投資を始めるタイミングに正解はありません。たくさん勉強したからといっても、相場の上昇下落を予想するのは難しいことです。そもそも、本業で忙しく、投資の勉強時間が取れないという人も多いでしょう。そんな人に向けて紹介したいのが、タイミングを読まなくても可能な「積立投資」です。「積立投資」とはどんな方法なのでしょう?メリットやリスクも交えながら解説します。
 

目次

  1. 投資を始めるのにタイミングはあるのか?
    1. 活発な取引が行われる金融市場。プロでも相場を読むことは難しい
  2. 積立投資とは?
  3. 投資先」と「時間」を分散するとリスクが軽減される
  4. 中長期の積立投資その1:つみたてNISA
    1. つみたてNISAのメリット
    2. つみたてNISAのデメリット
    3. つみたてNISAで扱える商品の特徴と選ぶ際のチェックポイント
  5. 中長期の積立投資その2:iDeCo
    1. iDeCoのメリット
    2. iDeCoのデメリット
    3. 富裕層の節税に有利なiDeCo
  6. 積立投資のリスクとは?
    1. 積立投資のリスク1:資金が必要なタイミングで暴落する可能性もある
    2. 積立投資のリスク2:積立投資は右肩上がりの相場には弱い
  7. 積立投資のリスクを挽回する方法は?
    1. 原則、値動きは無視して機械的に継続する
    2. 暴落した時に積立投資をやめてしまうとどうなる?
    3. 株価が暴落したときこそ買い?
  8. 投資初心者は、どんな投資信託に投資するべきか
    1. 経済指標に連動する投資信託の積立が始めやすい
    2. リスクを取りたくない人はETFやMRFを
    3. いろいろな投資先に分散したい人はバランス型の投資信託がおすすめ
  9. まずは証券会社に口座を作ってみよう

投資を始めるのにタイミングはあるのか?

資産を増やしたいと思っているもののリスクなどを勘案すると投資になかなか踏み出せない。また、始めるタイミングを探っているうちに時間が過ぎてしまっている人も多いのではないでしょうか。もちろん投資ですから、少なからずリスクを抱えることにもなり、それも投資に踏み出せずにいる不安材料でしょう。

活発な取引が行われる金融市場。プロでも相場を読むことは難しい

金融市場には、取引される商品の満期までが1年以内の短期金融市場、商品の満期が1年を超える長期金融市場があります。短期金融市場のオープン市場では、銀行、証券会社、保険会社、企業、国、地方公共団体などが参加し、金融商品の売買などが行われています。

「相場」とは、金融市場での競争売買によって決まる商品の値段・価格のことです。「相場」を見通し、価格が下がった時期に買い、上がった時期に売ることは投資のプロでも簡単ではありません。株(個別銘柄)の上昇下落も外貨(USD等)の円高、円安も、日経平均など経済指標の動きも、事前に予測するのは、初心者にとってはとてつもなくハードルの高いことといえるでしょう。

では、相場を読めない場合は、投資をしないほうがよいのでしょうか?結論からお伝えすると「否」です。ある投資方法を行えば、必ずしも相場を読めなくても投資ができるのです。その方法とは「積立投資」です。

積立投資とは?

「積立投資」とは投資タイミングを分けて(例えば毎月、毎営業日等)、一定額を投資する、定期定額の投資方法です。

積立投資は「ドル・コスト平均法」の手法を用いた投資といわれています。「ドル・コスト平均法」は、ある金融商品を長期にわたり定期的に一定金額で購入していくことで、基準価額が高いときには購入口数が少なく、低い時には購入口数が多くなり、結果として平均購入価額が割安になることを目指す方法です。

積立投資も月々決まった金額を購入し、長期に渡り運用していくことで、資産形成を目指す資産運用法といえます。積立投資にし、投資信託を一定金額、毎月(または毎営業日)購入すると、基準価額が高いときは少し、下がったときは量を多く買えるため、購入価額を平均化することができます。これにより、相場の変動に一喜一憂する必要はなくなります。短期的な相場を気にせずに投資を続けられる、というわけです。

