カンブリア宮殿,ゲオ
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客納得の買取額で大人気~話題のセカンドストリート

不要になった品々を買い取ってくれる人気のリユースショップ「セカンドストリート」。

千葉県柏市の柏沼南店に、家族が総出で持ち込んでいたのは、使い倒した床のクッション材、ベビーベッドやおもちゃなど台車4台分250点以上。これで買い取り額は9000円になった。一方、夫婦が持ち込んだ黒いケースは10年前のシンセサイザー。「1万円くらいになれば」と言っていたが、3万円になった。

コロナ禍の巣ごもりで自宅を整理する人が増えたこともあり、このリユースショップは連日大盛況。こうした中古品を売買するリユース市場は右肩上がり。来年には3兆円規模になると見込まれている。

「セカンドストリート」は直営店舗数が703店舗(2021年6月末現在)と最も多い業界最大手。数あるリユースショップの中で選ばれる理由の一つは、客が納得する買取額にある。その価格はどうやって決まるのか。

例えば国産メーカーの2年落ちの洗濯機。査定を担当するのはバイヤーの小櫻和大だ。まずは洗濯機の状態を手早く確認。商品の型番をメモすると、パソコンの前へ。型番を打ち込んでいくと、5000円という買取額が表示された。

「過去のデータの蓄積があって、それに基づいて価格が算出されている。『安く買う』『高く買う』というのは基本的になくなります」(小櫻)

「セカンドストリート」では全店舗の過去10年分の売買記録をすべてデータベース化している。今回の洗濯機なら、この1年だけで136台も買い取っていた。これをもとにバイヤーが実際の買取価格を決めるのだ。

「すごくきれいな品物でしたので、少し上乗せして500円程高めに買い取らせていただこうと思います。減点するわけではなくて、基本的に加点することを意識しています。満足してもらえたら、また持ってきていただけるので」(小櫻)

データに基づいた価格と加点式の査定が、客が納得する買取額を生み出している。

続いて査定するのは子どものおもちゃ、大量のソフトビニール人形。ほとんどが中国製で買取額は100円程度だ。そんな中の一つに、ウルトラマンにでてくる「怪獣ゴモラ」の大きなものがあった。足の裏を見ると「円谷プロ」「JAPAN」の文字。年代も入っている。ただ、データベースに過去の実績はない。

すると小櫻は別のバイヤー、石橋篤史を呼び寄せた。鋭い目でゴモラを見た石橋は「年代と状態もいい。塗装も残っているのと、よく出回る商品ではないので、欲しい商材になります」。石橋はおもちゃに精通したバイヤー。日本製で年代物のゴモラはコアなファンが買うと読んで、1800円の買取額をつけた。

この店には、おもちゃやスポーツ用品・楽器など10のカテゴリーに分かれた専門のバイヤーがいる。だから、データに無いどんなレアものが持ち込まれても、価値の判断を誤ることはないのだ。

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5~8割オフは当たり前?~業界1位ゲオの戦略

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「セカンドストリート」は売り場の圧倒的な品揃えも人気の理由の一つになっている。家電売り場などはまるで大型の量販店のようだ。

ベビー用品売り場に若い夫婦が買いに来たのはベビーベッド。5390円のものを見つけると、スマホで検索を始めた。同じ商品の新品を探して値段を見てみると2万4800円。ふたりはすぐに購入を決めた。

「セカンドストリート」の商品はとにかく安い。人気の「ダイソン」の掃除機は新品のおよそ半額の1万4190円。ふとんクリーナーの「レイコップ」は8割オフの2090円だ。移動式のエアコンは去年のモデルがおよそ半額になっていた。

