企業の電子商取引(ECサイト)の構築や運営代行を手掛けるのがEストアーだ。ECサイト構築とマーケティング機能をワンストップで提供する「総合力」を強みとし、「自社本店EC」に特化した事業を展開している。コロナ禍の影響で企業のDX化が加速したことを追い風に、売上高、利益ともに大幅増で推移している。今年6月に代表取締役社長COOに就任した柳田要一氏に今後の戦略を聞いた。
「ショップサーブ」提供
導入累計5万店舗以上
Eストアーは、ECサイトの構築・運営とマーケティング、決済の3つの領域をワンストップで提供する企業だ。2021年3月期の売上高は前期比116・5%増の105億400万円、営業利益は同89・7%増の9億600万円だった。
売上高の内訳は、ECシステムが39億円、マーケティングサービスが42億円、決済サービスが24億円であり、この3つの事業を柱に展開している。ECシステムは売上高対前年比202%、決済サービスは139%、マーケティングサービスは347%の大幅増となった。
インターネット黎明期の1999年に創業した同社は、レンタルサーバー事業で急成長を遂げて2001年には早くも株式上場を果たした。その後、中小企業向けECサイト構築システム「ショップサーブ」でカート概念を世に出した。EC事業に本格的に取り組んでいる中小企業、主として月商300~1000万円をボリュームゾーンに月商1億円までの顧客が対象。導入件数は累計で5万店舗以上に及ぶという。
現在、カート市場は参入企業が800社ともいわれ、無料で利用できるECサイト構築システムも登場しているが、同社のショップサーブは初期費用約1万5000円から、月額利用料は平均2万円で提供されている。安定運用と多機能性に優れ、顧客の成長に伴って必要となる機能を実装しているのが特徴だ。
「カスタマイズ不要で、お申込みいただいてから数日後にお使いいただけます。また、例えば食品の受注処理では冷凍か冷蔵かの細かい設定など、商品がたくさん売れるようになってくると発生してくる様々なニーズに対応できる機能を少しずつパッケージ化して入れているのが他社の類似製品とは違う点です」(柳田要一社長)
自社で顧客情報を管理
マーケティングに活用
ネットショップ事業には、大きく分けて「モール型EC」と「自社本店EC」の2種類がある。モール型ECは楽天市場やアマゾンなどへの出品・出店が基本だ。これに対し、企業が自社で独自のサイトを構築するのが自社本店ECであり、同社は創業以来、「自社本店EC」にこだわった支援を展開している。
その理由は、モール型ECではモールが顧客情報の主導権を握るのに対し、自社本店ECでは顧客情報は自社のものであり完全にコントロールできることにある、と柳田社長は話す。同社はシステム構築とマーケティングの両方を手掛けており、システムとマーケティングの部門が連携して顧客情報を活用した販売戦略を行っている。
「自社本店ECの強みはお客さんが自社のお客さんであること。これからのEC事業ではいかにお客さんからリピートを取っていくかが非常に大事です。消費者も信頼できるお店で買い続けたいと望んでいます。モールに対する消費者ニーズは引き続き残る一方、付加価値の高い自社本店ECが確実に増えていくと考えています」(同氏)
ECシステムの
ポートフォリオを強化
国内EC化率は2010年の約3%から18年は6%に拡大し、今後もEC市場は成長が続く見込みだ。同社はEC市場拡大の波に乗るため、ECシステムの対市場ポートフォリオを拡充してサービス強化を図っている。
20年1月には大企業を主要顧客とする大型EC構築の「コマース21」、同年3月には大型のネットプロモーションを行う「ウェブクルーエージェンシー」の2社をM&Aし、中小企業から大企業までECを支援する体制を整えた。
「昨年1月のM&Aでコマース21を子会社化し、元々提供しているショップサーブに加えて、月商10億円以上の顧客をターゲットとした大型ECシステムの『セルサイドソリューション』、月商1億円以上の顧客向けの中型システムの『エコツー』の3つのポートフォリオを整備しました。いわば中学、高校、大学の3つが揃ったことになります。顧客企業の成長に合わせて幅広くサービスを提供できることは大きな強みだと考えています」(同氏)
22年3月期決算から
新収益認識基準を適用
同社は今期(22年3月期)の決算から新収益認識基準を適用。いわゆるグロス計上からネット計上への変更で売上高の影響が大きく、同基準を適用した今期の業績は売上高59億円、営業利益10億2000万円を見込む。
前期(21年3月期)から25年3月期を対象とする中期経営計画の目標値は売上高101億円(新収益認識基準)、営業利益20億円。初年度の21年3月期比で売上2倍増、営業利益約4倍を目指す。
「基本的にEC市場が伸びることと、企業のDXが本格化しているので当社もその波に乗って成長を続けていく計画です。EC支援事業の老舗として培ったノウハウを活用して顧客のビジネスを支援していきたいと考えています」(同氏)
(提供=青潮出版株式会社)