コロナ禍で世界的に業務のリモート化が進んだ2020年、日本では「押印のためだけに出勤する」不思議な現象が起こりました。対面で業務を行っていたときにはさして問題にならなかった押印も、リモート下では業務の妨げになることが多く、一部企業は率先して「脱ハンコ」を表明しています。押印の電子化、あるいは廃止を政府も推し進める中、年末調整でも押印が必要なくなるかもしれないことがわかりました。
2020年6月から経済団体・政府は動いていた
日本経済団体連合会、経済同友会、日本商工会議所、新経済連盟の経済4団体が、各府省に「行政手続における書面主義、押印原則、対面主義の見直しについて」という緊急要望を提出しました。これに対し、内閣府規制改革推進室は2020年6月5日に「見積書、請求書、領収書は押印不要。Eメールでの書類提出も可」と回答。
同月19日には、内閣府、法務省、経済産業省が押印に対しての政府見解を発表(「押印についてのQ&A」)しました。これによれば、「契約は当事者の意思の合致により成立するもので、書面への押印は特段の定めがある場合を除き必要な要件とはされていない」とのことです。
同年7月8日には、内閣府や経済4団体の連名で「『書面、押印、対面』を原則とした制度・慣行・意識の抜本的見直しに向けた共同宣言~デジタル技術の積極活用による行政手続・ビジネス様式の再構築~」が発せられました。
この宣言では、新型コロナウイルスの感染拡大への緊急対応としながらも、「書面主義、押印原則、対面主義を求めるすべての行政手続きの原則デジタル化を恒久的な制度的対応として各府省に求める」と明記しています。
9月から議論が加速
このように「脱ハンコ」の動きが高まる中、9月23日に行われたデジタル改革関係閣僚会議にて、河野内閣府特命担当大臣が「行政のデジタル化を妨げる一つの要因」として、印鑑証明や銀行印等の必要がない書類への押印を廃止したいと発言。河野大臣はのちに公式ホームページにて、押印の原則廃止を各省に求めていることを公表しています。
年末調整の押印も不要に?
国税庁は、2020年分から年末調整手続きの電子化を進めるとしています。これまで、年末調整の手続きは従業員が保険会社等から受け取った控除証明書をもとに控除額を計算し、記載・押印して勤務先に年末調書申告書を提出しなければなりませんでした。電子化されれば、控除に関する書類を受け取り、計算して記載する手間を省き、さらに押印も不要となります。
年末調整の電子化では、従業員だけでなく会社側も電子化に対応しなければなりませんが、実現されれば業務負担が軽減されるばかりか、業務のデジタル化、ペーパーレス化も進むでしょう。
ハンコ廃止で業務のデジタル化が一気に加速
日本において、押印はこれまで大きな役割を担ってきました。しかし、デジタル化が進む現代ではいつのまにか不要なものになっていたようです。数年後には、あらゆる場面で押印を求められない、「ハンコレス」社会になっているかもしれません。(提供:YANUSY)
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