旅にでるとき、私はいつも、ちっぽけな子供に戻ってしまう気がするーー江國香織さんの旅をテーマにしたエッセイ集『旅ドロップ』(小学館)にそのような一節がある。我が家では例年4月になるとサマーバケーションに向けて旅行計画を立てるのであるが、新型コロナウイルスの猛威が収まらない状況では今年も断念せざるを得ない。英国からオランダに引っ越して1年あまり、楽しみにしていた「欧州大陸巡り」が実現する見通しはまったく立っていないのが実情だ。せめて、旅行気分を味わえるエッセーを読みたくなって手にとったのが『旅ドロップ』である。タイトルの『旅ドロップ』の意味は定かではないが、恐らく「あめ玉」のことではないかと思う。ほんの小1時間であるが、色とりどりの「あめ玉」を味わうように、旅行気分を堪能することができた。
さて、新型コロナ危機は世界の旅行業界や航空業界に未曾有の打撃を与えたが、その一方でピンチをチャンスに変える可能性を秘めた市場がある。主に富裕層やビジネスエグゼクティブに移動手段を提供する「プライベート・アヴィエーション(Private Aviation)」だ。新型コロナ危機はプライベート・アヴィエーション市場に追い風となっており、一部では2027年までに市場規模が約3兆9361億円に達するとの予測まである。
今回はプライベート・アヴィエーション市場の最新情報をお届けしよう。
エグゼクティブ、富裕層ファミリーの利用が増加
リモートワークが普及しているとはいえ、グローバルに展開するビジネスでは「空の旅」が必要となるシーンもでてくる。コロナ前と比べて旅行者は激減しているものの、それでも「空の旅」は不特定多数の人々との接触が濃厚になりやすく、感染リスクも高くなる。このリスクを軽減する手段として人気化しているのが、プライベートジェットやビジネスジェットなどとも呼ばれる「プライベート・アヴィエーション」だ。