家庭用ゲーム機の代名詞ともいえる「ファミリーコンピュータ」をはじめ、マリオシリーズなどの人気ゲームを次々と世に送り出してきた任天堂。ゲーム業界をけん引し続ける任天堂の平均年収は、いくらくらいなのか。1,000万円を超えているのか。
ゲーム企業の平均年収ランキングは?
ゲーム業界では、この10年間でモバイルゲーム市場が家庭用ゲーム市場を抜くなど、取り巻く環境が一変している。かつて名を馳せた家庭用ゲームメーカーも、モバイルゲーム市場への参入なくしては事業が成り立たないほどだ。
始めに、ゲーム業界の平均年収ランキングを見てみよう。ランキングは、各社が会計年度ごとに公表している「有価証券報告書」を参照して作成した。
<ゲーム業界の平均年間給与ランキング>
順位 | 企業名 | 平均年収 | 時期 |
1位 | スクウェア・エニックスHD | 1,487万5,510円 | 2020年3月31日 |
2位 | ソニー | 1,057万1,348円 | 2020年3月31日 |
3位 | バンダイナムコHD | 1,053万6,000円 | 2020年3月31日 |
4位 | 任天堂 | 935万0,972円 | 2020年3月31日 |
5位 | CARTA HOLDINGS | 900万0,000円 | 2020年12月31日 |
6位 | タカラトミー | 871万5,054円 | 2020年3月31日 |
7位 | セガサミーHD | 834万7,487円 | 2020年3月31日 |
8位 | コナミHD | 807万9,998円 | 2020年3月31日 |
9位 | ディー・エヌ・エー | 790万5,000円 | 2020年3月31日 |
10位 | LINE | 770万8,760円 | 2020年12月31日 |
1位:スクウェア・エニックス・ホールディングス 1,487万5,510円
ドラゴンクエストやファイナルファンタジーシリーズなどを抱えるスクウェア・エニックスHD(ホールディングス)が1位に輝いた。従業員数は20人、平均年齢は47.6歳、平均勤続年数は5.7年で、グループ全体の従業員数は5,077人だ。
2位:ソニー 1,057万1,348円
2020年に「プレイステーション5」を発売したソニーが、2位にランクイン。従業員数は2,682人、平均年齢は42.4歳、平均勤続年数は16.6年。
3位:バンダイナムコホールディングス 1,053万6,000円
3位には、エンターテインメントやアミューズメント分野で幅広く事業を展開しているバンダイナムコHDがランクインした。従業員数は24人、平均年齢は45.4歳、平均勤続年数は16.5年。グループ全体の従業員数は9,052人だ。
1位のスクエニと3位のバンダイナムコの数字は、どちらもホールディングスのものだ。2位のソニー、4位の任天堂はハードウェア・ソフトウェアの両方を開発している企業であり、家庭用ゲーム市場をけん引する企業としての底力を感じる。
なお任天堂は4位で、従業員数は2,395人(連結ベースでは6,200人)、平均年齢は39.2歳、平均勤続年数は13.9年である。
任天堂の平均年収の推移は?
次に、任天堂の過去10年間の平均年収と経常利益の推移を見てみよう。2012年3月期に上場以来初となる連結赤字を計上し、その後平均年収は800万円台に下がったが、業績は上向いており、2017年3月期以降は再び900万円台で推移している。
<任天堂の平均年収と営業利益の推移>
会計年度 | 平均年収 | 経常利益 |
2020年3月期 | 935万0,972円 | 3,604億6,100万円 |
2019年3月期 | 912万6,281円 | 2,773億5,500万円 |
2018年3月期 | 903万3,017円 | 1,993億5,600万円 |
2017年3月期 | 928万2,873円 | 503億6,400万円 |
2016年3月期 | 891万2,586円 | 287億9,000万円 |
2015年3月期 | 839万7,050円 | 705億3,000万円 |
2014年3月期 | 868万5,498円 | 60億8,600万円 |
2013年3月期 | 868万1,378円 | 104億8,200万円 |
2012年3月期 | 905万3,480円 | △608億6,300万円 |
2011年3月期 | 914万5,791円 | 1,281億0,100万円 |
任天堂の最近の業績は?
2020年3月期は、「Nintendo Switch」の好調に加えて9月に「Nintendo Switch Lite」を発売したことで、ハードウェアの販売台数は大きく増加したようだ。
ソフトウェアは「ポケットモンスター ソード・シールド」が1,737万本、「あつまれ どうぶつの森」が1,177万本と大ヒットしただけでなく、前期までに発売したソフトも好調に販売数を伸ばし、当期のミリオンセラーソフトは27本となった。
新型コロナウイルス感染症の影響により、2月から3月にかけて本体や周辺機器などの生産・出荷が一部の地域で遅延したが、業績への影響は限定的だった。
結果的にハードウェア、ソフトウェアともに前年を上回り、当期のハードウェアの販売台数は前期比24.0%増の2,103万台、ソフトウェアの販売本数は同42.3%増の1億6,872万本となった。
ゲーム専用機におけるデジタルビジネスでは、ダウンロード専用ソフトや追加コンテンツによる売上が順調に伸び、売上高は同71.8%増の2,041億円となった。
モバイルビジネスも配信アプリが好調で、モバイル・IP関連収入などの売上高は同11.5%増の512億円となった。
新しいハードウェア・ソフトウェアそのものの人気に加え、巣ごもり需要が業績を押し上げた印象だ。
2020年12月には、中国でIT大手のテンセントを通じて「Nintendo Switch」の販売を開始しており、今後は中国での動向にも視線が集まりそうだ。
波に乗る任天堂 2021年度も増収増益なるか
「ハード・ソフト一体型の娯楽体験」というDNAをしっかり受け継ぎつつも、モバイル展開やテーマパーク展開などによって幅広い世代と接点を広げている任天堂。
2021年3月期第3四半期(2020年4~12月)決算では、売上高が前年同期比37.3%増、営業利益が同98.2%増となるなど絶好調で、2022年3月期(2021年度)も業績を伸ばす可能性がある。任天堂が「年収1,000万円企業」になる日も近い!?
文・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。
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