レシートと一緒にくれたのは返金保証書。家電製品の場合、6カ月以内の自然故障なら全額返金してくれるのだ。

「セカンドストリート」は大型店をはじめ、古着専門店など、年間50店ペースで拡大を続けている。「セカンドストリート」を手掛けているのはゲオ。全国チェーンの大手レンタルビデオショップだが、ここ数年は動画配信サービスなどに押され、ビデオレンタル業は頭打ち状態にある。その一方で「セカンドストリート」を中心としたリユース業は、右肩上がりを続けている。

さいたま市にある大型店は「スーパーセカンドストリート」大宮日進店はその中でも売り上げナンバーワン。やって来たのは、レンタルからリユースへと舵を切ったゲオホールディングス社長・遠藤結蔵(43)だ。

「ここにあるものは中古のものがほとんど。下手をすると全部ゴミになったかもしれないんです。価値がある限りは次の方へお譲りするお手伝いをしていきたい」(遠藤)

リユース業とは不用品を必要な人に繋ぐ仲人役だと、遠藤は言う。だがいま、フリマアプリなどを使って、個人同士で実際の商品を見ずに売り買いする人も増えている。そんな中で遠藤は、あえて実店舗での売買にこだわっている。

「どうしても伝わりづらいにおいですとか、状態がどれくらい中古だと劣化しているのかみたいなことは、手に取ってもらった方が分かりやすい」(遠藤)

実店舗を持つからこそできる「セカンドストリート」のサービスがある。大量の洋服を受け取った客が向かったのは試着室。どんどん試着していく。実はこれらはオーダーしてほかの店舗から取り寄せた商品なのだ。

「セカンドストリート」では全国の店舗にあるおよそ100万点の商品をオンラインでも販売している。しかもネットで見て気に入った商品は、自分の都合のいい店に取り寄せ、実際に確かめることができるのだ。

結局、客は12着のうち3着だけ購入した。「取り寄せして現物を見てキャンセルもできる。それが一番大きな利点ですね」と言う。現物を手に取って確認できる、ネットにはない安心感でお客から支持を集めているのだ。

いまやリユース業界で、ゲオは11年連続売り上げトップを走る。

「譲っていただく方も買っていただく方も、どちらもお客様という特殊な業界。『良かったな』と思っていただける方をどれだけ増やせるかが、商売を続けられるかどうかの試金石だと思っています」(遠藤)

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「浮草稼業は変わらないと」~父から受け継いだ理念

もともとはビデオレンタルの店だったゲオ。店内にはビデオと並んでリユース品も同居している。

始まりは遠藤の父・結城が脱サラして1986年に創業したレンタルビデオ店。1999年、当時世界最大のレンタルビデオチェーン「ブロックバスター」の日本法人と資本提携。これを機に一気に全国展開していった。

その一方で父は危機感を募らせていたという。

「元々いつまであるか分からない商売、映像配信になるだろうというのは、昔から言われていました」(遠藤)

遠藤がゲオに入社した2000年、すでにレンタル業に代わる新たなビジネスの種を探していた父は、日々、こんな言葉を口にしていた。

「『チェンジ・アズ・チャンス』という言葉です。浮草稼業なんだから、変わらないといつかは草は枯れるわけですし、いつかは飽きられる。だからどんどん変わることがチャンスなんだということを口癖みたいに言っていました」(遠藤)

父・結城がチャンスだと目をつけたのがリユース業だった。もともとやっていたゲームソフトなどの中古販売をほかの商品にも広げようと考えたのだ。

しかし2004年、父は交通事故で他界する。取締役となった遠藤が心に刻んだのは、父の「変化をチャンスに」という言葉だった。

2010年、古着のリユースチェーン「セカンドストリート」を買収。リユース業拡大へ踏み出そうとした矢先、東日本大震災が起きた、東北にあるゲオの店も被災。当然、再開に動くべきだが、そこで遠藤は大きな疑問にぶつかる。

「ゲオのサービスは必需品ではないと思っていたんですね。なので、我々みたいな商売を再開することに、そこまで力を使っていいのかね、と」(遠藤)

