銀行金利の低下を受け貯蓄型から投資型の資産運用へ

不動産投資
(画像=PIXTA)

現在の日本の銀行預金金利は驚くほど低い。

2016年に日本銀行がマイナス金利を導入したことを受け、メガバンクの普通預金の金利は軒並み0.001%となった。普通預金で100万円を預けても、1年間で利子が10円しかつかない状況だ。定期預金の場合も金利は0.002%と、普通預金と大差はない。

1990年代初頭、定期預金1年の金利は6.08パーセントと高水準だった。今となっては信じられないことだが、銀行に預けるだけでお金が増えていく時代だった。

円預金ではなく外貨預金であれば、多少は金利が高くなる。また、為替差益も期待できる。とはいえ、為替差損を被る可能性もあるし、万が一、銀行が倒産した場合、外貨預金はペイオフの対象外となるため、全額が消えてしまうリスクもある。

こうした貯蓄型の資産運用で資産を増やすのは容易ではない。円預金はもちろん、外貨預金も一定の知識を必要とする。増やすためには、ある程度のリスクを覚悟しながら投資型の資産運用をしていくことも検討すべきだろう。

投資には以下のように様々な種類がある。リターンとリスクの大きさもそれぞれ異なり、その大きさによって「ローリスク・ローリターン」、「ミドルリスク・ミドルリターン」、「ハイリスク・ハイリターン」の3つに分類される。なおこの記事では、想定利回りとしてローリターン1〜2%、ミドルリターン3〜6%、ハイリターン7%〜としている。

ローリスク・ローリターン:元本割れのリスクは小さいが、利益は少ない
想定利回り:1〜2%
国債 国が発行する債券。半年ごとに利息が支払われる。国が破綻しない限りは元本割れしないが、利益も少ない。
社債 企業が発行する債券。一般的に銀行の定期預金より金利が高いものの、企業の業績悪化による償還の不履行、倒産による元本割れのリスクもある。
ミドルリスク・ミドルリターン:ある程度のリスクはあるものの、相応の利益が期待できる
想定利回り:3〜6%
投資信託 複数の投資家がお金を出しあい、運用会社が様々な投資先に分散させて運用する。投資のプロが運用するが、元本保証はなく、運用会社への手数料も発生する。
不動産投資 不動産を購入して第三者に貸し出し、家賃を受け取る。安定した利益が期待できるが、高額の資金が必要で、空室や家賃滞納のリスクもある。
ハイリスク・ハイリターン:資産が消滅する恐れもあるが、大きな利益も期待できる
想定利回り:7%〜
株式投資 企業が発行する株式を購入する。インカムゲインとキャピタルゲインを得られるが、その企業の業績が下がれば無配となり、倒産すれば価値がゼロになる可能性もある。
ハイイールド債
(ジャンク債)
国債や社債などの債券の中で信用格付けが低い発行体の債券。利回りは高いが、発行元の財務状態が悪化すれば債権の回収が難しくなる可能性もある。
外債(外国債券) 発行体、発行市場、通貨のいずれかが海外である債券。市場価値の変動、発行体の経営状況や財務状況の悪化、為替変動の影響を受けるリスクもある。
FX 為替相場を見ながら2国間の通貨を売買する。為替損益とスワップポイントで利益を得られるが、為替相場は変動しやすいため予想外の損失を被ることもある。
先物 ある商品について、事前の取り引きで価格を決め、将来の定められた期日にその価格で売買する。商品の価値が上がった時に売却すれば利益が得られるが、価値が下がっていれば損失を被る。様々な要因で価格変動する。
暗号資産(仮想通貨) 電子データのみでやり取りされる通貨で、主にインターネット上で取引される。価格の変動幅が大きく、短期的に大きな利益を得られる可能性もあるが、様々な外的要因で甚大な損失を被る可能性があり、サイバー攻撃などネットワーク上のリスクもある。

ミドルリスク・ミドルリターン投資の狙い目は?

