所得税および住民税の節税対策として「ふるさと納税」の活用が謳われている。ふるさと納税は控除を受けることで結果的に節税になるというイメージだ。具体的には、確定申告をすることにより、所得税における所得控除、そして翌年分の住民税の控除を受けることができる。
なぜ、ふるさと納税の利用者が増えているのか。その仕組みをしっかりと理解し、自分で納得したうえで利用する必要がある。
ふるさと納税の仕組み
ふるさと納税とは、自分で選んだ自治体にふるさと納税という名の寄付を行い、その寄付額から2,000円の自己負担額を差し引いた全額が控除される仕組みとなっている。ふるさと納税として利用できる寄付額には、その人の所得と控除の状況によって上限が設けられていることも覚えておきたい。
ふるさと納税の制度が生まれた背景には、生まれ育った地元から離れて生活している人が、地元を応援するために現在住んでいる場所ではなく地元に納税するという考え方がある。もちろん、地元の自治体だけでなく、自分が応援したいと思う自治体を選び、そこに対して寄付を行うことも可能である。
ふるさと納税の控除上限額
上で少し述べたが、ふるさと納税を行う際には所得額で上限額が定められている。仮に年収600万円の方であれば、家族構成に基づいた上限額の目安は以下のとおりとなる。ここで表示している数字は、自己負担額の2,000円を除いた値である。
独身又は共働き | 夫婦 | 共働き+子1人(高校生) | 共働き+子1人(大学生) | 夫婦+子1人(高校生) | 共働き+子2人(大学生と高校生) | 夫婦+子2人(大学生と高校生) |
77,000円 | 69,000円 | 66,000円 | 60,000円 | 57,000円 | 43,000円 |
参照:総務省「ふるさと納税ポータルサイト」より株式会社ZUU作成
ちなみにここでいう「共働き」とは、ふるさと納税を行う本人が配偶者控除および配偶者特別控除の適用外であることを指す。また、「夫婦」とは、ふるさと納税を行う本人の配偶者に収入がない状態を指す。そして、ここでいう「高校生」および「大学生」とは、16歳から18歳の扶養親族もしくは19歳から22歳の特定扶養親族を指すことに注意したい。中学生以下、つまり15歳以下の人数が反映されない理由は、控除額の計算において影響がないからである。
ふるさと納税を行う際の上限額においては、自分の家族構成がどれにあたるのかをしっかりと確認し、それに該当する金額を把握しておく必要がある。上限額を超えたふるさと納税(寄付)については控除の対象外となる。
ふるさと納税を利用することで得られるメリットとは?
ふるさと納税を利用することで、その地域の特産品などを返礼品として受け取ることができるほか、まちづくりなどの取り組みに対する寄付を行うこともできる点がメリットだ。返礼品の中に興味がある品物がなくても、地域活性化や災害復興の支援などに対する寄付を行うことができる点は、寄付の目的の範囲が広まるという点でもメリットといえる。
また、ふるさと納税はさまざまなサイトを利用して行うことができるが、サイトによってはクレジットカードの利用で実績を積むことやサイトの利用でポイントを貯めることができるなど、寄付に付随した恩恵を享受することもできる。
控除を受けるには原則として確定申告が必要
ふるさと納税を利用した際には、以下の流れで控除を受けることとなる。ふるさと納税には確定申告を省略できる「ワンストップ特例」というものが存在するが、ここでは一般的な確定申告の流れを解説する。
- ふるさと納税先を選び、寄付を行う。
- 自治体より、「寄付金受領証明書」が送られてくるので保管しておく。なお、この寄付金受領証明書は確定申告の際に必要となることから、紛失しないように気をつけておく必要がある。ちなみに納付書で寄付を行った場合は払込票が寄付金受領証明書の代わりとなる。
- ふるさと納税の期間(1月1日~12月31日)の翌年の確定申告の時期に確定申告を行う。
- 確定申告を行うことにより、所得税からの所得控除のほか、翌年分の住民税の控除を受けることができる。
ふるさと納税を行った際の控除の計算方法
ふるさと納税の控除は、まず所得税から行われる。具体的には、ふるさと納税額から自己負担分の2,000円を引いた額が所得控除の対象となる。納税者の所得金額に応じた所得税率を乗じて求められる金額の分だけ節税できる。ただし、ふるさと納税額については、総所得金額等の40%が上限となることに注意する必要がある。
次に住民税(基本分)が税額控除される。控除額はふるさと納税額から自己負担分の2,000円を引いた額に10%の税率を乗じることで求められる。
そして住民税(特例分)が税額控除されることとなる。その計算式は以下のとおりである。 (ふるさと納税額 - 2,000円)×(100% - 10%(基本分) - 所得税の税率)
