本稿では、安藤忠雄氏が2020~2021年に手がけた建築を画像入りで紹介します。安藤氏といえば2021年9月で80歳を迎える巨匠です。今でも精力的に活動し続けている安藤氏の建築作品は「時代性を感じさせる」ものばかり。作品を見ることで「安藤忠雄の建築は、今の作品が一番面白い!」というタイトルに納得できるのではないでしょうか。
安藤忠雄氏は名建築がありすぎて代表作が絞れない
安藤忠雄という名を聞いてどのような建築作品をイメージするでしょうか。若い世代であれば「表参道ヒルズや東急東横線・渋谷駅を設計した建築家」のイメージが強いかもしれません。また「光の協会や水の協会など神々しい建築のファン」という人も多いでしょう。建築に詳しい人であれば「世界的に評価されたピューリッツァー美術館」の名を挙げる人もいるはずです。
安藤忠雄氏は、名建築がありすぎて代表作が絞りにくい……それほどまでに偉大な建築家といっても過言ではありません。安藤忠雄氏が異色なのは巨匠にもかかわらず挑戦をやめず今を生き続けていることです。その建築には、時代性がいつも内包されています。その意味で安藤忠雄氏の建築は、常に「今の作品が一番面白い」といえるでしょう。
ここでは、以下の2020〜2021年の主な安藤建築を見ることができます。
- THE TOKYO TOILET(神宮通公園トイレ「あまやどり」)
- ラグジュアリーホテル「W Osaka(ダブリュー オオサカ)」
- こども本の森プロジェクト(大阪県中之島、兵庫県神戸、岩手県遠野)
- 低層賃貸マンション「LEGALAND 下北沢」
安藤忠雄氏/安藤忠雄事務所の最新の建築集
THE TOKYO TOILET(神宮通公園トイレ「あまやどり」)
「THE TOKYO TOILET」は、2021年秋までに公共トイレを渋谷区内17ヵ所につくるプロジェクトです。実施団体は、公益財団法人日本財団で時代を象徴するクリエイター16人(下記、参照)がかつて見たことのないトイレの企画・デザインを手がけています。
- 隈研吾(建築家)
- 伊東豊雄(建築家)
- 片山正通(インテリアデザイナー)
- 佐藤可士和(クリエイティブディレクター)
- NIGO®(ファッションデザイナー) など
安藤忠雄氏もこのプロジェクトに参加したクリエイターの1人です。安藤氏が担当したのは、神宮通公園内の公共トイレ。写真のように円形平面の外観でひさしが大きくせり出しているのが大きな特徴です。
このトイレは、大きなひさしで雨や日差しをさえぎることで憩いのスペースの機能も備えています。建築を通してパブリックな都市空間を追求してきた安藤氏の真骨頂といえるでしょう。ちなみに安藤忠雄氏は、この神宮通公園内の公共トイレを「あまやどり」と命名しています。
トイレ内の通路に格子状の外壁を採用することで外からの光や風を感じられる設計となっています。これは、光や風などと建築物を融合させる安藤忠雄氏が得意とする手法です。このように「あまやどり」は、コンパクトな建築ですが安藤忠雄氏の世界観を十二分に感じられる作品となっています。
ラグジュアリーホテル「W Osaka(ダブリュー オオサカ)」
「THE TOKYO TOILET」と対照的な安藤忠雄氏が手がけた最近の大型建築物に2021年に大阪の御堂筋沿い開業した「W Osaka」があります。「W」は、世界最大のホテルチェーンとなるマリオット・インターナショナルが展開するラグジュアリーブランドです。このデザインを安藤忠雄氏が担当しました。
以下の写真を見て分かるようにスタイリッシュを追求した大胆な黒ベースの外観はこれまでの安藤建築とはまったく違う世界観です。今までの建築物も「W Osaka」もシンプルな外観というのは共通しています。しかし「W Osaka」は、周囲と一線を画すより強い存在感を放っているといえるでしょう。安藤氏が70代後半にしてたどり着いた新境地ともいえます。
