自宅に住み続けながらまとまった老後資金などを手に入れたい。そんな人たちに注目される仕組みが「リバースモーゲージ」と「リースバック」です。メリット・デメリットを比較することで違いを整理していきましょう。どんなケースと相性がよいのかが理解できます。
リバースモーゲージとリースバックの違いとは?
リバースモーゲージもリースバックも、自宅にそのまま住み続けながら老後資金(まとまったお金)を確保しやすい仕組みです。リタイヤ後の人やご高齢者でも利用しやすいというのも共通点です。ただ両者は根本的な仕組みが違います。まずはこの違いをしっかり把握しましょう。
リバースモーゲージとはどんな仕組み?
リバースモーゲージとは、自宅を担保にお金を借り、名義人が亡くなった後(または、契約満了時)に自宅を売却処分して返済する仕組みです。お金を借りる相手は、金融機関や社会福祉協議会などです。名義人の死亡後も、配偶者がそのまま自宅に住み続ける選択もできます。
リバースモーゲージの活用例としては、資金で趣味を楽しんだり介護やリフォームの費用にあてたりといったスタイルがあります。この他、資金を使って住宅ローンを借り換えたり、別の家に住み替えたりといったケースもあります。
リースバックとはどんな仕組み?
リースバックとは、ご自宅をいったんリースバック運営会社に売却処分します。この会社からリースしてもらうことで自宅にそのまま住み続けられる仕組みです。リバースモーゲージと同様、手に入れた資金を趣味や介護などさまざまなシーンに生かすことができます。
リバースモーゲージとリースバックの大きな違い
両者の大きな違いは、自宅の所有者が亡くなった後に自宅を売却処分するか(=リバースモーゲージ)、所有者が亡くなる前に自宅を売却処分するか(=リースバック)、という点にあります。
リバースモーゲージとリースバックのメリット比較
両者のメリット・デメリットを一覧化すると下記のようになります。1項目ずつ詳しい内容を見ていきましょう。
リバースモーゲージ | リースバック | |
---|---|---|
メリット |
・所有権を変更しなくていい ・家賃を払わなくていい ・お金の受け取り方法が選べる ・相談先の選択肢が多い ・幅広い用途がある | ・戸建て以外の不動産にも使える ・税金や諸費用を負担しなくていい ・相続トラブルを回避しやすい ・買い戻すことも可能 ・資金の自由度が高い |
デメリット |
・長生きリスク ・借入額が担保評価を上回るリスク ・子が同居できない | ・家賃が割高なことも ・売却価格が割安なことも ・買い戻し価格が割高なことも |
リバースモーゲージの5つのメリット
自宅を担保にお金を借りる「リバースモーゲージ」のメリットは次の通りです。
・メリット1:所有権を変更しなくていい
リバースモーゲージは亡くなった後に自宅を売却するため、ご自身名義の家にずっと住み続けられる安心感があります。
・メリット2:家賃を払わなくていい
リースバックの場合は売却した家を借りているため、月々の家賃(リース料)が発生します。一方、リバースモーゲージは家賃の負担がないため、定期コストを減らしたい人に向いています。
・メリット3:お金の受け取り方法が選べる
リバースモーゲージで融資されたお金の受け取り方の例としては、一括払い、毎月払い、融資枠内で自由に引き出せるなどがあります(金融機関による)。この中から、ご自身に合ったお金の受取方法を選べます。
・メリット4:相談先の選択肢が多い
数多くの金融機関や社会福祉協議会がリバースモーゲージを提供しています。相談先が身近にたくさんあることもリバースモーゲージの利点です。
・メリット5:幅広い用途がある
リバースモーゲージで得た資金の用途は、介護費、リフォーム費、生活資金などに限定されています。事業や投資目的では使えません。ただ幅広い選択肢があるため、それほど不便は感じないはずです。
リースバックの5つのメリット
自宅を売却処分した後に借りる「リースバック」のメリットは次の通りです。
・メリット1:戸建て以外の不動産にも使える
リバースモーゲージは一般的に戸建てを対象にした仕組みです(マンション可の場合もあり)。これに対してリースバックは戸建て、マンション、事務所など幅広い不動産を対象にしていることが多くなっています。
・メリット2:税金や諸費用を負担しなくていい
リバースモーゲージの場合、所有権はご自身にあるため定期コスト(固定資産税、修繕費、管理費など)を負担する必要があります。リースバックは運営会社が物件を所有しているため定期コストの負担がありません
・メリット3:相続トラブルを回避しやすい
自宅を前もって現金化しているため、「誰がどれくらい遺産をもらえるか」さえクリアにしておけば、名義人が亡くなった後の遺産分配がスムーズです。
・メリット4:自宅を買い戻すことも可能
売却した自宅を買い戻すことを前提にリースバックを利用する人もいます。例えば、将来的に相続でお金が入ってくるあてがある、あるいは、事業が軌道にのれば十分なお金が用意できるといったケースで使うことができます。
・メリット5:資金の自由度が高い
リースバックは融資ではないので、売却したお金の使い道は自由です。当然ながら、事業資金や投資資金にも使えます。
リバースモーゲージとリースバックのデメリット比較
このように、それぞれ数多くのメリットのある両者ですが、いくつかのデメリットもあります。比べてみましょう。
リバースモーゲージのデメリット
リバースモーゲージのデメリットの1つ目は、名義人が想定よりも長生きして借入金が積み上がった場合に、借入額が担保評価を上回るリスクがあることです。これにより、新規借入ができない、あるいは、超過分の一括返済、担保の回収などの可能性があります。
デメリットの2つ目は、不動産の売却処分の際、その価格をローン残債が上回ってしまえば、差額を負担しなければならないことです。金利上昇や物件の評価額下落などのリスクを織り込んだ返済計画が重要です。
3つ目は、リバースモーゲージでは配偶者以外の家族(子など)は原則同居できません。同居が前提であればリースバックを選択した方がよいでしょう。
リースバックのデメリット
リースバックのデメリットの1つ目は、月々支払う家賃(リース料)が割高なケースもあることです。リース契約のため仕方ない面もありますが、極端に相場とかけ離れていないか比較した上で契約するのが賢明です。
デメリットの2つ目は、自宅の売却価格が相場よりも安いケースもあることです。こちらも売却前に相場との比較が必須です。
3つ目は、買い戻し費用が通常の不動産価格よりも割高になるケースがあることです。買い戻しの可能性がある方は、こちらもしっかり確認した上で売却を実行しましょう。
リバースモーゲージとリースバック、それぞれが合うタイプは?
ここでは「リバースモーゲージ」と「リースバック」のメリット・デメリットを中心に見てきました。端的にいえば、リバースモーゲージに向いているのは、自分名義の家に住み続けたい、月々の家賃を払いたくない、同居しているのが配偶者のみといった方々です。
一方、リースバックに向いているのは、マンションや事務所を元手に資金を得たい、生活資金にもお金を使いたい、子と同居しているなどの方々です。
また、もう一つの選択の軸としては、リバースモーゲージは制約の多い傾向もあります(例:60歳以上のみ利用可、推定相続人の同意が必須、年1回の自宅訪問など)。これらの内容を参考にしながら、間違いのない選択をすることが重要になってきます。(提供:YANUSY)
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