本記事は、押野満里子氏の著書『社長はメンタルが9割』(かんき出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
トラウマやコンプレックスだって未来の糧になる
過去は変えられないけれど
「子どもの頃に貧乏で、お金に執着してしまう」「許せない相手がいて、いつか見返してやろうと思い続けている」「先代社長の教えに縛られている」などが、社長さんに多く見られるトラウマやコンプレックスでしょうか。
何度もお伝えしているように、こうしたトラウマやコンプレックスは、社長さんにとっては、頑張りの原動力になることがあるので、一概に悪いものとは言えません。
ただ、それが、苦しみや自己否定の原因になってしまったとき、感情コンサルによって、心をねぎらうことが有効だ、ということがご理解いただけたと思います。
過去に起こってしまったことは変えられません。
その過去が心の傷として残ってしまったら、それはただの辛い過去のままです。
でも、その過去の出来事によって、何かを手放して成長できたり、人生の転機のきっかけになったりしたとしたら、その過去は大切な出来事になります。
過去の出来事が辛いトラウマになるか、貴重な体験になるか、その分かれ目は、実は本人の解釈次第なんです。
たとえば私にも、トラウマと呼べる辛い経験があります。
父が長野で会社を興したために、小学3年生のときに、東京から転校しました。
今は、そんなことはないと思いますが、当時の長野の山奥というのは本当に田舎で東京からブラウスにスカートをはいて、ハイソックスで転校してきた私は異分子そのものです。
すっかり浮いてしまって、トイレから帰ると廊下に私のカバンのなかのものが全部ばらまかれていたり、植物の栽培実習で、私の鉢に大きなミミズを入れられたり、今、考えると、ずいぶんキツイいじめにあっていました。
思えば、この頃に、のちの私を苦しめることになる、「自分の感情にフタをするクセ」が育っていたのかもしれません……。
これは、過去の出来事がマイナスのトラウマとして残ってしまった例です。
いっぽう、過去の「本来なら辛い出来事」が、解釈次第でプラスに作用することもあります。
子どもの頃の私は要領が悪くて、よく「ノロマ」って呼ばれていました。普通ならこれ、辛い過去です。でも、私のなかでは、「ノロマだと周りの人が手伝ってくれて、愛されていると思える」というプラスのイメージがあったんです。
つまり、過去の辛い出来事は変えられないけれど、解釈次第で、トラウマにもなるし、プラスに作用することもあるということです。
過去の辛い出来事に感謝!
辛い過去は、「自分はダメだ」というようにタグ付けしてしまいがちです。
しかし、「今の自分があるのは、あの過去のおかげ」って、感謝することができたら、その過去を糧にして次の人生を切り開いていくことができます。
「あの出来事のおかげ」と感謝して、頑張ってきた自分を認めて心を癒すと、過去を「ダメな自分」だけでなく、「良い自分」としてのタグ付けもできるようになるんです。
そうやって、過去のストーリーの書き換えというか、解釈を変えてみると、過去の出来事による心の傷が、実はもう治っていて「かさぶた」になっていることに気づけたりします。
ちなみに、過去の心の傷が、まだ生傷のままなのか、すでに、かさぶたになっているのかを知るための1つの基準は、その出来事について話せるかどうかです。
どうしても手放せない思い込みは、口に出せないってお伝えしましたよね。
心の傷がまだ生傷のままなら、人は辛くて言葉にできません。でも、言葉にできるなら、その時点で、すでに傷は癒えてきているのです。