ZUU <4387> は2021年5月14日、2021年3月期通期決算を発表した。本記事では、同日発表された「2021年3月期通期 決算説明資料」をスライドとともに解説する。
「世界に、熱を。人に、可能性を。」ZUUは全世界90億人が“それぞれの人生の経営者”として、自らの人生を経営するためのあらゆる情報を提供し、個の時代の実現を目指している。
個人・法人向けにB/Sを支援するさまざまなサービスを展開。メディア・プラットフォームで集めたユーザーに対し、ソリューションを提供することでARPU、ARPAの向上を図る。
資金難・人材不足に悩むスタートアップおよび中小企業・中堅企業向けに、当社の『PDCA Engineering』や資金調達のネットワークを活用した『ZUU Financial Network』を提供開始予定。 『PDCA Engineering』だけではなく、資金調達、事業成長、IPOからM&Aなど、会社成長を一気通貫で支援する。
●連結売上高は前年同期比+51.0%の約27.8億円。営業利益は前年同期比+113.4%の約14百万円。売上高、営業利益ともに通期業績見通しを達成した。
●4Q単体では売上高は前年同期比+30.8%の約9.3億円、営業利益は前年同期比+605.8%の約1.5億円。四半期として過去最高の売上高および営業利益を達成した。
ZUU単体では約2.49億円と大きく黒字化。期初からの投資が奏功し、四半期過去最高益を達成。一方、子会社2社を中心とするクラウド・ファンディング子会社では新規案件獲得に苦戦し、当初計画よりも業績を下回り着地した。
4Q単体での売上高は、新型コロナウイルスの影響による投資需要拡大での送客事業の特需があった前年同期比でも+30.8%と大きく成長した。
期初からの成長投資により赤字先行するも、2Qから黒字に転換し、以降黒字を拡大。4Q単体で売上総利益が約709百万円(前年同期比+27.8%)、営業利益が約153百万円(前年同期比+605.8%)と過去最高水準を記録した。
FY21/4Q単体のEBITDAは約172百万円、 成長投資を除くEBITDAは約225百万円と前期から大きく改善した。
IT人材採用(採用費+業務委託費)、金融システム開発関連への成長投資額は、 FY21通期で187百万円で着地(期初想定の93.5%)。グループ全体のIT人材採用は順調に進み見込み計画を上回る投資を行ったことで、金融システム関連への投資が期初想定の約46.6%で着地となった。
金融系、IT系の人材を中心に通年での採用活動を強化。即戦力重視により短期的には業務委託採用を優先したことで正社員数の伸びは逓増も、スカウト、リファラル、採用イベント等の採用施策強化により今期は改善傾向となった。
採用活動の遅れにより採用教育費は想定を下回るも、正社員の採用活動と同時並行での業務委託人員の増加、来期に向けたリード獲得のための広告宣伝等の顧客獲得費への投資等により、販売管理費はQoQで約97百万円増加した。
コロナ禍での投資需要拡大による広告特需があった前年同期比でも売上高+30.8%と四半期単体で大きく成長。営業利益も大幅に改善し、4Q単体の前年同期比+605.8%、通期での前年同期比+113.4%と通期黒字化となった。
売上高の成長に伴いグループ全体の営業キャッシュ・フローは順調に拡大。FY2021のフリー・キャッシュフローは2.31億円とFY2020の△6.48億円から大幅に増加した。
クラウドファンディング事業の特別損失を計上。PMIは進み、当初よりも赤字幅が縮まりつつあるが当初想定した業績を下回ったことから、今期の計画を慎重に見直し。のれん及び固定資産につき、全額減損損失を計上している。
貸借対照表の状況(連結)。今後の事業規模拡大を見据え、2020年9月に発行した新株予約権の第8回行使完了に伴い、財務基盤は大きく強化。減損後も財務面は安定し、自己資本比率63.9%、流動比率293.1%と高い財務健全性を維持している。
IRの活動状況。第3四半期決算発表後の機関投資家との面談数はQoQで倍以上の37件に増加となった。機関投資家との面談に加え、スモールミーティング、個人投資家も含めた四半期ごとのオンライン決算説明会の実施と、投資家とのコミュニケーション機会が順調に増加している。
資金調達によりM&A/資本提携を重要な成長ドライバーに位置付け。フィンテック領域やSMB領域での当社の豊富な顧客基盤やメディアのユーザー基盤を活用し、ZUUグループ全体として新たな事業シナジー創出を推進している。
直近では金融工学・AI・機械学習などに強みを持つフィンテック企業であるMILIZE社との資本業務提携を締結。両社での富裕層向けフィンテックサービスの共同開発、金融機関を中心に両社サービスの提供拡大を見込んでいる。
既存金融機関の機能は個人向けと法人向けに大別。個人資産が間接的に、また直接的に法人へ還流し、利回りや値上がり収益として個人に還元される。
リテール・バンキング領域はZUUでは「リテール・フィンテック」として再創造した。『ZUU online』や『NET MONEY』が囲う金融に関心の高い月間1000万人以上のユーザー基盤に対し、資産コンサルティングや信用スコアビジネスを展開。