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投資先」と「時間」を分散するとリスクが軽減される

投資信託にはいろいろ種類があります。投資先も国内株式や海外株式、また海外でも先進国や新興国など、多岐にわたります。毎月(または毎営業日)購入することで「時間の分散」はできますが、「投資先」も1つの商品に絞るのではなく、「投資信託の種類を選ぶ」ことで「分散」すれば、リスクの軽減につながります。

時間と投資先を分散できれば目先の利益にとらわれることはありません。相場は将来も上昇下落を続けるのですから、中長期(最低1年以上)で継続的かつ定期的に、一定額を投資すればよいのです。

中長期の積立投資で代表的なのは、「つみたてNISA」や「iDeCo」でしょう。どちらも「投資で得た利益が非課税」という「税制優遇」のある制度です。日本政府が国民の資産形成を目的に作った制度で、税制優遇に加え、国が認めた安全性の高い商品が多くラインアップされているのが特徴です

では、つみたてNISA、iDeCo。それぞれの概要とメリットをまとめてみましょう。

中長期の積立投資その1:つみたてNISA

つみたてNISAとは、2018年1月から始まった、特に少額からの長期・積立・分散投資を支援するための非課税制度です。開設できる口座は1人1口座で、毎年40万円、20年間で800万円まで投資による利益・分配金が非課税(通常20%の所得税が課される。)です。

つみたてNISAの金融商品は販売手数料が無料(通常は約1%から3%)、信託報酬(運用管理費用)が安いなど、長期・積立・分散投資に向いている公募株式投資信託と上場株式投資信託(ETF)に限定されており、投資初心者をはじめ幅広い年代の方にとって利用しやすい仕組みとなっています。

つみたてNISAのメリット

つみたてNISAの最大のメリットは、上記の通り、毎年40万円(2037年から2042年まで伸びる予定)、20年間で800万円(22062年まで伸びる予定)まで投資による利益・分配金が非課税になることといえます。月100円から積み立てできるネット証券会社もあり、とにかくお手軽に投資を始められます。いつでも年齢制限無く売却でき資金化が可能なことも特徴です。

つみたてNISAのデメリット

つみたてNISAのデメリットは、他に株式や投資信託を売買していて損失がでた場合、つみたてNISAの利益と通算できないことです(損益通算不可)。

また、選べる金融商品は国が認めた比較的安全性の高いものばかりとはいえ、投資信託に限られていることは、自由度の少なさと言い換えることができます。さらに、安全性の高い商品とはいえ、元本割れのリスクがゼロではないという点も不安材料の1つでしょう。

つみたてNISAで扱える商品の特徴と選ぶ際のチェックポイント

つみたてNISAの商品はすべて投資信託ですので、元本保証の商品はありません。投資信託を選ぶときには、投資先がどこか、信託報酬(運用管理費用)が安いか、販売する金融機関はどこか、純資産高はどのくらいか?など、購入前にしっかりチェックする必要があります

特に投資先と、信託報酬(運用管理費用)が大事です。投資先は日本株、世界株、先進国株式、新興国株式、日本債券、日経平均、TOPIXなどさまざまです。また、投資先が同じでも証券会社によって信託報酬(運用管理費用)が異なることもあります。各証券会社や金融庁のHPなどで比較してみましょう。

中長期の積立投資その2:iDeCo

iDeCoは公的年金制度を補完するために個人が任意で老後のための資金を積み立てられるように税負担を軽くする制度です。掛け金(積立金額)を所得から差し引くことができるので、より節税効果が高い制度なのです。1人1口座しか開設できず月5,000円から掛けられます。投資による利益・分配金や預金利子にかかる税金も非課税です。

iDeCoのメリット

iDeCoの一番のメリットは、掛け金(積立金額)を所得から差し引くことができ、節税効果が高いことです。特に扶養家族が少ない人、所得が高い人は所得税率も高くなりがちなので、掛け金を多くかけていると節税につながり有利です。定期預金、保険など元本確保の商品が選べることもメリットです。

iDeCoのデメリット

iDeCoは、原則60歳まで掛け金(積立金額)を引き出すことができません。また、ほかに株式や投資信託を売買して損失がでたときに、iDeCoの利益と通算できないことです(損益通算不可)。

