販売・営業・サービス分野における人的営業支援とデジタル営業支援を両輪として事業規模を拡大し続けているのがヒト・コミュニケーションズ・ホールディングス(以下、ヒト・コムHD)だ。会社設立以来24期連続で増収、前期は715億円を売り上げた。今期も売上高・営業利益共、過去最高値を目指している。
主力事業はEC・TC支援と
アウトソーシング
ヒト・コムHDの2020年8月期の売上高は714億9900万円、営業利益は31億4900万円、経常利益は33億6100万円、純利益は13億7000万円。事業の中核を担うのは、「ヒューマン営業支援プラットフォーム」と位置付ける子会社のヒト・コミュニケーションズと、「EC支援プラットフォーム」を展開する子会社ビービーエフ(17年6月にM&Aでグループ化。以下、BBF)の2社だ。以前はヒト・コムとして上場していたが、19年に単独株式移転によりホールディング化し再上場、計12社から成る営業支援企業グループとなった。
セグメントは、通信キャリアやメーカーから業務を請け負うアウトソーシング事業、販売系営業支援などの人材派遣事業、ECサイト運営受託やテレビショッピング販売支援であるEC・TC支援事業、衣料品の企画から卸売までを手掛けるホールセール事業の4つ。最も売上が多いのは全体の約46%を占めるEC・TC支援事業で、アウトソーシング事業(約32%)がそれに続く。一方、利益構成としては、全体の6割近くをアウトソーシング事業が占め、次が同2割強のEC・TC支援事業となっている(※いずれも20年8月期の実績)
EC・TCは急成長
全売上の5割目前に
稼ぎ頭の二大事業のうち成長ドライバーとなっているセグメントが、EC・TC支援事業だ。M&Aにより17年からヒト・コムHD入りしたBBFの売上がこれに当たる。EC事業運営で必要となる、サイトの構築、デジタルマーケティング、バックオフィス、決済処理、ロジスティクスといった機能は、BBFが一気通貫で支援する。また、自社開発のEC支援プラットフォームを活用。顧客との契約はレベニューシェアの形式であるため、クライアントサイトの売上がBBFの売上となり、利益も売上に連動する。売上は年々右肩上がりで、全社売上に占めるEC・TC支援事業の割合も毎年伸び続けている。今期2Qまでの累積では、全売上の50%を同事業が占める形となっている。
躍進の秘密は人材育成力
未経験者を教育、経験者に
二大セグメントのもうひとつが、アウトソーシング事業だ。「人材派遣会社」と紹介されることもある同社だが、主力事業はこの「請負(アウトソーシング)」で、人材派遣事業のセグメント売上は全体の1割程度に過ぎない。アウトソーシング事業におけるヒト・コムの大きな特長は、教育・研修プログラムに力を入れ、現場ニーズに即した内容をクライアント企業と共同開発して充実させている点にある。
「人を出しているだけであとはよろしく、となると、指揮命令権はお客様に全部任せてしまう。それではダメだと考えています」(安井豊明社長)
顧客とは研修プログラムを創り上げるところから始めると共に、ニーズ・目標の共有、プラン立案、業務運営、業績の分析とフィードバック、そして成果の追求、という一連の流れを一緒に行っていく。また、社内には『疑似店舗』を設営し、よりリアルかつ実践的な研修を実施している。専門の研修担当が監修した全スタッフ参加の「おもてなし接客マナー研修」のほか、売り場の状況や店舗の考え方など個々の状況を加味した「おもてなし研修」などがそれだ。キーワードは「未経験者を経験者に」だという。
「経験者がいいと良く言うが、プロダクトも新しくなっていて若い人の感性を使わないといけないのに、旧態依然として経験を追いかけていると、全てが全て、いいとは限らないわけです。私どもは新しいプログラムで、未経験者を経験者に変える仕組みを作りました。また、人というのは集団(チーム)の中で皆に育まれていくものという考えを持っています。その中からさらに、『育てる人』を作っていく。つまり、プロが育ってくると、このプロがまたプロを生むわけです」(同氏)
学生時代ラグビーに打ち込み、全国高校ラグビー大会で準優勝した経験を持つ安井氏は、チームの重要性を知り尽くしている。
「ヒト・コムはチーム戦、というのはずっと言ってきました。ヒト・コムはチームで勝っていく会社なのです」(同氏)
「ニューノーマルは新たなチャンス」
同社の事業はいまや、観光やインバウンド、スポーツといったフィールドにまで広がりを見せている。
「これまで、世の中の流れに合わせて事業開発を行ってきました。営業販売サービス分野ほど景気や社会の流れを敏感に捉えるビジネスはありません。いち早くそこにマッチしていって我々の方が先に提案をする、それが、マーケティングの担い手としての責務でもあり、差別化になるのではないかと思っています」(同氏)
新型コロナウィルスの感染拡大は様々な分野に多大なる影響を及ぼしているが、安井社長は「ニューノーマルは新たなチャンス」と捉える。
「ピンチはチャンスで、本物しか残らないし、新たな変容のタイミング。(企業にとっては)ある程度の流動性は確保しながら、生産性を上げてアウトソーシングしておく、というのはすごく大事ですし、いずれまた新たな流れがくると思います。また、もちろんEコマースでも、たとえばライブコマースやオンライン接客センターなど、やれることはたくさんありますから、足元の半歩先を踏んでいき、マネタイズをきちっとしながら、いずれ世の中の流れに合わせて大きな踏み込み方をしようと思っています」(同氏)
(提供=青潮出版株式会社)