コーポレート・バンキング領域は「コーポレート・フィンテック」として再創造している。経営者向けメディア『THE OWNER』会員である経営者を中心に、戦略コンサルティング等の事業支援やクラウドファンディングを活用した資金調達支援を提供する。事業・ファイナンス面を包括的に支援する。
フィンテック企業の台頭から金融関連法の規制緩和や変更が相次ぎ、新型コロナの感染拡大によって本格化。金融ビッグバン以来の変革期へ突入した。
ウィズコロナ、アフターコロナにおいて金融機関の持つ機能は細分化され、フィンテックサービスによる代替が加速した。さまざまな分野でテクノロジーによるサービスのオンライン化・効率化が進んでいる。
金融業界のリバンドル・アンバンドルも加速。異業種からの参入や大規模プラットフォーマーの金融分野への進出が増加し、従来は金融サービスを提供していなかったプレーヤーもスーパーアプリなどのプラットフォームの顧客接点を軸に大きなシェアを獲得している。
金融機関は近年の超低金利政策により収益率が低下。店舗の維持費や人件費などが重くコストが上昇する一方、フィンテック企業等の新規競合参入の影響で提供サービスの領域は拡大。人員削減ができない構造上の課題も。顧客の求めるサービスレベルも高まっており、サービスの幅と質の向上が求められる。
複数の外部要因により金融機関は個人、法人の両面でビジネスモデルの進化を迫られている状況。
現在の当社事業領域である金融の広告関連市場では豊富なノウハウと実績を有する。今後、さらに拡大する金融関連の手数料市場にも直接進出を予定。
信用スコア事業への参入を検討開始。『ZUU online』で抱える富裕層をターゲットにウェルス・スコアを開発。スコアに応じて商品や資産運用アドバイスを行い、同様の仕組みを他社にも提供。
高度な金融知識とデータ・マーケティングを必要とする信用スコア・ビジネスで、国内トップクラスのノウハウを持つ人材として、元みずほ銀行執行役員であり、国内信用スコア・サービスの先駆けである株式会社J.Scoreの代表取締役を務めた大森が20年9月よりZUUに参画し、CEO office スコアビジネス準備室 室長に就任した。
日本の富裕層の多くが経営者だが、事業資本を含む資産全体の相談相手についてはサービスが不足。欧米で盛んなファミリーオフィス型のプライベートなアドバイザー組織の組成を開始した。 『ZUU online』運営で培った金融専門家との豊富なネットワークを生かし、ファミリーオフィス事業への進出と独自ポジションを確立。今後は資産データや管理情報をアドバイザーとつなぐプラットフォームを構築予定となっている。
現在の金融業界の縦割り法制で非効率的なサービス提供の改善を目的として、ワンストップで銀行・証券・保険のすべてのサービスを提供可能な「金融サービス仲介業」が創設予定。 金融サービスに関心の高いユーザーを多数保有し、国内有数規模の送客実績を誇る『ZUU online』や『NET MONEY』にて、金融サービス仲介業の参入で提案商品の幅を広げ、ARPUの向上とユーザー増加を見込む。
スタートアップや中小企業には証券化スキームによる新たな資金調達手段、投資家には金融商品の多様化と流動性の向上としてSTOへの参入も検討。すでに2種類のクラウドファン・ディングサービスでプライマリー・マーケットを押さえているため、 STOによるセカンダリー・マーケットの創出により新たな金融市場創造を狙っている。
ZUUでは金融機関、IT企業出身者を中心に戦略実行の体制を構築。メディア・スコア等を中心とするフィンテックサービスの構築、そして、金融再創造に向けた金融・IT・編集・営業の体制を引き続き強化していく。
2022年3月期はさらに積極的な投資実行による前期を上回る高成長を目指す。新規サービス開発、マーケティングへの積極的な投資をしていくため、多数の変動要因を考慮し、通期業績はレンジで予想。売上高はYoYで50.5%〜61.3%増の4,200百万円〜4,500百万円、営業利益は△100%〜1,289%増の0百万円〜200百万円の見込んでいる
さらなる売上高の高成長を重要視し、期初から人材・マーケティングを中心に積極的に投資を実施。1Qから3Qまでの営業利益は赤字見込みだが、FY2021同様、期初からの投資を通期で回収する想定で最終着地は黒字化としている。
2022年3月期は改めて当社のコア・バリューである「ファイナンス」を軸としたサービスドメインに変更し、既存事業を再編。個人、法人、各領域での“金融再創造”に向けた取り組みによる継続した高成長を目指すとしている。
ZUUのビジョンを実現する事業や取り組みを行うことで、ESGを重視した企業経営を行い、ステークホルダーを含めたよりサステナブルな環境・社会の実現を目指している。
事業においては『ZUU online』や『NET MONEY』を通じ、金融リテラシー向上のための情報を提供。また、株式投資型クラウド・ファンディングの売上の一部を「新型コロナウイルス緊急支援基金」に寄付などを表明した。
近年、日本の労働人口の7割を占める中小企業の生産性向上が国としても課題に。当社ではスポーツクラブネットワークを通じ中小企業の生産性の向上と地方創生を支援する。
