いまだに収束の兆しが見えない新型コロナウイルス感染症。人類はこれまでの長い歴史の中で、いくつもの感染症と闘ってきました。2000年にわたる感染症と人類の歴史を振り返り、テクノロジー開発によるコロナとの共存を展望します。

人類と感染症の2000年にわたる戦いの歴史

感染症
(画像=festfotodesign/stock.adobe.com)

歴史をひもとくと、これまでも大規模な感染症の流行があったことがわかります。その中でいくつかを取り上げてみましょう。

165年~180年 アントニヌスの疫病

「アントニヌス」とはローマ帝国第16代皇帝の名前です。その担当医師であったガレノスの記録が残っています。天然痘だったのではないかという説もあり、700万~1,000万人が死亡したといわれています。

542年~543年 ユスティニアヌスのペスト

歴史上3回あったペスト(黒死病)の最初の大流行です。東ローマ帝国の人口の約半数が死亡したといわれています。東ローマ皇帝ユスティニアヌス自身も感染したため、この名がつけられています。

1545年~1550年 メキシコのココリツリ

メキシコ南部に栄えたアステカ文明で起きた疫病です。500万〜1,500万人が犠牲になったとされています。地元で「ココリツリ」と呼ばれ、謎の疫病とされてきましたが、遺跡から発掘された当時のヒトの歯からサルモネラ菌のDNAが発見されたという発表もありました。

1918年~1920年 スペイン風邪

スペインでの流行が報じられたことから、「スペイン風邪」と呼ばれています。世界各国で2,000万〜4,000万人以上ともいわれる数の死者を出したといわれています。後の研究で、インフルエンザの大流行であることが判明しました。

これら、甚大な被害をもたらしたいくつかのパンデミックに対して、産業革命以降、人類の英知が発揮されるようになってきました。1801年に、エドワード・ジェンナーが発明した天然痘のワクチン接種による予防法が発表され、1897年には、日本の北里柴三郎がペストの原因菌を発見。そして、1928年にイギリスのアレクサンダーフレミングが抗生物質「ペニシリン」を発見したことを契機に、人類は細菌による感染症を抑え込む手段を得たのです。

第2次世界大戦後は、各国でウイルスの感染症に対応したワクチンの予防接種が推進され、ウイルスによる感染症も大幅に減少していきました。

活躍する感染症対策用の先端テクノロジー

人類は感染症に勝利したかのように思われていましたが、今回のコロナ禍で自然界にはまだ未知のウイルスが存在することを思い知らされました。いまだにワクチンの開発もままならず、しばらくは感染のリスクを感じながら、日々暮らしていかなくてはならないでしょう。

そんな中、感染症対策に先端テクノロジーが活躍しています。人工知能(AI)とCT画像を使った診断精度の高い新型コロナウイルス肺炎診断支援システムが認可されたり、日本のスーパーコンピュータ「富岳」が治療薬候補探しに活躍したりしています。

また、ドローンで空から発熱者を発見する方法や、AIを使って新型コロナウイルスに関する膨大な論文を分析し、治療法を発見する試みもあります。

人間のひとり勝ちはあり得ない

「感染症とは環境問題である」と考えるのは、『感染症の世界史』の著者である石弘之氏です。20世紀になってインフルエンザが大流行するようになったのは、人類の過密化、すなわち急速に進んだ都市化が原因と見ています。人間同士の距離が近くなるほど、ウイルスの感染力は強まるからです。

過密な都市環境での生活がある限り、ウイルスは環境に順応するように進化を続ける一方、人類もウイルスに打ち克つ方法を探し続けることになると、石氏は予想しています。それはウイルスとの共存関係であり、「人類がウイルスを全滅させて一方的に勝つということはあり得ない」と警鐘を鳴らしています。

コロナ禍から学んだ新しい考え方とは

コロナ禍で出勤の必要性自体が問われるなど、従来想定していなかった事態が訪れています。経済の停滞という負の側面がある一方で、人々が新しい考え方や生活様式を受け入れていくなかで、古い習慣を捨てて新しい社会を迎え入れようとすることへの期待感もあります。

ウイルスとの共存を模索するために開発が続く感染予防技術は、今後の社会基盤になるでしょう。医療、IT、通信などの分野に新たなビジネスチャンスが生まれます。投資を含めた経済活動でもコロナとの共存を考える必要があるなかで、歴史に学びつつ、来るべき世界を予測していく姿勢が求められるでしょう。(提供:JPRIME


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