暗号資産取引所バイナンス(Binance)は先月30日、米IRS-CI(内国歳入庁犯罪捜査部)サイバー犯罪部元特別捜査官を起用したと発表した。

2名の起用でバイナンスは現在取り組んでいるコンプライアンス体制の強化を目指す。共にバイナンスの調査チームに加わることになる。

バイナンス、米IRS特別捜査官を2名起用 コンプライアンス体制の強化目指す
(画像=月刊暗号資産)

新たに採用されたのは、Tigran Gambaryan氏とMatthew Price氏。

Gambaryan氏は特別捜査官として、10年間に渡り国家安全保障、テロ資金調達、個人情報保護、児童ポルノの配布、脱税、銀行機密法違反などの事件を調査してきた。また、闇サイト・シルクロード、ビットコイン取引所・Mt.Goxのハッキングなど、数十億規模のサイバー犯罪の調査を指揮してきた。Price氏は国税庁刑事局サイバー犯罪課の特別捜査官として暗号資産関連の国際的なサイバー犯罪、マネーロンダリング、金融犯罪などの捜査を指揮してきた経歴を持つ。

Gambaryan氏はバイナンスのグローバル情報・調査のバイズプレジテントに、Price氏は調査部の上級ディレクターに就任する。

バイナンスは「監査・調査チームは脅威や経済的損失を防止するため、世界中の法執行機関や規制当局と緊密に連携をとりながら、内部・外部調査に力を入れていく」と発表した。

バイナンスは過去、多くの規制当局から規制関連の警告を受けている。複数の欧州国、香港、シンガポールなどではサービスの提供を一部停止。日本でも金融庁が無登録業者として警告を発したこともある。

現在、バイナンスはコンプライアンス体制の強化を図っており、8月末にはオーストラリア法人で元DigitalXのCEOであるLeigh Travers氏を最高経営責任者に任命するなどしてきた。同氏はオーストラリアのブロックチェーン業界団体であるブロックチェーン・オーストラリアの役員を務めていたキャリアがあり、現在もオーストラリア規制当局との関係は緊密だ。

バイナンスの最高経営責任者のChangpeng Zhao氏(通称・CZ)は「コンプライアンスは旅である」と繰り返し発言してきた。暗号資産の世界は不確実な要素が多く、今後発展していくにつれて規制も複雑化し、責任も重くなるだろう、と述べてきた。その一環として、目標を3点挙げてきた。

  1. コンプライアンスチームの強化
  2. コンプライアンス遵守のためのパートナーシップの拡充
  3. 地域ごとの規制の準拠

今回の採用はその一環だ。今後もバイナンスが牽引者として暗号資産業界の安定化を目指していくことに期待がかかる。(提供:月刊暗号資産