オンライン診療
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オンライン診療の恒久化に向けて安全性と信頼性を向上させよ

(厚労省「オンライン診療の適切な実施に関する指針の⾒直しに関する検討会」)

大和総研 政策調査部 / 武井 聡子
週刊金融財政事情 2021年2月8日号

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、医療機関でのオンライン診療が時限的・特例的ながら広く解禁されている。厚生労働省は対象疾患の制限を緩和したことに加え、2020年4月に初診からのオンライン診療を認めた。現時点では非常時における措置とされているが、菅義偉内閣は医療分野におけるデジタル改革推進の一環として、これを恒久化する方針だ。

 オンライン診療とは、医師が情報通信機器を利用して診察・診断や処方を行うことである。新型コロナに感染するリスクから医療機関に出向くことを避ける患者が増加しており、その解決策になる。

 オンライン診療には平時のメリットもある。まず、通院の必要がなくなることから、居住地や病状により受診が困難な患者の医療アクセスが向上する。日本におけるオンライン診療は、離島・へき地の居住者向けに開始され、その後対象が広げられたが、高齢化の進展により、在宅医療の増加と併せて需要拡大が見込まれる。ほかにも、専門医がいない地域の住民に対する専門医療の提供や、かかりつけ医によるモニタリングなどにオンライン診療の活用が広がれば、医療の効率化と質の向上につながる可能性がある。

 ただ、現状ではオンライン診療を行う医療機関は多くない(図表)。電話・オンライン診療に対応する医療機関は20年10月末時点で全医療機関の15.0%(1万6,587機関)、そのうち初診について対応する医療機関は6.3%(6,996機関)に限られる。利用件数も、5月の9,746件をピークに伸び悩んでいる。これらの医療機関数や利用件数は電話診療も含む調査結果だ。オンライン診療の件数だけを見ると、4~9月の平均で1カ月当たり1,800件程度にとどまっている。オンライン診療が患者に普及するには一定の時間を要するだろう。医療機関にとっても対面診療と比較して診療報酬が低いため、少なくとも21年6月に予定される恒久化のルール策定までは様子見の姿勢が続くのではないか。

 とはいえ、今後、オンライン診療の重要性がいっそう増すことに疑いはない。課題は安全性の担保だ。医師が得られる情報量が対面診療と比較して少ないため、恒久化の議論では映像付きを原則とし、初診での利用はかかりつけ医に限定する方針が示されている。また、政府は22年夏をメドに、全国の医療機関等で個々の患者の治療や投薬の情報を電子的に確認できる仕組みの運用開始を目指している。オンライン診療の恒久化に際しては、特例期間中の実績の検証を踏まえつつ、医療情報を活用するための新技術を医療の質の向上や信頼性の確保につなげることも不可欠だ。

きんざいOnline
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(提供:きんざいOnlineより)