区分マンションを保有している人の中には、1棟アパートの購入を検討する人もいるのではないでしょうか。しかし両者の違いを理解したうえで購入をしないと思わぬ負担を強いられる可能性があります。それぞれのメリット・デメリットを把握し、適した投資スタイルを理解したうえで購入するようにしましょう。

本記事では1棟アパートと区分マンションの投資スタイルの違いについて解説します。

1棟アパートの3つのメリット

不動産投資
(画像=alexander-raths/stock.adobe.com)

まず1棟アパートのメリットでは、主に以下の3つが挙げられます。

  1. 家賃収入がゼロにはならない(ゼロにはなりにくい)
  2. 利回りが高い
  3. 自分で運営を決められる

家賃収入がゼロにならない

1棟アパートは複数の部屋数があるため、空室が何部屋か出ても家賃収入がゼロにはなりません。家賃収入が安定して入ってくることは、区分マンション(1戸)にはない大きなメリットです。もちろん地域の賃貸需要によって入居率は変わるため、不動産仲介会社への十分な聞き取りなどの調査は必要になります。しかしすべてが空室になることは考えにくいため、毎月の収入がゼロにならない安定性は魅力と言えるでしょう。

利回りが高い

1棟アパートは、区分マンションに比べ高額な物件が多い傾向です。しかし同エリアの区分マンションと比較すると利回りは高い傾向があります。多少家賃が安めでも数でカバーできます。なかには利回りが10%以上の物件もあり6%前後が主流の区分マンションとは大きな違いです。投資資金の回収も早いだけでなくその後の家賃収入も多くなるため、高い利回りも当然と言えるでしょう。

自分で修繕などの判断ができる

区分マンションと違い1棟アパートは、管理や運営を所有者の判断で行うことができます。例えば費用のかかる修繕のタイミングやどこに手を加えるかなど予算や建物状態に応じて調整することが可能です。また建物の外壁を塗り替えイメージを一新したり外構に手を加えたりして新たな入居者にアピールする施策を自分の判断で実行することができます。

区分マンションのように建築時に決められた計画に従い管理組合の合意で管理運営が行われる形態とは大きく異なります。

1棟アパートの3つのデメリット

1棟アパートのデメリットには、主に以下の3つが挙げられます。

  1. 購入価格が高い
  2. 修繕費が高い
  3. 売却しにくいことがある

購入価格が高い

1棟アパートは、郊外の物件でも都心の区分マンションより高額なものが多いため、ある程度の資金が必要です。不動産投資サイトに掲載されている物件を同じ築年数で比較すればその違いは明らかで区分マンションを見慣れた人にとっては購入に二の足を踏んでしまう可能性もあります。しかし1棟アパートは土地も含まれ戸数も違うため、価格だけで判断すべきではありません。

修繕費が高い

1棟アパートは、建物全体の所有であり規模も大きいため、区分マンションに比べ修繕費が高額になります。また部屋数に応じて設備も多くなるため、修理や入れ替えの費用、建物以外にも敷地や外壁、屋根、エントランス部分などの修繕費もかかります。一方で区分マンションも修繕費はかかりますが共用部は所有者で分担されるため比較的安価な傾向です。

売却しにくいことがある

1棟アパートの構造は、木造が多いため、鉄筋コンクリート造が主流のマンションと比べると耐用年数が短い傾向です。国税庁が示す住宅用建物の耐用年数によると木造の耐用年数は22年に対して鉄筋コンクリート造は47年と約2倍以上の違いがあります。物件の買い手が銀行融資を受けて購入する際は、この耐用年数の残期間で融資期間が決まる傾向です。

区分マンションに比べて1棟アパートは短い融資期間となるため、支払いを抑えたい買い手の場合は売却がしにくいことがあるでしょう。

区分マンションの2つのメリット

区分マンションのメリットには、主に次の2つがあります。

  1. 価格が下がりにくい
  2. 修繕費の負担が少ない

価格が下がりにくい

区分マンションは、価格が下がりにくいことがメリットの一つです。東京カンテイの2020年8月24日付けのプレスリリースによると2020年7月の三大都市圏における中古マンション価格は前月比でいずれも微増でした。多少の増減をしつつも高い水準で推移しておりコロナ禍が続く中でも区分マンションの価格が下がりにくい特徴がうかがえます。

