4日のWall Street Journalの報道によると、FRB(米連邦準備制度理事会)は早ければ今週にもリテール型CBDC(中央銀行デジタル通貨)の導入による利益とリスクの検討を開始する。リテール型CBDCとは、消費者が使用するデジタル版法定通貨となる。
FRBはこの件について、パブリックコメントを募集するという。CBDCのメリットとリスクについてはFRB内でも意見が分かれている。そのため、デジタルドルの発行がすぐに決定することはなさそうだ。
当初、この件に関するレポートは9月に予定されていた。FRBのパウエル議長は9月22日、レポートについて「間もなく」と発言していた。
しかし、CBDCを発行する決定に関しては「いかなるコストとリスクを上回る明確、かつ具体的なメリット」がある場合のみ行われるだろうと述べていた。
パウエル議長は先週、米上院銀行委員会の公聴会において、デジタルドルの開発を「重要な仕事」とし、具体化するには議会での「法制化」が必要と強調していた。
また、米下院金融サービス委員会でも、支持に転じた発言をした。暗号資産(仮想通貨)支持派として知られるテッド・バッド議員が、パウエル議長が7月の公聴会で「CBDCの開発は民間の暗号資産やステーブルコインの必要性を低下させる可能性がある」と発言したことについて再度問うと、パウエル議長は明確に「暗号資産を禁止するつもりはない」と答えた。暗号資産支持派の一部には、米国のCBDC開発が進めば中国のように、暗号資産の規制の強化を行うのではないかとの憶測が広がっている。パウエル議長はその可能性を全面否定した形だ。
ステーブルコインについては、MMF(マネー・マーケット・ファンド)や銀行預金と比較した。「それらは現在、(金融商品としての)規制の範囲外にある。規制を受けるのは適切なこと。同じような商品は同じ規制を受けるべき」と述べた。
FRBはこれまで基軸通貨ドルを持つ立場からCBDCの研究を続けつつ、発行を急ぐ必要はないとのスタンスを取っていた。今回も慎重に準備を進める基本姿勢は変わらない。中国で「デジタル人民元」の実用化が始まろうとしている状況で、技術競争の最前線に立ち続けるためにはCBDCの開発を一刻でも早く行う必要もあると言える。(提供:月刊暗号資産)