東証は2022年4月に大規模な市場改革を実施する予定だ。現在の1部や2部、ジャスダックやマザーズといった4市場を最上位の「プライム」を主力とする3市場に再編する。上場企業に投資価値の向上を迫り、国境を越えて動き回る投資マネーの流入を促すのが狙いだ。1961年の2部市場創設以来、上場しやすさ重視で進んできた東証の基本方針が転換するだけに、企業も株式市場も大きく変わっていくことになる。

東証1部に比べて条件が
格段に厳しい最上位のプライム市場

東証再編カウントダウン。マーケットで何が起こる?
(画像=kpw / PIXTA、ZUU online)

東証は戦後の1949年に取引を再開。1961年に1部より上場基準が緩い2部市場が発足し、1999年にベンチャー企業向けのマザーズ市場を新設。2013年に大阪証券取引所(大証・現在の大阪取引所)が運営していたジャスダック市場を統合して現在の4市場体制ができ上がった。

2022年4月からは最上位のプライム市場と中堅企業向けのスタンダード市場、新興企業向けのグロース市場の3市場体制になる。

現在、1部市場の条件は時価総額250億円以上など。一方、プライム市場は「東京株式市場の優良銘柄」との位置づけから、上場条件が厳しくなる。創業者や親会社など固定株主の保有分を引いた流通株式が総発行株の35%以上、金額で100億円以上あることが必須となる。取締役会での独立社外取締役が3分の1以上ということも求められる。社内事情に忖度する必要のない外部人材の監督を受けることで、経営の透明性を図ることが株主のメリットになるという判断からだ。

東証は6月末時点での状況を踏まえ、今年7月に各企業へ割当先となる新市場を通知。企業は年内に希望する上場先を選び、東証に申請する。移行先の市場が公表されるのは2022年2月の予定だ。現在、東証1部上場で基準に届いていない企業でも、当面はプライム市場に残留できるが、流通時価総額の増加など条件をクリアするための計画を東証に提示しなければならない。

東証1部上場でも最上位のプライム市場は目指さず、スタンダード市場に移る自由はあるが、大多数の企業はプライム市場への移行を望んでいる。現在の「東証1部上場」はそれだけで優良企業のイメージを放つ金看板である。人材採用や社会的信用の獲得などに効き目を発揮する無形の財産であり、再編後にプライム市場行きを希望するのは当然だろう。

東証1部2190社のうち、
約400社がプライム市場から除外

実際、上場企業はプライム市場入りに必死だ。トヨタ自動車(7203)や三菱UFJフィナンシャルグループ(8306)といった日本を代表する巨大企業はすでに「当選確実」。市場再編に伴って新たに努力することはない。一方、当落ラインすれすれの企業もあり、こちらはプライム市場入りを賭けてあの手この手の策を繰り出している。東証1部には現在、2190社が上場し、このうち400社程度がプライム市場の上場基準を満たしていないもようだ。

プライム市場入りの2大条件は、市場で取引される流通株が発行株数の35%以上で、流通株の時価総額が100億円以上。このため、プライム市場入りを確実にするには、これまで通り株価上昇による時価総額の増大を目指すだけでなく、流通株を増加させる必要がある。

時価総額を増加させる王道は、売上高や利益を増やして株価を上げること。ただ、思い通りに増収増益を達成できるわけではなく、今から研究開発や新規事業をスタートしても、業績向上として実を結び、株価に反映されるのは先の話だ。このため、企業は市場再編の日程表を意識しながら、即効性のある株高施策に力を入れることになる。