本記事は、羽田康祐氏の著書『意見をつくる』(フォレスト出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
解釈力を鍛える「5Qフレームワーク」
目の前の事実に対して、「さあ、深く解釈しろ」と言われても、何から考えればいいかわからないのが普通だ。
会議でデータを見せられても、ニュースを聞いても、ただ「へぇ、そうなんだ」と情報が頭を素通りしてしまう。
これはあなたの頭が悪いからではない。脳の「思考回路」が起動していないだけだ。
私たちは普段、省エネのために無意識(システム1)で情報を処理している。そのため、いざ「意識的に考えろ(システム2)」と言われると、思考のフックがかからず、ツルツルと滑って立ち尽くしてしまうのだ。
そこで使ってほしいツールが、私がコンサルタント時代から愛用し、今も企画の現場で使い倒している、思考を強制的に拡張するための「5Qフレームワーク」だ(図表)。
これは、どんな事実(Fact)に対しても、以下の5つの問い(Question)をぶつけるだけで、自動的に解釈の幅が全方位に広がるという強力な思考ツールだ。
センスやひらめきはいらない。ただ、脳内で以下の「5つの方向」に矢印を伸ばすだけでいい。
Q1. 原因(Why?):なぜ、それは起きたのか?(過去への深掘り)
最初の問いは、時間の矢印を「過去」に向けるものだ。
目の前の事実を、何らかの原因によって引き起こされた「結果」としてとらえ直し、その奥にあるトリガー(引き金)を探りにいく。
- 思考の動作
- 表面的な理由でとどまらず、「真の原因」を探しに潜るイメージだ。
- 問いのバリエーション
- なぜ、昨日ではなく「今」起きたのか?(タイミング)
それは偶発的な事故か、それとも必然的な構造変化か?(構造)
表向きの理由ではなく、裏にある本当の動機は何か?(本音)
この問いを投げかけることで、単なる現象の裏にある「メカニズム」が見えてくる。
Q2. 予測(So What?):このままだとどうなるか?(未来への予測)
2つ目の問いは、時間の矢印を「未来」に向けるものだ。
その事実が「ドミノ倒しの1枚目」だとしたら、次に倒れるドミノ牌は何か? その次は? と、連鎖反応をシミュレーションする。コンサルタントが最も頻繁に使う「So What?(だから何?)」の思考だ。
- 思考の動作
- 脳内で「未来で起こることの連鎖」を思い描くイメージだ。
- 問いのバリエーション
- この傾向が1年続いたら、世界はどう変わっている?
この変化によって、一番得をするのは誰か? 損をするのは誰か?
風が吹けば桶屋 が儲かる的な、意外な展開は起きないか?
この問いを投げかけることで、現在の点と未来の点を結ぶ「ストーリー」が見えてくる。
Q3. 他者(Other Perspective):他の人の目にはどう映るか?(視点の転換)
3つ目の問いは、視点のカメラを「自分」から切り離して移動させるものだ。
同じ事実であっても、立っている場所(立場)が変われば、まったく違った景色に見える。
自分という狭い世界から抜け出すための問いだ。
- 思考の動作
- 自分自身の立場から離れ、次々と立場を切り替えるイメージだ。
- 問いのバリエーション
- もし私が「顧客」だったら、これをどう感じるか?(快か不快か)
もし私が「競合他社」だったら、これをチャンスと見るか脅威と見るか?
もし私が「経営者(上司)」だったら、この報告を聞いてどう判断するか?
この問いを投げかけることで、独りよがりな解釈を防ぎ、客観的で立体的な「全体像」が見えてくる。
Q4. 逆説(Reverse):あえて逆から見ると?(批判的思考)
4つ目の問いは、常識や直感をひっくり返す「あまのじゃく」な思考だ。
物事には必ず「光」と「影」がある。ポジティブな事実の中にネガティブを見つけ、ネガティブな事実の中にポジティブを見つける。
- 思考の動作
- あるいは、世間の常識に対して「本当にそうか?」と疑い、あえて逆を考えてみるイメージだ。
- 問いのバリエーション
- 一見ピンチに見えるが、実はチャンスではないか?
みんなが賛成しているが、致命的な死角はないか?
長所だと思われていることが、実は最大の弱点になっていないか?
この問いを投げかけることで、誰でも言えるような浅い正論を脱し、鋭い「洞察」が見えてくる。
Q5. 意味(Impact):自分たちにとってどんな価値があるか?(自分事化)
最後の問いは、拡張させた思考を、再び「自分」の手元に引き寄せるものだ。
どんなに高尚な分析ができても、自分に関係がなければただの評論(他人事)である。「で、自分はどうする?」につなげるためのブリッジとなる問いだ。
- 思考の動作
- 客観的な立場を離れ、「今の自分」に引き寄せて考えるイメージだ。
- 問いのバリエーション
- この事実は、我々のゴールにとって追い風か、向かい風か?
我々だけが活かせる、独自の勝ち筋はどこにある?
これを受けて、明日から何を変えるべきか?
この問いを投げかけることで、解釈は単なる知識から、行動を変えるための「指針」へと変わる。
産業能率大学大学院経営情報学研究科修了(MBA)。日本マーケティング協会マーケティングマスターコース修了。
外資系コンサルティングファームなどを経て現職。「外資系コンサルティングファームで培ったロジック」と「広告代理店で培った発想力」のハイブリッド思考を武器に、メーカー・金融・小売り等、幅広い業種のクライアントを支援。マーケティングやブランディング、ビジネス思考をテーマにしたブログ「Mission Driven Brand」を運営。 ハンドルネームはk_bird。
著書にロングセラー『問題解決力を高める「推論」の技術』『無駄な仕事が全部消える超効率ハック』『インプット・アウトプットが10倍になる読書の方程式』『本質をつかむ』(いずれもフォレスト出版)がある。
k_birdのハンドルネームでブランディング&ビジネスのブログ「Mission Driven Brand」を運営中。
※画像をクリックするとAmazonに飛びます。
