経済
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300兆円を突破し急拡大が続く「預貸ギャップ」

(日本銀行「民間金融機関の資産・負債」)

トリグラフ・リサーチ 代表 / 大久保 清和
週刊金融財政事情 2020年11月16日号

 預金から貸出金を差し引いて算定される「預貸ギャップ額」と、預貸ギャップ額の預金に対する割合を示す「預貸ギャップ率」は、銀行の「金融仲介機能発揮度」を評価する上で最も重要な指標である。これら指標の月次動向を業態別に把握する際には、日本銀行の「民間金融機関の資産・負債」統計が有益だ。

 図表1は、2007年8月以降の国内銀行国内店銀行勘定における預貸ギャップ関連2指標の推移を示している。最新統計である8月のギャップ額は312兆円、ギャップ率は36%と共に過去最高を更新した。これらの指標が小さい(低い)ほど、金融仲介機能がより機能していることを意味するので、「過去最悪更新」ともいえる。リーマンショック後、08年12月末までにギャップ額が11.6兆円、ギャップ率が2.3%ポイント低下したのと対照的な動きであり、「経済危機下の預貸ギャップ急拡大」はコロナ禍の大きな特徴だ。

 図表2には、今年3月末から8月末までの両指標の業態別動向を示した。大手銀行は8月にギャップ額・率共に最高値を更新。わが国経済への貢献という点では、国内で調達した預金のうち、45.6%が国内貸出に回っていない事態は極めて深刻である。

 地域銀行の預貸ギャップ率は22.6%と大手銀行の半分以下で相対的に良好であるが、同期間の両指標の悪化度合いは大手行以上だ。ギャップ率は過去最高であった13年6月の27.5%を大幅に下回っているが、8月のギャップ額81.3兆円は、15年6月の過去最高額82.6兆円に迫りつつある。地域銀行の預貸ギャップ関連指標は15年度以降改善傾向が続いていたが、コロナ禍はそれを一変させた。

 国内銀行の国内店銀行勘定の預貸ギャップ額は1999年3月に3.3兆円のプラス(預金超過)となり、それ以来、一度もマイナス(貸出超過)に転じることなく21年以上も拡大を続けてきた。そして今年5月に初めて300兆円を突破し、その拡大ペースは足元で加速している。この300兆円超の預貸ギャップの「生かし方」が今後のわが国経済の浮沈を大きく左右するだろう。

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(提供:きんざいOnlineより)