(本記事は、井上 達也氏の著書『起業を考えたら必ず読む本』の中から一部を抜粋・編集しています)

人が少ないほど、いい経営

起業を考えたら必ず読む本
(画像=redpixel/stock.adobe.com)

「起業しました、早く人を雇いたいです、何人の会社にしたいです!」

こういう社長は少なくありません。社員が多ければ多いほど素晴らしいと勘違いしている社長さえいます。

しかし、真実は逆で、人なんて少なければ少ないほど、効率がいいのです。雇えば雇うだけ、商売とは関係ないことに頭を悩ませることになります。

給与が不満といった待遇の問題や、社内の誰それさんとはうまくいかないといった人間関係の問題、新規事業を自分で立ち上げ突然退社といった会社の事業に関わる問題もあります。社員の数が多ければ多いほどさまざまな問題が起こり、社長はそれに忙殺されます。

早く大きな会社にしたいというのはわかりますが、大きな会社とは社員数が多いということではありません。売上や利益が多い会社が『大きい会社』なのです。

会社経営を成功させるのであれば、社員数はミニマムにすることをオススメします。そして採用は焦らないことです。私も経験があります。大きな見出しの求人広告を高いお金で出した時は、良い人が来ないと焦ってしまいます。求人広告に使ったお金を回収したくて、まぁこの中だとこの人が良いかなぁなんて雇ってしまうものです。

お金はもったいないですが、気に入った人が来ない時は思い切って誰も採用しないことです。

よく考えてみてください。人をひとり雇ったら社会保険や交通費なども含めると、年間で500万円はかかります。求人広告費の100万円、200万円がもったいないのはわかりますが、できない人を雇い、ミスマッチングでその人が辞めてしまい、また求人広告を出すくらいなら気に入らない人を勢いで雇わないことです。

昔、一気に会社を大きくしたくて、営業社員をいっぺんに4人雇ったことがあります。

ところが、1年経っても営業社員全員がほとんど売れません。結局ひとりまたひとりと退社していき、最終的に営業社員4人全員が退社しました。

では売上はどうなったかというとほとんど変わりませんでした。しかも人件費がなくなった分、会社は大幅な黒字になりました。

起業家はアルバイトを雇う

人が少ないほうがいいことはわかったが、それでも人を雇いたいという場合もあるでしょう。

「毎日朝から晩まで働いている、寝る時間もないんだよ!」

できればそれでも採用は我慢していただきたいというのが私の主張です。

何故かと言うと、あなたがいくらお金をかけて、素晴らしい求人広告を出したとしても小さな会社、創業したばかりの会社にはまともな人が来ないからです。

私も起業してしばらく経ち、仕事が忙しくなったため、求人広告を出しました。応募者は来るのですが、相当低いレベルの人ばかりが集まってしまいました。大卒でも中学で習った漢字が読めない。簡単な計算ができないという能力に問題のある人や、人と目を合わせられない、勤務日数の半分以上が遅刻、暴行で前科がある、突然来なくなってしまうといった人間性に問題がある人など、応募してくる人はつわものばかり。

いえ、面接に来るのはまだいいほうで、連絡なしで来ない人もたくさんいました。

また、ある時は「採用が決まりました」と電話したところ「結構です」と逆に断られる始末です。雇った次の日に辞めた人もいました。

私が昔、在籍していた会社は社員数500名。会社は新宿の三井ビルの最上階にありました。TVでCMも流していたので、それなりに人気がありましたが、ほとんどは平凡、というか普通の人です。こういう会社でさえ優秀な人は来ないのです。あなたの会社に優秀な人が来ることはまずないでしょう。

正社員の場合、会社に自分の人生を賭けることになるのです。だから慎重に会社を選びます。あなたも起業したてでいつ倒産するかわからない、給与をもらえないかもしれない会社には入社したくないですよね。

つまり、あなたの会社には「それでもいいや、どこにも受からないし……」といった人たちしか集まらないのです。だから優れた人どころか普通の人さえ来ません。

また、金銭的に言っても正社員はオススメはしません。起業したての場合には、優秀なアルバイトを雇うのです。時間も融通を利かせてあげ、数人をローテーションでまわします。アルバイトならあなたの会社がたとえ起業したてで小さな会社でも関係なく来てくれるはずです。

では、どんなアルバイトがいいのかと言うと、話の受け答えがスムーズかどうかです。

学歴や経歴はまったくあてになりません。日本人である必要もありません。とにかく普通にしゃべることができるかどうかです。なぜか能力の低い人は自己表現が下手というか、話の受け答えがぎこちない気がします。面接で緊張しているのかなといいほうに考えてはいけません。いつでも普通に会話ができる能力は必須です。

しかし、事務職ならこれでいいかもしれないけれど、営業職は正社員でないと難しい。

こうした理由で正社員を雇いたいなら昔からつき合いのある、知っている人を雇いましょう。あなたもその人の能力を知っているでしょうし、相手もあなたの人柄を知っている人ですからスグ辞めてしまうということもありません。

なぜ、こんなに採用について厳しいのかと言うと、ダメな人を雇うと会社の業績が落ちてしまうからです。仕事とスポーツは同じです。野球がうまい人はバスケットもバレーボールもそこそこ上手です。逆に、運動神経のない人は何をやらせてもダメですよね。

仕事も同じです。総務ができる人は営業やサポート、経理などもそこそこできるものです。できない人というのは、何をやらせてもダメなのです。

起業を考えたら必ず読む本
井上 達也
1961年生まれ。法政大学経営学部卒。
株式会社日本デジタル研究所(JDL)を経て1991年に株式会社セイショウシステムテクノロジー(現、フリーウェイジャパン)を設立。
同社は、クラウド業務系システムを開発・提供しており、そのユーザー数は11万を超える。
ベンチャーキャピタルからの出資なしで事業を拡大できたのは、著者の斬新な戦略発想に依るところが大きい。
その力を頼って、上場企業を含めた様々な業界の経営者から相談されることも多く、積極的に他社を支援している。
無類のお酒好きで、Facebookなどを通じて読者と交流するなど、多様な面を持ち合わせている。

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