「医師は年収が高い」。ほとんどの人がこのようなイメージを持っていると思うが、実際医師の年収はいくらくらいなのだろうか。この記事では、厚生労働省などが調査したデータなどをもとに、医師の平均年収や勤務医と開業医の差、診療科間の差について解説する。

最新データでは医師の平均年収は1,169万円

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(画像=beeboys/stock.adobe.com)

厚生労働省が毎年実施している「賃金構造基本統計調査」において、職種別の月給と年間賞与額が明らかにされている。この月給と年間賞与額を合計すると、職種別の平均年収を算出できる。同調査の最新版(令和元年)によると、平均年収トップ10は以下のようになる。

<職種別の平均年収トップ10>

順位 職業 平均年収
1位 航空機操縦士 1,694万6,100円
2位 医師 1,169万2,300円
3位 大学教授 1,100万6,200円
4位 大学准教授 872万3,600円
5位 記者 792万2,200円
6位 不動産鑑定士 754万5,900円
7位 弁護士 728万5,600円
8位 高等学校教員 709万3,600円
9位 一級建築士 702万8,800円
10位 公認会計士、税理士 683万5,500円
※出典:賃金構造基本統計調査/「企業規模10人以上」が対象

「医師」の平均年収は1,169万2,300円で、全体では2位。「航空機操縦士」とは500万円以上も差があるが、大学教授のほか、不動産鑑定士や弁護士などの士業よりも平均年収は高い。

ちなみにこの調査では、「歯科医師」や「獣医師」といった分類でも月給や年間賞与額を算出している。参考までに整理しておこう。

職業 平均年収
歯科医師 570万1,000円
獣医師 571万5,600円
薬剤師 561万6,500円
診療放射線
診療エックス線技師
501万9,500円
臨床検査技師 461万2,200円
※出典:賃金構造基本統計調査/「企業規模10人以上」が対象

勤務医と開業医、診療科によって平均年収に差

医師の平均年収は他の職種に比べて高いが、勤務医と開業医は平均年収が大きく異なり、また診療科によってもかなり違いがある。

開業医の平均年収は医師全体の約1.6〜2.0倍

厚生労働省が2019年11月に発表した「第22回医療経済実態調査結果」によれば、一般診療所を開設した医師の院長としての平均年収は、有床診療所で3,466万円、無床診療所で2,745万円となっている。

医師全体の平均年収は1,694万円なので、有床診療所の院長は医師全体の平均の約2.0倍、無床診療所の院長は約1.6倍ということになる。

診療科別の年収 トップは脳神経外科の1,480万円

同じ勤務医でも、診療科によって平均年収は変わる。診療科別の平均年収を見てみよう。

<診療科ごとの平均年収>

順位 診療科 平均年収
1位 脳神経外科 1,480万3,000円
2位 産科・婦人科 1,466万3,000円
3位 外科 1,374万2,000円
4位 麻酔科 1,335万2,000円
5位 整形外科 1,289万9,000円
6位 呼吸器科・消化器科・
循環器科
1,267万2,000円
7位 内科 1,247万4,000円
8位 精神科 1,230万2,000円
9位 小児科 1,220万5,000円
10位 救急科 1,215万3,000円
11位 その他 1,171万5,000円
12位 放射線科 1,103万3,000円
13位 眼科・耳鼻咽喉科・
泌尿器科・皮膚科
1,078万7,000円
※出典:勤務医の就労実態と意識に関する調査(2012年9月公表)

2012年のデータなので、現在の平均年収とは乖離があるかもしれないが、診療科別の医師の平均年収は「脳神経外科」がトップで1,480万3,000円。

次いで「産科・婦人科」が1,466万3,000円、「外科」が1,374万2,000円、「麻酔科」が1,335万2,000円。トップの「脳神経外科」と最下位の「眼科・耳鼻咽喉科・泌尿器科・皮膚科」は、400万円以上の開きがある。

医師は高年収だが、時間外労働時間などを鑑みると…

この記事では、医師が他の職種に比べて平均年収が高く、開業医と勤務医、また診療科ごとに差があることを紹介した。いずれにしても医師の年収は高いといえるが、最近は特に勤務医の労働環境が問題視されるようになった。

多くの勤務医の時間外労働時間は、労働基準法における法定労働時間の週40時間を上回っている。つまり、医師という仕事は激務ということだ。特に救急科や産婦人科などの時間外労働時間は長く、精神的なストレスや身体的な疲れに悩む医師は多いようだ。

特に最近は新型コロナウイルスへの対応で、医師の労働環境が一層厳しさを増している。これに加えて、医師になるためにかかった費用や難易度を考えると、一概に「医師の年収は高い」とはいえないかもしれない。

文・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。

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