しかし、いざ再開してみると、そこには思わぬ光景が広がっていた。

「お客様が結構来てくださった。被災の前と変わらないレベル、もしくはそれ以上に来てくださったんですね」(遠藤)

ひと息ついた人々は、ささやかな娯楽を求めてビデオを借りに、そして生活を再建するのに必要な割安で買える中古品を求めて、やって来たのだ。

「『リユースでもいいじゃないか』という暮らし方や、『捨てるのもったいないね』みたいなモノに対する考え方が、ちょっと変わるきっかけだったのではないかなと」(遠藤) 同年秋、社長に就任した遠藤は、リユース業をゲオの新たな柱に据える覚悟を決めた。

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有名ブランド品が激安価格&余剰在庫の食品も安く

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去年、埼玉県・所沢にあるファッションビル「新所沢パルコ」にゲオが新業態の店「ラックラック」を作った。

アパレル専門の店で、並んでいるのは誰もが知る有名ブランドばかりだ。「すごく安いです。普通に買うのがバカバカしくなるくらい」(女性客)と人気だが、売っているのはリユースではなく、すべて新品だ。

例えば「サルーン」のワンピースは7900円のものが77%オフで1980円。「フォリフォリ」の腕時計はおよそ9割引きの5500円だ。ショーケースの中には「グッチ」のバッグや「プラダ」の財布もあって、これらも3割以上安い。

なぜ新品のブランド品をここまで安く売れるのか。

東京・原宿にやって来たのは「ラックラック」のバイヤー、山本譲だ。「40代~50代向けの卸を中心にされているメーカーさんに行ってきます」と言う。

向かった先はとあるアパレルメーカー。主に百貨店などで商品を販売しているという。

用意された春夏物の中から、バイヤーは「ラックラック」で売るものを選んでいく。

バイヤーたちが選んだ商品はすべてメーカーが売りさばけなかった余剰在庫品だ。「(在庫数量は)2500~2600くらいの物量はあります」(メーカーの担当者)という。「ラックラック」はメーカーが在庫として抱える商品を安く買い取ることで、激安価格を実現しているのだ。

このメーカーの商品は1万円から3万円程度だが、「ラックラック」の買い付け価格はその1割程度。それでも、保管や処分にかかる費用を考えると、メーカーにとってはありがたい話だという。

「自社の在庫は自社で売っていくというのが理想ではあるのですが、こういうコロナ禍の経済状況になって在庫減らしという意味で、当面、お世話になりたいなと思っています」(担当者)

この日、バイヤーは400着を300万円で買い付けた。

「焼却されるブランドさんも多くある中で、価格の側面としてもお客様に満足していただける。非常に会社として貢献できていると思っています」(山本)

一方、東京・板橋区でゲオが始めた新業態の店「ゲオヤ」ときわ台駅前店。店内はまるでコンビニのようだが、並んでいる商品はどれもコンビニより格段に安い。

安さの秘密は「余剰となったものを仕入れて、安く提供する」から。問屋がさばききれなかった商品を安く仕入れ、安く売っているのだ。そこにはフードロス削減の狙いもあるのだとか。ほかにない安さと品揃えで、地元客のハートをつかんでいる

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~村上龍の編集後記~

「GEO」というのは、大地「ジオ」を表すラテン語読みらしい。交通事故で急逝した父親が好んだのだろう。父親は脱サラしてレンタルビデオ屋を開業した。人々に楽しみを提供する仕事だった。以来、ゲオはリユースをはじめとして、人々の喜びや楽しみに貢献しようとしてきた。実店舗を持つのが強みだ。「チェンジ・アズ・チャンス」という社是があるが、遠藤さんは、庶民的な感覚を持った人たちに向けて楽しみを提供しようとしている。

<出演者略歴>
遠藤結蔵(えんどう・ゆうぞう)1978年、愛知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、2000年、ゲオ入社。2011年、代表取締役社長就任。

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