持家の取得や不動産運用は、住宅に関する各種補助制度や税制が大きく影響してきます。不動産投資を考える場合は、現在の施策がどうなのかと同時に、今後についてもしっかりとチェックする必要があります。特に、コロナ禍で投資を含めた不動産市場は大きな影響を受けているだけに、支援策の充実が期待されています。
政府予算と税制改正で住宅施策が決まる
住宅投資動向は景気を大きく左右します。国内総生産(GDP)を構成する要素をみると、個人消費がほぼ半分を占めているのですが、次いで企業の設備投資、公共投資と並んで、住宅投資が大きな要素を占めています。
そのため、景気が悪いときには住宅投資を促進して景気を刺激するために、各種の住宅取得促進策が実施されます。反対に景気が過熱気味のときには、ブームを冷ますために引き締め策がとられます。
いわば景気の調整役を担うわけで、景気動向によって各種施策が変更されます。具体的には、補助金などの予算措置と、税制優遇などの税制面の支援策があり、毎年の政府予算、税制改正によって調整される仕組みです。
例年、8月末(2020年はコロナ対策最優先のため9月末に延期)に翌年度の政府予算、税制改正に関する要望が各省庁から出され、12月に与党の予算案、税制改選案にまとめられ、3月の国会で成立して、4月から執行されることになります。
住宅業界が求める21年度の住宅取得支援策
2021年度の予算や税制改正に関しては、コロナ禍の影響もあって、かなり思い切った施策が実施されるのではないかと期待されています。経済活動の自粛もあって、住宅投資が大きく落ち込んでおり、これまでにない対策が求められているのです。
2020年8月に、大手住宅メーカーなどが会員の住宅生産団体連合会(住団連)は、住宅業界を管轄する国土交通省に対して、2021年度の予算、税制について、次のような要望を出しています。
①:(仮称)新しい生活様式ポイントの創設
②:住宅ローン減税の拡充
③:ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)補助制度の拡充
④:住宅取得資金等に係わる贈与税非課税枠の拡大
このうち、②~➂は主に持家の取得に係わる施策ですが、①に関して住団連は賃貸住宅についてもポイント付与の対象に含めるように求めています。
最大200万円相当のポイントを付与する
この「(仮称)新しい生活様式ポイントの創設」というのは、ウィズコロナ、ポストコロナをにらんで、「新たな日常」や「新しい生活様式」に即応した住生活を実現するために、経済波及効果の大きい民間住宅投資を促進するよう新たなポイント制度を創設するというものです。
わが国の住宅の基本性能を高め、質量ともにレベルアップを図るため、「耐震性」「省エネ性」「バリアフリー性」などに優れた住宅の整備に加え、新型コロナウイルス感染症拡大を契機にした新たな住宅の整備などをポイント対象にしたい意向です。
住宅に関するポイント制度は、これまでにも何度か実施されてきましたが、その多くは30万ポイント(30万円相当)、50万ポイントなどが上限になってきました。それでも、一定の効果を挙げてきたのですが、今回のコロナ禍はリーマンショック以上の深刻な打撃になっているとして、住団連では1戸当たりの上限を200万ポイントとするように求めています。実現すれば、住宅取得に当たって大きなインセンティブになるのは間違いなく、ポストコロナのV字回復を促進するのではないかと期待されます。
新たなポイント制度では賃貸住宅も対象に
これまでの住宅ポイント制度は、持家取得がメインで賃貸住宅は対象外とされることが多かったのですが、住団連は今回のポイント制度に賃貸住宅も加えるように求めています。
周知のように、一部金融機関の不正融資などの問題によって、賃貸住宅市場はこのところ停滞感が強まっています。トラブルが発生しているのはごく一部なのですが、賃貸住宅の着工件数は前年比でマイナスが続いています。賃貸住宅が回復しないことには住宅着工全体も回復しないため、その対策が喫緊の課題となっています。
新設するポイント制度に賃貸住宅を加えることで、住宅投資回復の起爆剤にしたいということのようです。このポイントでは、取得したポイントを各種の電子ポイントにしたり、家電品・食品などの商品と交換したりできますが、住団連では「即時交換」も可能とするように求めています。
住宅、不動産業界も熱心に取り組む材料に
「即時交換」は、ポイントの対象となる設備を追加で発注する場合、そのポイントを直接住宅メーカーや分譲する会社などの業者が受け取れるようにする制度です。そうなると、業者にとっては、その追加分だけ売上高が増加するわけですから、対象となる設備の設置を取得する人たちに積極的に勧めることになります。
取得する人にしてみれば、設置費用はポイントでカバーできるので、追加の負担はありません。そのため、より快適な生活ができるように、あるいは賃貸住宅であればテナントを確保しやすいように、業者の勧めに応じる可能性が高まります。それによって賃貸住宅を含めた住宅市場が活性化すれば、コロナ禍で停滞している経済活動の回復の一助になるはずです。
住宅投資が生産活動、雇用を活発にする
住団連の試算によると、年間16.3万戸の住宅建設の増加によって、2兆6,400億円の建設費が増え、木材・ガラス・鉄鋼・セメントなどの素材産業、それらを運ぶ物流業界、引越しに伴う耐久消費財購入などの生産誘発効果が大きく、計5兆4,400億円の誘発効果があるとされます。それによって52万人の新たな雇用が発生します。
不動産投資用の賃貸住宅を含めた住宅投資の回復は、コロナ禍で打撃を受けた日本経済の回復にとっては不可欠な要素であり、そのためにも「(仮称)新しい生活様式ポイントの創設」などの施策の実現が期待されるところです。不動産投資を目指す人にとっても、この新たなポイント制度が実現すれば、投資が格段に有利になるのは間違いありませんから、その動向については注目しておきたいところです。 (提供:YANUSY)
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