「投資」と聞いてまず思いつくものは、株式投資や投資信託、不動産投資あたりだろう。投資の初心者が手を出しやすいのはローリスクの国債や社債だが、それだけでは十分な利益を得るのは難しい。かといって大きな利益が期待できるものは、それだけのリスクが付きまとう。

ちなみに、ハイリスク・ハイリターンにカテゴライズした外債(外国債券)は、2021年8月10日時点での10年国債利回りがアメリカ1.31%、オーストラリア1.19%、インド6.23%と国によって利回りに差があり、ローリスクに属するもの、ミドルリスクに属するものもある。

その中でもとりわけ利回りの大きな外債は財務状況が読みづらく、為替変動の影響も受けやすいため、リスクが大きく安定しているとは言えない。実際、高利回りの新興国国債の代名詞とも言えるブラジル国債は2015年に大手格付会社から非投資適格級に引き下げられている。ベンチャー企業への株式投資も、その企業が大成功を収めれば購入した株式の市場価値が何十倍にもなる可能性がある反面、事業が失敗すれば投資額全体を失うことになるなど、リスクは大きい。

また、FXや先物、暗号資産のようによりリスクが高いものは、リターンが大きいものの、熟練の投資家でないと扱うのが難しい。

金融商品は、どのようなリスクがあるのかを自分で理解した上で購入の是非を判断すべきものだ。安易な考えでハイリスクの金融商品を購入して資産を失うケースは少なくない。

その点、ミドルリスク・ミドルリターンの投資信託や不動産投資は、ある程度のリスクを許容できれば、無理なく計画的に資産を運用できるだろう。

ミドルリスク・ミドルリターンは、元本の保証はないものの、投資した金額がゼロになる可能性は高くない。年利回り3〜6%をミドルリスク・ミドルリターンと考えた場合、近しい平均利回り実績を残す年金積立金がある。年金積立金の運用は「長期的に積立金の実質的な運用利回り1.7%を最低限のリスクで確保すること」という目標下で、2001年度以降、大きく利益を出す年もマイナスを記録する年もありながら、20年間の平均利回りは3.78%(実質的な運用利回り)となっている。着実に利益を生みだす機関投資家が掲げる目標の少し上、それがミドルリスク・ミドルリターン投資だ。

ミドルリスク・ミドルリターンとして挙げた投資信託の利回りはこれまでの実績を踏まえおおよそ年3~6%が期待できる。複数人から集めた資金をプロが代わりに運用するため、深い知識がなくても取り組める点も魅力だが、手数料との差し引きでそれほど大きな利益を得られない可能性もあり、もちろん元本割れのリスクもある。

不動産投資は、不動産の価値がインフレやデフレの影響を受けにくいため、比較的、安定した収入を得られる。ただし、借り手がいる間は安定的な収入が見こめるものの、借り手がいなければ無収入となる。加えて、初期投資で多額の費用が必要となるケースもあり、不動産の価値を維持するためには管理や修繕も必須となる。

また、近年、日本では大規模な災害が相次いでおり、所有する不動産が直接的なダメージを受けて価値が急落するリスクもある。

こうした不動産投資のデメリットをなるべく減らし、少ない資金で投資をスタートさせられる上、株式投資よりも安定的で、国債や社債よりも高利率の利益が期待できるのが、不動産投資クラウドファンディングだ。

不動産投資クラウドファンディング
不動産投資クラウドファンディングを展開するビットリアルティ(bitREALTY)

不動産投資クラウドファンディングは、不動産会社が複数の出資者から資金を集めて一定期間、不動産を運用し、その利益を出資者に分配する事業だ。自ら不動産を購入して運用するのに比べて初期投資額が少なくて済み、利回りも年換算でおおむね3%以上。中には8%を超える投資対象物件もある。

不動産大手のアセットマネジメント会社ケネディクスと金融ITソリューション分野で多くの実績がある野村総合研究所の合弁会社であるビットリアルティ(bitREALTY)株式会社は、2019年から不動産ファンドを販売している。

同社の不動産クラウドファンディングは、1つの物件に対して10万円からの投資が可能で、年換算の想定利回りは3.5%前後となっている。不動産投資でありながら初期費用が抑えられ、不動産のプロが厳選して物件を選び運用するので、元本割れのリスクも抑えられる。

また、投資対象の物件が非公開だった従来の不動産投資クラウドファンディングとは異なり、各ファンドがどの物件に投資されるのかを明確にし、投資した資金をファンドごとに分別管理しているため、物件の詳細を確認して、納得した上で投資することができる。

投資資金は信託口座に入金し、実物不動産及び実物不動産関連債権等が証券化されたファンドに投資される。ビットリアルティの口座を経由せず、投資商品ごとの口座に直接、預けられるため、同社のクレジットリスクから完全に切り離された状態で運用される。

株式よりも手軽に投資ができ、安定した利回りが期待できる新しい不動産投資の選択肢という点で、ビットリアルティのファンドは今後さらに注目度を高めていくだろう。