ふるさと納税は特定の自治体に寄付することで返礼品が受け取れる制度であり、寄付金の額に応じて所得税・住民税から控除を受けられます。基本的には納税をしていること以外に必要な条件がないため、さまざまな人が利用できます。
不動産投資をしている人もふるさと納税を利用できますが、税を納めるにあたっていくつか注意したいことがあります。本記事ではふるさと納税の仕組みについて簡潔に解説した後、不動産投資をしている人がふるさと納税を利用する場合に理解しておくべき点を解説します。
ふるさと納税の仕組み
ふるさと納税の仕組みについて下記の項目を解説します。
・上限額と自己負担額がある
・申告方法は確定申告とワンストップ特例制度
・具体的な控除額の計算方法
それぞれ詳しく見ていきましょう。
上限額と自己負担額がある
ふるさと納税は寄付の額に応じて上限額が決まります。寄付額が大きいほど控除上限額も大きくなり、上限額以上に納税を行なっても上限額の範囲内で控除され、上限額を超えた寄付額は自己負担額になります。また、上限額の範囲内で納税した場合も2,000円の自己負担額を支払う必要があります。
ただし、自己負担額はふるさと納税の納税額によって変動することはあっても、所得によって増えることはありません。年収500万円の方と年収1,000万円の方の控除上限額は異なりますが、自己負担額は平等ということです。また、ふるさと納税の下限額は2,000円の自己負担額を超える部分について控除を受けられるため2,001円以上です。
申告方法は確定申告とワンストップ特例制度
ふるさと納税の申告方法は2つあり、確定申告とワンストップ特例制度があります。基本的には確定申告する必要がありますが、確定申告が不要な給与所得者かつふるさと納税をした自治体が5つ以下の場合はふるさと納税先の団体に申請するだけでふるさと納税の控除が受けられるワンストップ特例制度の利用が可能です。
具体的な控除額の計算方法
ふるさと納税を確定申告した場合は所得税の控除、住民税の控除の基本分と特例分の3つの控除の合計額が控除額になります。具体的な計算方法は下記の通りです。
・所得税の控除:(ふるさと納税額-2,000円)× 所得税の税率
・住民税基本分の控除:(ふるさと納税額-2,000円)×10%
・住民税特例分の控除:(ふるさと納税額-2,000円)×(100%-10%-所得税の税率)
所得税の税率は納税者に適用されている税率を指します。所得税は累進課税制度であり、課税所得に増加して所得税の税率が高くなる仕組みであるため、人によって所得税の税率は異なります。また、所得税の控除では控除対象となるふるさと納税額は総所得金額の40%が上限であり、住民税基本分は総所得金額の30%が限度になります。
住民税特例分は計算した控除額が住民税所得割額の2割を超える場合のみ「(住民税所得割額)×20%」で計算します。この計算式は自己負担額が2,000円を超える場合に使用する計算式であり、ふるさと納税額が控除上限額をオーバーした場合などに使用されます。
また、ワンストップ特例制度を利用して申告した場合は、所得税からは控除されず、全額が住民税から控除されます。しかし、どちらの申告方法を利用しても控除額は変わらない仕組みです。
このように自身で計算できますが、ふるさと納税のポータルサイトでは年収などを入力するだけで控除上限額を計算するシミュレーターもあるので、簡単に上限額の目安を知りたい方は利用しましょう。
不動産所得がある場合はふるさと納税の上限額が高くなる
給与所得の他に不動産投資で家賃収入を得ている場合は、課税所得額が大きくなり、納税額も増えるのでふるさと納税の上限額も高くなります。給与所得と不動産所得は合算して納税することが原則であるため、不動産所得によってふるさと納税の上限額が変動するのは理解しやすいかもしれませんが、不動産の売却益(譲渡所得)は所有期間が5年以下で売却した場合の短期譲渡所得であるか、5年以上で売却した長期譲渡所得であるかによって税率が異なる分離課税です。
分離課税の場合も納税額は増加しているため、確定申告で税金を納めれば不動産以外の株式などの譲渡所得も含めてふるさと納税の上限額に影響します。ただし、居住用物件を売却した場合に3,000万円特別控除制度を利用するなど、節税制度を利用したことで納税額が増えない場合は上限額に影響はありません。
課税の形態に関わらず、不動産投資で得た利益によって納税額が増加している場合はふるさと納税の上限額が増加するため、不動産投資をしている人はふるさと納税を利用するメリットが大きいと言えるでしょう。
不動産投資をしている人がふるさと納税を行なう場合の注意点
一方、不動産投資をしている人がふるさと納税を行なう場合は下記の点に気をつける必要があります。
・赤字で損益通算をすると上限額が下がる場合がある
・不動産投資をしている場合は確定申告が必要
それぞれ詳しく解説します。
赤字で損益通算をすると上限額が下がる場合がある
不動産投資の赤字と給与所得の損益通算は代表的な節税方法です。不動産投資においては物件の購入費用などを経費にできるので、経費の申告によって不動産所得が赤字になった場合は給与所得が圧縮されて税金の還付が受けられます。
しかし、節税制度を利用すれば納税額は減少するので、ふるさと納税の控除上限額は減少する場合があります。損益通算に関わらず配偶者控除などの控除を受けた場合や、住宅ローン控除など、ふるさと納税以外の節税制度を利用した場合は上限額が減少する可能性があります。
不動産投資をしている場合は、所得の状況によって必ずしも上限額が増加するわけではないので、赤字で損益通算をする際は上限額が減少することを考慮してふるさと納税をする必要があります。
不動産投資をしている場合は確定申告が必要
ワンストップ特例制度は納税先の自治体が5つ以内であれば利用できます。しかし、確定申告が必要ない給与所得者という条件があり、不動産投資は基本的に確定申告が必要な投資であるため、ワンストップ特例制度は利用できません。
また、確定申告をする場合は寄附金受領証明書が必要です。この証明書は基本的に自治体から返礼品とは別に送付されます。確定申告の際に必要になる書類ですので、紛失に気をつけて保管しましょう。万が一、紛失した場合は自治体に再発行を依頼する必要がありますが、再発効までに時間がかかる上に自治体によって対応も異なるので、紛失すると適切な申告ができない可能性があります。
自身の所得を把握してふるさと納税を利用する
不動産投資の家賃収入は将来の利益を予測しやすく、給与所得と合算して自身の年間所得も把握しやすいため、ふるさと納税の控除上限額も正確な額が求めやすくなります。ふるさと納税は控除上限額を超過すると自己負担額が増えるため、自身の控除上限額を理解してその範囲内で寄付することが大切です。
控除上限額の範囲内でふるさと納税を効率的に利用することで、自治体からさまざまな返礼品を受け取れます。不動産投資で納税額が増加している方は、ぜひふるさと納税を利用してみてはいかがでしょうか。
(提供:Incomepress )
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