また、口座開設手数料、口座管理手数料(毎月)、受け取り手数料(給付金受け取る度)など金融機関に支払う手数料が多いことです。金額変更などの手続きも書面で必要と、つみたてNISAと比べると手軽ではありません。

富裕層の節税に有利なiDeCo

iDeCoは、「金融機関に手数料を支払う」「元本確保の商品」があり、「掛け金を全額所得控除」できることから、所得が高い人により有利な制度です。たとえば、口座開設に2,500円、口座管理に毎月200円、給付金を受け取るのに毎回400円手数料がかかったとします。

年収2,500万円で税率40%の人が、月5万円(年60万円)、利率の低い定期預金でiDeCoに加入すると年額24万円所得税が節税になります。年収200万円で税率5%の人が月1万円(年12万円)かけても節税年額は6,000円です。

積立投資のリスクとは?

メリットの多い投資信託の積立投資ですが、もちろん万全ではありません。株式等に比べると乱高下することは多くありませんが、金融商品であることに違いはありません。つまり、場合によっては元本割れなど損をするリスクもあることを知っておきましょう。

積立投資のリスク1:資金が必要なタイミングで暴落する可能性もある

定年も迎え、コツコツ貯めてきたからそろそろiDeCoを資金化しよう、と思ったら、資金化の直前で世界的な大不況が発生し、世界経済が大暴落するなどの可能性もゼロではありません。そこが投資信託のリスクです。

積立投資のリスク2:積立投資は右肩上がりの相場には弱い

積立している投資信託が値上がりし続けるのは、とてもうれしいことですが、積立投資だと気持ち的にやや複雑です。右肩上がりの投資信託を保有している場合、「もっと前に(もっと安い時に)たくさん購入すればよかった」と感じることがあるかもしれません

実際、毎月1万円で去年10月より基準価額1万円の投資信託を積立投資していて、今年10月には基準価額が2万円に上がっていたら(毎月1,000円値上がりした)、平均購入価格は約1万7,000円になります。平均購入価額が高いほど利益が少なくなります。

積立投資のリスクを挽回する方法は?

たとえば、60歳直前にiDeCoで購入していた資産が暴落したとします。その時点で、毎月購入している投資信託の値が右肩上がりであったために平均購入価額が上がった場合、どう挽回していくか考えていきましょう。

原則、値動きは無視して機械的に継続する

投資信託の基準価額は上昇したり下降したり変動します。そのため、積立投資の場合は、大暴落しても気にせず毎月一定額の投資を続けると、平均購入単価が下がり、将来的には利益につながる可能性も高いのです。先述した「ドル・コスト平均法」の特性が発揮されるパターンといえるでしょう。

iDeCoなら60歳直前のタイミングで持っている投資信託が大暴落しても、70歳までは資金化しないでとっておくことができ、積立を続けることもできます。つみたてNISAも売買時期に制限がないので大暴落しても買い続ける方が得策でしょう。

また値上がりした場合、iDeCoもつみたてNISAもそのタイミングで一部を残して一部を売ってしまうのもいいでしょう。ただし、iDeCoは利益を確定したい場合「商品の入れ替え」となるので、他の金融商品を選ばなければなりません。

暴落した時に積立投資をやめてしまうとどうなる?

積立している投資信託が大暴落すると不安になり売ってしまう人もいますが、これは資産を大きく減らす行為といえます。投資信託は長期運用が基本ですから、短期的な値下がりなどに左右されないことが肝要です。

株価が暴落したときこそ買い?

たとえば、今まで平均購入価額が1万5,000円だった投資信託が、1万円に下がったとします。このときに積立をやめ、今まで持っていたiDeCoまたはつみたてNISA等を売ってしまうのは大損につながりかねません。積立を続ければ安い購入価額で投資信託を購入でき、平均購入単価を下げることができるのです。逆に積立金額を増やしてみることも検討したほうが利益を上げられるでしょう。

