富裕層のバランスシートを最も毀損するライフイベントのひとつが「相続」だ。そのため、ほとんどの富裕層にとって相続対策は大きな関心であり、同時に課題となる。そこで本特集では、「富裕層の相続税対策」について様々な角度から考察することにしよう。

金融機関の鉄板提案「持株会社(資産管理会社)設立」の注意点
(画像=PIXTA、ZUU online)

オーナー経営者に提案される「持株会社を活用した相続税対策(事業承継対策)」

富裕層の代名詞と言えるのが「オーナー経営者」だ。オーナー経営者のもとには、たくさんの「提案型営業」が集まってくる。提案型営業とは、金融機関、ハウスメーカー、M&A仲介会社などが、富裕層の相続税対策や事業承継対策を切り口として、自社のサービスや商品を販売するための営業手法だ。

オーナー経営者の相続税対策には、単純な税額圧縮や納税資金確保の他に、「事業承継問題」という大きな変数が加わるため、提案内容も複雑化することが多い。そんなオーナー経営者に向けて、銀行(プライベートバンクを含む)が行う提案型営業の代表例が「持株会社を活用した相続税対策(事業承継対策)」だ。

持株会社を活用した事業承継対策にはいくつかパターンがあるものの、後継者が全額出資した持株会社(ペーパーカンパニー)を設立し、その持株会社にて、先代が持つ事業会社の株式を買い取り、「事業会社の支配権(株式)」を保有する「持株会社の支配権(株式)」を後継者が握ることによって、事業承継が成されるというパターンが一般的だ。

一般的に、このような事業会社の株式価値は高く(だからこそ銀行がアタックしてくるとも言える)、後継者に株式を買い取る手元資金はないことが多い。そこで銀行の出番だ。株式買取費用を後継者(正確に言えば後継者が設立したペーパーカンパニー)に貸してあげるというわけだ。むしろ、銀行が「融資を発生させる」ために編み出したスキームとも言えるだろう。