人事・組織においても自由な働き方が選択できる人事制度の創設や従業員への能力開発やインナー・コミュニケーションの機会の提供などの施策を実施。従業員がより働きやすく、自身の能力を伸ばせる環境構築を図っている。
リテール・フィンテック
V字回復した送客売上が引き続き大きく伸長。売上高は、コロナ特需があった前年同期比+50.7%とさらに上回る高成長を達成した。
新たに富裕層向けファミリーオフィス型個人資産アドバイザリーサービス『プライベート・ウェルス・メンバーズ』β版を提供開始。β版登録ユーザーの総資産が1000億円を突破した。
NTTドコモの金融ポータルサイト『dメニューマネー』の運営支援を開始した。
コーポレート・フィンテック
経営者向けメディア『THE OWNER』が260万PV、会員数10,000名を突破した。
2021年3月、『THE OWNER』が3,000名以上の参加者を集めた大規模オンライン・カンファレンスを開催した。
融資型クラウドファンディング『COOL』で初のクーポン付き案件を公開した。
『ZUU online』を中心とするメディアプラットフォームの訪問数、総会員数は順調に伸長している。 月間訪問数は1200万規模に成長した後はやや成長が鈍化するも新規メディアの構築等で更に成長を図っている。
『ZUU online』『NET MONEY』を中心とする送客事業が急成長した。2020年12月のGoogleコアアルゴルズムアップデートの影響を一時的に受けるもV字回復し、成長軌道となっている。
国内の富裕層の多くが経営者だが、経営者の「事業資本」を含む資産全体の相談相手は不足している状況。『ZUU online』をはじめとするメディアプラットフォームのユーザー基盤、金融機関出身者が数多く在籍する当社の豊富な金融知識と経験を生かして、富裕層特化型のウェルス・マネジメント事業へ進出している。
資産1億円以上の富裕層会員(PWM)向けに、資産形成アドバイス「プライベート・ウェルス・コンサルティング」を提供。PWMの総資産が1,000億円を突破している。
『ZUU online』を支えるCMSをSaaSとしてエンタープライズ中心に提供。『ZUU onilne』とのSSO連携による相互送客可能なメディアプラットフォームとして、メディア構築からコンテンツ・マーケティングを支援している。
『THE OWNER』が参加者3,000名以上の大規模カンファレンスを開催した。 月間250万PVを突破し、順調にトラフィックを拡大している経営者向けメディア『THE OWNER』が主催し、経営者向けの大規模オンライン・カンファレンスを2021年3月に開催。経営者が直面する課題について、著名経営者の方々の考えや経験を話していただき、経営者会員に向けて有用なコンテンツを提供した。
メディアプラットフォームのユーザー基盤を始め、アライアンスや勉強会など、様々なリード獲得のネットワークを構築している。安定したリード獲得からのフェーズ・ニーズに応じた法人向けソリューションを提供している。
当社のPDCAノウハウ※を活用した組織マネジメントSaaSサービス『PDCA Cloud』およびPDCAノウハウによるコンサルティングサービス『PDCA Engineering』をSMB中心に提供している。
当社のPDCA理論をベースとしたコンサルティングサービスを通じて顧客企業の経営・事業の目標達成を支援。経営者のパートナーとして事業支援を推進している。
当社の鬼速PDCAメソッド『PDCA Engineering』を導入いただいた経営者の方からは、具体的な成果とともに評価いただく。提供先企業は特に偏りなく幅広い業種が多く、戦略的アライアンス・パートナーであるスポーツクラブの経営者の方等からも支持を得ている。琉球アスティーダスポーツクラブ様は支援後にTOKYO PRO Marketに上場を果たしている。
3Qまでに運用していた案件は、2021年1月末時点で無事に投資家に償還した。 FY21/4Q単体では合計2案件・募集総額41百万円を調達。日本保証との業務提携後初の保証付き案件は、募集開始後約1分で上限に達する人気となった。
FY21/4Q単体で調達額167百万円・合計6案件と調達額・案件数ともに大きく伸長した。2021年3月には単月5件中4件の案件が成立。AI、SaaS等のテクノロジー企業案件は目標募集額の200%以上の申し込みを集める人気となった。
通期ドメイン別売上高は、フィンテックサービスが前年同期比+62.3%と高成長となった。セールステックサービスも前年同期比+39.5%と順調に売上が伸長した。
Googleコアアルゴリズムアップデートの影響から送客売上がV字回復し、フィンテックサービスは前年同期比+50.7%とさらに成長軌道に入っている。セールステックサービスは前年同期比+8.9%とやや緩やかな伸びで着地となった。
2021年3月期通期決算説明会をオンライン開催予定。参加希望者は事前登録へ。
株式会社ZUU 決算説明会事前登録について
https://zuu.co.jp/news/detail/id=2586