また、住民税からの税額控除についても上限がある。基本分は総所得金額等の30%、特例分は住民税所得割額の20%が上限である。
ふるさと納税におけるワンストップ特例
上で述べたように、ふるさと納税を行っても一定の要件を満たすことで確定申告が不要となる制度がある。これを「ワンストップ特例」という。このワンストップ特例を受けることができるのは、確定申告が不要な給与所得者などで、ふるさと納税(寄付)を利用し、確定申告を行わない場合に限られる。ただし、ふるさと納税を行う際に納税(寄付)先の自治体にワンストップ特例を利用する旨の申請書を提出する必要がある。
また、利用できる自治体は5つに限られ、6つ以上になった際には確定申告を行わなければならない。 また、ワンストップ特例を利用した際には確定申告を行う必要がないため、所得税での控除分については、翌年の6月以降に支払う住民税が減額される中に含まれる点も覚えておきたい。
ふるさと納税を利用する際に知っておきたい注意点
まず、ふるさと納税の特徴が地方自治体に対する寄付であるという点から、最終的に納税額が減ることを実感するのは翌年になる点に注意しておこう。その他の注意点としては以下が挙げられる。
ほかの控除がある場合
例えば年収が2,000万円以上であることや医療費控除などを理由として確定申告を行うなど、確定申告を行う場合においてはワンストップ特例を利用することはできない。
支払いのタイミング
ふるさと納税の寄付額合計は毎年1月1日から12月31日までに寄付した金額となる。したがって年末に対象となる寄付を申し込み、その支払いが年明けになった場合は、その金額は翌年のふるさと納税の寄付金額となる。
その他注意点
上述以外の注意点として、「ふるさと納税のポータルサイトのシミュレーションによって表示される限度額は、あくまでも目安であること」を覚えておこう。さらに、住宅ローン控除の適用を受け、その結果納税額が0円となる場合は、ふるさと納税を行っても節税にならないことや、ワンストップ特例をした後に確定申告をするのであれば、ふるさと納税の寄付金控除も含めて申告しないと節税にならない点に、注意する必要がある。
また、ふるさと納税を含めずに確定申告をしてしまった場合でも、5年以内に更正の請求をすれば還付される。ただその請求時期が遅すぎると翌年6月から徴収される住民税額に反映されなくなるため、遅くなりすぎたら個別に市区町村に行って手続きをすることも覚えておきたい。
ふるさと納税の効果を最大限活用できるのはこんな時
ふるさと納税の効果を最大限活用できるケースは退職時、もしくは家族構成が変わった時である。
退職時
退職し再就職をしない場合、退職した年の所得に応じた住民税を翌年支払う必要がある。退職金については、退職所得として分離課税の対象となるが、退職時の所得が高い場合はその分支払う所得税および住民税も多くなる。したがって、ふるさと納税を利用することで、翌年の税負担を軽くすることにつながる。
扶養家族であった子どもが独立した時
扶養家族であった子ども(特に大学生)が就職し、扶養家族から外れることになった際には、扶養控除の対象外となり、人的な所得控除がその分減ることになる。そうなると、その分納税額は増えることとなることからふるさと納税を利用することで扶養家族から外れた部分の所得控除額の減少を補うことができ、翌年6月からの住民税の負担を軽くすることができる。
確定申告の際に注意すべきこと
ふるさと納税を利用した際の確定申告について、よくある質問が「ワンストップ特例を選択した後に、医療費控除などの確定申告の必要が発生した場合の対応」である。このような場合は、確定申告を行うことでそれが最新の情報として取り扱われることから、医療費控除を含め、これまでのワンストップ特例利用分を含めたふるさと納税に関する確定申告を行うことで、その情報が税務署そして自治体にも届くこととなる。したがって、ワンストップ特例を利用した自治体への連絡等は不要である。
住民税の仕組みをしっかりと理解することが大切
住民税は、その年の所得に応じて計算された税額を翌年6月から納付する仕組みとなっている。この仕組みを理解することが、ふるさと納税を活用する際のポイントとなる。特に定年退職時には引き続き再雇用となる場合であっても、収入は退職前と比べて下がるのが通常である。その際の住民税負担の軽減策として活用するなど、自身のライフイベントにおける収入の変化に応じ、有効に活用できるように心がける必要がある。
税務に関する記述の監修:税理士 鈴木まゆ子
(提供:manabu不動産投資 )
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