(本記事は、井上 達也氏の著書『起業を考えたら必ず読む本』の中から一部を抜粋・編集しています)
値下げより値上げ
商品やサービスで永遠に売れ続けるものはありません。最初は売れていても、だんだん売れなくなっていきます。飲食店であればよっぽどの人気店にならないかぎりお客さんはだんだん少なくなっていきます。
「その時におかしいな、どうしてかな、やっぱり価格かな」と値下げをする社長がいます。
残念ですが、値下げしても利益が下がるだけで、現状を打開することはできません。値段を下げずにどうやって売るのかを考えるのが、経営者の仕事です。
あるコンサルタント会社の社長とお酒を呑んでいた時のお話です。
「今、コンサルタント料を毎月7万円もらっているんだけど、お客様がどんどん減ってしまい、今契約している会社は5社しかないんだ。もっと価格を安くすれば多くの会社とコンサル契約を結べるんじゃないかな。ダメだった時はもう会社を締めるつもりなんだけど、どう思う?」
こう聞かれた私は、次のように提案しました。
「コンサルタント料を300万円にして5年リースにするのはどうでしょうか?」
社長は呆れて「今、7万円でも契約がとれないのに、300万円なんて言ったら、誰も契約してくれないよ」と答えます。
しかし、彼は他に解決策が見つからず、私の言葉を信じてコンサルタント料を300万円に値上げしました。
すると、その期の経常利益は黒字になり、4000万円プラスに転じました。
安い値段には安いお客様、高い値段には高いお客様がやってきます。新車のベンツが100万円で売っていたら、あなたは「幽霊でも出るんじゃないか」と怖がって買わないですよね?
それなりのサービスや商品の場合、価格がある程度高くないと、大したサービスは受けられないと思われたり、まがいものやコピー商品を売られるんじゃないかと、むしろ疑わしくなってしまうのです。
価格を決めることは、ターゲットを決めることでもあるのです。高級車を探している人には、安い中古車の広告は目に入りませんし、安ければ何でもいいと中古車を探している人には新車の広告はスグに捨てられてしまいます。
ターゲットの違う人には、あなたがいくら一所懸命頑張っても売れないのです。売れないからと値下げすると、今までのお客様が離れてしまうかもしれません。安いものばかり探している下賤なお客様が増えてしまうかもしれません。
単に値下げすれば、もっと売上が上がると思うのは幻想なのです。むしろ値上げできないかを考えてみてください。
株式会社日本デジタル研究所(JDL)を経て1991年に株式会社セイショウシステムテクノロジー(現、フリーウェイジャパン)を設立。
同社は、クラウド業務系システムを開発・提供しており、そのユーザー数は11万を超える。
ベンチャーキャピタルからの出資なしで事業を拡大できたのは、著者の斬新な戦略発想に依るところが大きい。
その力を頼って、上場企業を含めた様々な業界の経営者から相談されることも多く、積極的に他社を支援している。
無類のお酒好きで、Facebookなどを通じて読者と交流するなど、多様な面を持ち合わせている。
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