修繕費の負担が少ない

区分マンションは、所有する建物面積が少ないため、修繕費が1棟アパートに比べ安く済みます。投資規模が違うため当然と言えますが、出費を押さえたい人にとっては魅力的な部分です。ただし共用部分を定期的に直すための修繕積立金を毎月一定額納め続ける必要があります。

区分マンションの3つのデメリット

区分マンションには、主に以下の3つのデメリットがあります。

  1. 収入がゼロになる可能性あり
  2. 利回りが低い
  3. 修繕などを自分でコントロールできない

収入がゼロになる可能性あり

区分マンションは1物件で1戸のため、空室になれば収入がゼロになってしまいます。複数の部屋を持ち収入がゼロになりにくい1棟アパートとの大きな違いです。そのため区分マンションは都心のように継続的に入居者が見込める立地を選ぶ必要があります。

利回りが低い

区分マンションは戸数が1戸のため、複数の部屋を持ち家賃収入の多い1棟アパートと比べると利回りは低くなる傾向です。物件価格が1棟アパートと比べて低い傾向のため、不動産投資の最初の一歩や副業としては適していますが、より高い利回りを目指す人にとっては少し物足りない投資となりかねません。

修繕などを自分でコントロールできない

区分マンションは、専有部分以外を自分の判断で修復したりリノベーションをしたりすることはできません。なぜなら建築した当時の計画に即して修繕が行われそれ以外は管理組合で協議し合意をされたものが行われるからです。たとえ外壁が汚れていて入居者募集に影響があると感じても一所有者の判断ではどうすることもできずもどかしい思いをする可能性があります。

それぞれが適している投資スタイル

1棟アパートと区分マンションの特性を考慮すると適した投資スタイルとはどのようなものになるのでしょうか。

・1棟アパートが適している投資スタイル
1棟アパートは、初期投資額が高めになりますが家賃収入が多く見込めるため、多くの家賃収入を求める人に適しています。また自分のペースで積極的に修繕、リフォームなどを行いさらに利益を高めたい人にも適しているでしょう。

・区分マンションが適している投資スタイル
区分マンションは、少ない投資額でリスクを抑えたかったり、あまり手間やコストをかけられなかったりする初心者や副業で投資を行う人に適しています。

1棟アパート購入時の2つの注意点

1棟アパートは、利回りの高さやオーナーの判断で積極的に修繕をできるなどのメリットはありますが購入時には以下の2つの点に注意しましょう。

賃貸需要の見極めが大切

物件の所在する地域に「十分な賃貸需要があるかどうか」は、1棟アパートを運営するうえで大きなポイントになります。なぜなら需要が低い地域だと空室が多くなり高い利回りが損なわれる可能性があるからです。しっかりと周囲をリサーチし仲介不動産会社と協議する必要があるでしょう。

建物状態を十分に確かめる

区分マンションと違い1棟アパートの修繕は、すべて所有者の責任となります。そのため購入に当たっては十分に建物状態を確かめ修繕が少なくて済む物件を購入しましょう。あまりにも修繕が頻発するようなケースでは利回りが低くなりかねません。

区分マンション購入時の2つの注意点

価格も手ごろで購入後も手のかからないイメージのある区分マンションですが購入時には主に以下の2点の注意が必要です。特に空室が発生すると収入が途絶えてしまうため、そのリスクを可能な限り回避できる物件を選んだほうがよいでしょう。

立地を重視する

区分マンションは、空室を発生させないことが収益化するための大前提です。そのためには立地を重視し入居者が途切れない物件を購入するようにしましょう。

共用部の劣化や入居率を確認

空室にしないためには、間取りや価格、利回りも大切ですが建物全体の状態も確かめる必要があります。共用部の劣化や建物全体の入居率など購入する区分所有以外の場所に不安要素がないかしっかりと確認するようにしましょう。

自分に合った物件形態を選ぶ

同じ不動産投資の対象でもそのメリット・デメリットや適した運営スタイルを十分に理解したうえで1棟アパートか区分マンションかを選ぶことが賢明です。実際には、物件を手に入れてからが本番となるため、価格や利回りだけにとらわれず総合的に判断しながらしっかりと運営できる自分の投資スタイルに合った物件を選びましょう。(提供:YANUSY

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