コロナ禍で高騰する建設資材価格、需給の逼迫も
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コロナ禍で高騰する建設資材価格、需給の逼迫も

(経済調査会「建設資材価格指数」)

データサイエンティスト 博士(経済学) / 久永 忠
週刊金融財政事情 2021年5月18日号

 2020年に開催予定だった東京五輪・パラリンピック(五輪)は、コロナ禍によって今年7月に延期となった。今回の五輪は、11年に発生した東日本大震災からの復興を掲げ、13年に開催が決定している。そうしたなか、建設業界においては、復興需要に五輪需要が加わって、建設資材価格が高騰し、高止まりの状況が継続してきた。

 建設資材の価格動向は、経済調査会が発表する「建設資材価格指数」から把握できる。同指数は、セメントや鋼材など建築系25品目、土木系24品目から計算される価格指数(15年度の平均価格=100)であり、毎月発表されている。

 新型コロナが蔓延する以前の19年には、全国では110前後で推移しており、東京においては全国よりやや低い水準で推移していた。他方、同年8月には近畿地方を直撃した台風10号による被害の影響で、大阪の建設資材価格が大きく上昇している。

 では、新型コロナは建設資材の価格にどのような影響を及ぼしているのか。最初の患者が発生した20年1月から1回目の緊急事態宣言(同年4~5月)の時期において、東京における指数は徐々に低下している。この傾向は、建設資材価格が高止まりしていた大阪においても同様で、8月(東京104.7、大阪120.6)まで低下を続けた。価格指数の低下は、建設資材の供給が一定だとすれば、需要の減少を意味するため、新型コロナの影響で工事が停滞したことが背景にある可能性がある。

 しかし、9月から現在に至るまで、価格指数は一転して上昇している。特に、昨年12月から今年2月にかけて、東京では105.8から111.9へ、大阪では122.1から127.2へと高まっている。現在の水準は、19年の通年平均より高い。楽観的には建設需要が高まりつつあるとも考えられる一方で、資材供給が減少している可能性もある。実際、新型コロナの感染拡大を受けて、資材を供給する工場の稼働率が下がっている会社もある。

 新型コロナの経済的影響は、小売業・飲食業・サービス業などで目立っているが、今後訪れるであろう景気回復局面においては、建設資材の需給関係が逼迫し、ボトルネックになる可能性もある。部品・原材料など供給側にも注視が必要だ。

きんざいOnline
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(提供:きんざいOnlineより)