「W Osaka」のインテリアデザインは、世界各国の「W」ホテルを担当してきたオランダ・アムステルダムの企業が担当。外観は大胆なシンプル、ホテル内の空間は華やかな雰囲気というコントラストが「W Osaka」のデザインコンセプトになっています。(以下の写真はホテル内の共有空間)
ちなみに以下の画像は「W Osaka」のオープニング・セレモニーの様子です。安藤忠雄氏は、センター左手に立っています。この1シーンからも安藤忠雄氏がこのホテルの世界観をつくるのに重要な役割を果たしたことがうかがえるでしょう。
こども本の森プロジェクト(大阪県中之島、兵庫県神戸、岩手県遠野)
安藤忠雄氏がここまで国内外で評価されている理由の一つに建築を通して社会にインパクトを与えてきたことがあります。インパクトとは、具体的に「社会への問題提起」や「社会へのよりよい影響」のことです。このことを象徴する建築物が2020年7月に完成した「こども本の森 中之島」。(鉄筋コンクリート3階建て/約1万8,000冊収蔵)
安藤忠雄氏は、この図書館を自ら自治体に提案し設計を担当すると共に建築費を安藤氏の事務所が負担。建物を寄贈する形となりました。
安藤忠雄氏は「こども本の森 中之島」の開館式において「しっかり物事を考えて次の時代に生かし、世界に考えを発信していく子どもが一人でも多く出てほしい(日本経済新聞2020年7月5日付)」との想いを語っています。特筆すべきは、この安藤忠雄氏が発案した「こども本の森」が大阪以外のエリアにも波及していることです。
2022年、神戸市中央区には「こども本の森 神戸」が完成予定となっています。(鉄筋コンクリート2階建て)大阪のプロジェクトと同様、安藤氏が設計・建築した建物が自治体に寄贈される予定です。
2021年7月には、岩手県に「こども本の森 遠野」が誕生する予定です。当然このプロジェクトにも安藤忠雄氏は関わっています。民話のふるさとである遠野から文化を発信しつつ東日本大震災を風化させないことがテーマです。
低層賃貸マンション「LEGALAND 下北沢」
最後に紹介する安藤忠雄氏(安藤忠雄建築研究所)の最近の建築物は、2020年3月に完成した「LEGALAND 下北沢」(鉄筋コンクリート地下1階地上4階建て)。これは、小田急線・京王井の頭線「下北沢」駅から徒歩約5分にある全28室の低層賃貸マンションです。
「LEGALAND 下北沢」の各部屋の間取りは、1R20戸・1LDK2戸・2DK6戸の構成。1人暮らしやカップルの人たちが「安藤建築に実際に住んで生活できる」というぜいたくな趣向です。
なお「LEGALAND 下北沢」は、当メディア(YANUSY)を運営する株式会社LeTechが展開するLEGALANDシリーズのうちの1棟です。
京都大学の困窮している学生のための基金に10億円を寄附も
安藤忠雄を安藤忠雄たらしめているのは、社会へのポジティブなインパクトです。さらに安藤氏は、建築家という枠を超え経済的に困っている京都大学の学生に対して多額の「返済不要の奨学金」を寄附しています。2021年5月京都大学では、安藤氏と家具大手のニトリからそれぞれ10億円の寄附を受け計約25億円の基金を立ち上げて10年間で1,200名以上の学生を支援すると発表しました。
記者会見で安藤氏は「生きている限り、支援していきたい」(時事ドットコム2021年5月27日付)とコメントしています。2021年9月で80歳を迎える安藤氏ですが年齢を重ねるほど社会への影響力を増している様子がうかがえるのではないでしょうか。年齢は限界を規定しない……安藤氏の生き様は、人生100年時代のお手本となりそうです。
(提供:YANUSY)
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