三菱UFJ銀行は、「能力に応じて年収1,000万円も可能な給与体系を、2022年4月入社の新卒社員から導入する」と発表した。三菱UFJ銀行以外で、入社1年目で年収1,000万円を達成できる日本企業は存在するのだろうか?
新卒で年収1,000万円が可能な三菱UFJ銀行
三菱UFJ銀行が新卒採用の給与体系を変えると発表したのは、2021年3月12日のこと。対象となるのは2022年4月以降に入社する大卒の新入社員からで、デジタル分野や金融工学などで高い能力を有する人材であれば、年収が1,000万円に達する可能性があるという。
三菱UFJ銀行がこの仕組みの導入に踏み切るのは、フィンテック関連のサービスを展開する企業が国内外で台頭しており、金融大手の三菱UFJ銀行もこうした企業との競争に負けるわけにはいかないからだ。
そのため、「新卒でも年収1,000万円が可能」という魅力を武器に優秀な人材を採用し、今後フィンテック関連サービスの開発に力を入れていくものとみられる。
新卒で年収1,000万円が実現できる企業は他にある?
近年、新卒社員であっても高年収を得られる給与制度を導入する企業が増えており、三菱UFJ銀行以外でも新卒で年収1,000万円を目指せる日本企業が存在する。NECやくら寿司だ。
NEC:2019年10月から年収1,000万円が可能な制度を導入
NECも、新卒で年収1,000万円を狙える給与制度を導入している。具体的には「研究職」を対象とした制度で、大学在学中に高い評価を得た論文を発表した新卒者などが、1,000万円以上の年収を得られる可能性があるという。
NECがこの制度を導入したのは2019年10月で、三菱UFJ銀行よりも早く給与制度の改革に乗り出していた。その理由は三菱UFJ銀行と似ており、海外のIT大手企業などに優秀な人材を奪われたくなかったからだ。
「GAFA」(ガーファ)と呼ばれるGoogle(グーグル)やAmazon(アマゾン)、Facebook(フェイスブック)、Apple(アップル)などのIT・コンピュータ大手では、入社1年目でも年収1,000万円超えは珍しくない。年収2,000万円以上の新入社員もいる。
一方でNECでは、博士号を持つ新入社員でも年収は数百万円程度だった。これでは世界のIT大手には太刀打ちできないため、給与制度の改定に乗り出したというわけだ。
くら寿司:海外展開の強化を見据え、年収1,000万円の幹部候補生を募集
三菱UFJ銀行やNEC以外にも、新卒で年収1,000万円が可能なポジションで人材を募集し、話題になった企業がある。大手寿司チェーンを全国展開している、くら寿司だ。
くら寿司は2020年春に入社する新卒枠の採用において、幹部候補生10人を募集した。この幹部候補生の年収は、初年度から1,000万円を超えるという。飲食業界は平均年収が低めであるため、当時採用活動をしていた大学生に大きなインパクトを与えた。
くら寿司が年収1,000万円も支払って優秀な人材を採用したい理由は、さらなる事業拡大には優秀な人材の確保が欠かせないと考えたためだ。
くら寿司はすでに米国や台湾に出店しており、中国や東南アジアへの進出を目指している。幹部候補生の募集ではビジネスレベルの英語スキルを有することが前提とされており、将来海外子会社の経営を任せられる人材を採用することを狙ったわけだ。
今後この流れは続くのか?
日本では、長年にわたって年功序列の給与体系が重視されてきた。しかし、外資系企業では年齢よりも能力を給与に反映させるところが多い。そのため、多くの日本企業が優秀な新卒人材を外資系企業に奪われることに危機感を持っている。
これらを踏まえると、三菱UFJやNEC、くら寿司のように外資系企業との競争が激しい企業や海外展開に力を入れている企業であれば、新入社員であっても年収1,000万円以上が可能なポジションを募集するケースが今後増える可能性は十分ある。
この流れは現在の大学生にとってメリットに見えるかもしれないが、一概にそうとは言い切れない。各社は外国人採用も強化しており、今後は年収1,000万円を超えるポジションを外国人に奪われる可能性も高まるだろう。
新卒で年収1,000万円を目指すなら、並々ならぬ努力が求められることは、今後も変わらないだろう。「新卒で年収1,000万円」は夢のある話だが、そう簡単にそのポジションを獲得できるわけではないのだ。
文・岡本一道(政治経済系ジャーナリスト)
国内・海外の有名メディアでのジャーナリスト経験を経て、現在は国内外の政治・経済・社会などさまざまなジャンルで多数の解説記事やコラムを執筆。金融専門メディアへの寄稿やニュースメディアのコンサルティングも手掛ける。
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