5月11日、鉄鋼業界最大手の日本製鉄 <5401> の株価が一時2354.5円まで買われ、年初来の高値を更新した。後段で述べる通り、日本製鉄は2020年3月期に過去最大の赤字を計上、新型コロナ危機の影響も相まって、2020年4月23日には798.1円の安値を記録した。しかし、その後の日本製鉄の業績は急速に回復、株価もこの1年で約3倍に上昇している。

今回は日本製鉄の最新情報をお届けしよう。

「過去最大の赤字」から復活? 事業利益は2期ぶりの黒字転換

日本製鉄,株価
(画像=まちゃー / pixta, ZUU online)

2008年9月のリーマン・ショック以降、日本の鉄鋼業界は「中国の粗鋼生産能力拡大による鉄鋼価格の下落」という構造的問題等を背景に苦しい経営を余儀なくされていた。そうした中、2012年には当時業界1位の新日本製鐵と同3位の住友金属工業が合併して新日鐵住金となり、さらに2019年4月1日に現在の日本製鉄に商号変更している。日本製鉄という社名は1950年に解体した「日本製鐵」以来69年ぶりの復活だった。

しかし、それでも収益悪化に歯止めをかけることができず、2020年3月期は粗鋼生産の減少、鋼材価格の低迷、原材料高によるマージン低下に加え、期中に発生した災害の影響(君津製鉄所の落雷、 呉製鉄所の火災、君津製鉄所の台風被害)などの減損が約4000億円発生したことで最終利益は4235億円の赤字と「過去最大の赤字」となった。さらに、今年5月7日に発表した2021年3月期決算は、売上が18.4%減の4兆8292億円と2期連続の減収、最終利益も324億円の赤字と「2期連続の赤字」を計上している。ただし、日本製鉄が重視している持続的な事業活動の成果を示す事業利益(2021年3月期)は1100億円(前期は2844億円の赤字)と2期ぶりに黒字転換している。事業利益は上期が1065億円の赤字だったのに対し、下期は2165億円の黒字と急回復を示した。

今期の事業利益は4.1倍へ? 株価は年初来高値