合は約38%にものぼります。終身雇用制度が崩れつつある現代においては、従来の退職金制度では合わない時代がやってきているのかもしれません。

退職金制度がある企業は全体の約80% 宿泊業・飲食サービス業では40%が退職金なし

厚生労働省の「平成30年就労条件総合調査」によると、退職金制度がある企業割合は80.5%となっています。

ただし、これは対象企業を「常用労働者30人以上である会社組織の民営企業」としています。従業員数が多く企業規模の大きい会社ほど退職金制度を設けている割合が高く、100人以下の会社では「退職金制度あり」が77.6%に下がります。30人以下の企業を対象に加えた場合は、更に低くなるでしょう。

また、業種別では「宿泊業・飲食サービス業」が約60%で最も低く、次いで「生活関連サービス・娯楽業」が約65%となっています。

退職金制度に頼らないライフプランニングを

定年退職まで、どのくらいの時間が残っていますか。月に少しずつ、あるいはボーナスごとに一定額を貯蓄や運用に回した場合、いくらくらい確保できそうですか。

退職金は、絶対ではありません。あてにしすぎず、「もらえたらラッキー」だと考えておくくらいでちょうどいいのかもしれません。老後の安心は、自分で確保しておきましょう。将来の安心のために、貯蓄や資産運用について考えて見るのもよいでしょう。(提供:Wealth Road