日経平均の推移見ると、バブル経済で1989年8月に3万8,952円に最高値を付けた後1万5,000円ほどに下がり、ITバブルで2万円から2万3,000円を推移、テロとイラク戦争(2003年3月)で約7,600円まで下がり、それが2007年7月頃には落ち着き約1万8,000円まで戻り、2009年3月リーマンショックで7,162円(最低値)まで下がりました。その後2013年1月に1万円に戻り、少しずつあがっていき、2015年には2万円を超え、コロナで1万8,000円まで下がりましたが、現在(2020年9月)はまた2万3,000円超えまで戻しています。

このような日経平均の推移をみても、上昇下落があるのが金融市場なのです。特にリーマンショック後は相場を始める絶好のチャンスだったと言えます。

投資初心者は、どんな投資信託に投資するべきか

リーマンショック後、株価の戻り方を見て不況時は意外とチャンスではないか、と思った人もいらっしゃるでしょう。では、初心者は何に投資するのがいいのでしょう?

経済指標に連動する投資信託の積立が始めやすい

経済指標とは、「経済に関連する統計」です。日本では財務省、経済産業省、 内閣府、日本銀行などが発表しています。代表的で特に投資信託に使われやすいのは、日経平均、TOPIXなどの株価指数です。アメリカならNYダウやS&P500などの先進国株式指標、MCIFなど世界株式指標があります。

初心者なら日経平均かTOPIXに連動する株価指数連動型投資信託だと、過去の数字がわかりやすく容易に調べることができるでしょう。

リスクを取りたくない人はETFやMRFを

リスクを取りたくない人はETF(上場投資信託)を購入するかMRF(証券総合口座用ファンド)に資金を置いておくといいでしょう。

iDeCoの品ぞろえにはないのですが、つみたてNISAではETFを積立投資できる証券会社もあります。ETFとは、証券取引所に上場し、株価指数(日経平均、TOPIX)など経済指標への連動を目指す投資信託のことです。投資信託は上場していないので、そこがETFとの違いです。

MRFに資金をおいておくと、金利(0.001%から0.005%)つくのもメリットです。MRFは証券総合口座用ファンドで、証券会社での株や債券、投資信託の購入・売却代金等の受け取りに利用されています。運用対象が格付け・残存期間などで厳しく制限されていて、高格付けの公社債、CD、CP等短期金融商品で運用され、株式は一切組み入れられず、流動性と安全性が確保されています。

いろいろな投資先に分散したい人はバランス型の投資信託がおすすめ

積極的に運用する投資信託を選びたいけど、投資先がかたよると不安、いろいろな投資先に分散投資したいという人もいるでしょう。手っ取り早いのは、バランス型の投資信託を選ぶことです。1つの投資信託で国内外債券、国内外株式、国内外不動産など幅広く投資しているものもあります。資産配分をプロの投資家が考慮してリスク管理・資金管理を行っているので、大きく資産を減らす可能性は低いでしょう。

まずは証券会社に口座を作ってみよう

思い立ったが吉日です。まずは証券会社に口座を開設してみましょう。証券会社は情報の宝庫です。口座を開設したら、商品を購入する前に情報を得ることから始めてみましょう。口座を登録すると日経新聞や会社四季報が無料で読める証券会社もあります。投資家向けのオンラインセミナーを無料でやっているところも多くあります。

最初はMRFに入れておくと少し利子(証券会社により0.01から0.05%)が付くのでおすすめです。一方、初心者がいきなりハイリスクな商品(信用取引、FXなど)を購入するのは危険といえます。リスクの低い(値幅のブレが小さい)投資信託や、つみたてNISAなどからはじめてみるのが無難ではないでしょうか。

また、つみたてNISAやiDeCoの品ぞろえがたくさんある証券会社のほうが後々便利に使えるでしょう。現在、特にネット証券会社でキャンペーンが多く行われています。証券口座を開設することで、現金やギフトカード、ポイントがもらえたり、手数料が安くなったりするので、お得感があります。キャンペーン中に証券会社に口座を開設するのも、投資スタートのタイミングのうちの1つといえるでしょう。

拝野洋子
国内外の金融機関で、金融マーケットに直接携わる仕事を長く経験。現在は資産運用のコンサルタントを行いながら、主に金融に関する情報発信も行っている。日本証券アナリスト協会認定アナリスト、FP一級技能士、宅地建物取引士資格試験合格、食生活アドバイザー2級。