国民年金や厚生年金などの公的年金に加えて、保険金を年金形式で受給できる個人年金保険をご存じでしょうか。退職後の将来に不安を抱えている方が老後に備えて資金を準備することができる保険です。公的年金だけで生活費を賄うことが難しいと考えている方は加入するメリットがあります。

しかし、個人年金保険にはデメリットもあるので、メリットだけでなくデメリットも理解した上で加入しなければ後悔するかもしれません。本記事では個人年金保険の種類も含めた概要と3つのメリット・デメリットを解説します。

個人年金保険とは

個人年金保険は入ったほうがいい? 3つのメリットとデメリット
(画像=beeboys/stock.adobe.com)

個人年金保険とは契約時に決めた年齢まで保険料を払い、定められた条件に基づいて保険金を年金形式で受け取れる貯蓄型の保険のことです。一般的には60歳~70歳までを期限に保険料の払い込みを開始し、60歳代以下を対象とすることが多いですが、商品によって年齢の制限が異なるので、中には80歳代で加入できる個人年金保険もあります。

個人年金保険は年金ではなく任意で加入する保険です。公的年金とは異なり、個人年金保険にはさまざまな種類があり、商品性も異なります。年齢も含めた契約の条件に加えて、保険料、保険金額も異なるので、個人年金保険に加入する場合はそれぞれの商品性を理解して加入を検討する必要があるといえるでしょう。

個人年金保険の種類

個人年金保険にはさまざまな商品があるため、商品の数だけ種類があるといえます。しかし、2つの分類分けによって商品の特徴を説明することが可能です。1つ目は年金の受取形式や保険の運用方法による分類で、下記の2つの個人年金保険です。

・定額年金
・変額年金

定額年金は契約時点で将来の年金額が確定し、変額年金は保険の運用状況によって将来の年金額が変動します。変額年金は元本確保の特約がない場合は、元本割れのリスクもあるので注意が必要です。

2つ目は年金の受取期間や、被保険者が受給期間中に死亡した場合の保険金の扱いによる分類で、下記の3つの個人年金保険です。

・確定年金
・有期年金
・終身年金

確定年金は保険金の受取期間が決められており、被保険者が死亡した場合も受取期間に基づいて遺族に年金を支給する仕組みです。有期年金は確定年金と同様に受取期間が定められていますが、被保険者が死亡すると遺族は保険金を受け取れません。また終身年金も同様に遺族が保険金を受け取れませんが、被保険者が生存している限り保険金が支給されます。

この分類に従えば、契約時に月額85,000円と年金額を定めた被保険者が生存する限り受け取れる個人年金保険は、定額年金かつ終身年金と判断できるようになります。

個人年金保険のメリット

個人年金保険のメリットは3つあります。

・老後の生活費を年金形式で受け取れる
・節税ができる
・年金受取前に死亡した場合でも死亡給付金が貰える

それぞれ詳しく解説します。

老後の生活費を年金形式で受け取れる

個人年金保険は保険金を年金形式で受け取れるため、老後の生活において公的年金以外に生活費に充てられる資金が増えます。定額年金であれば最後まで保険料を支払えば資金を用意できるので、安定した方法で老後の資金を準備することができます。

節税ができる

個人年金保険料の保険料は生命保険料控除の対象となり、所得控除が受けられます。所得控除とは、一定の要件に当てはまる個人年金保険料などの経費を所得から差し引くことができる制度です。税額控除という制度もありますが、こちらは税金から直接一定の金額を差し引くので所得控除とは異なります。

生命保険料控除の控除額は、2012年1月1日以後に締結した保険契約であれば下記の通りです。

年間の支払保険料控除額の計算方法
20,000円以下全額
20,000円超 40,000円以下支払保険料等×1/2+10,000円
40,000円超 80,000円以下支払保険料等×1/4+20,000円
80,000円超一律40,000円

また、個人年金保険の保険料で所得控除を受けるためには下記の条件も満たす必要があります。

・受取人が本人または配偶者
・保険料の支払期間が10年以上
・受取開始年齢が60歳以上
・保険金の受取期間が10年以上

老後の資金準備だけでなく、保険料の支払期間中は節税に利用できるので条件と控除額について確認しましょう。

年金受取前に死亡した場合でも死亡給付金が貰える

年金の受取開始日の前に被保険者が死亡した場合でも死亡給付金が貰えるため、遺族に対する保険にもなります。死亡給付金は個人年金保険によって死亡時点での払込保険料の総額を上回るものと同額程度のものと下回るものがあります。

基本的には保険料の総額を給付金が上回る商品が一般的です。死亡給付金が抑えられている商品は、年金額や保険金の支給期間を優遇するなど別のメリットを持っているケースが大半になります。

個人年金保険のデメリット

一方で、個人年金保険のデメリットは3つあります。

・インフレリスクがある
・中途解約すると元本割れする可能性がある
・保険金は課税の対象となる

それぞれ詳しく解説します。

インフレリスクがある

変額年金は保険金が保険の運用成果に依存し、定額年金は契約時に保険金が確定します。定額年金のほうが安定しているのでメリットが大きいと考えるかもしれませんが、インフレに弱いリスクがあります。

例えば、30年後に受け取る定額年金を組む場合、現在の物価と30年後の物価が同じである保証はありません。インフレが発生すれば金額は契約通りでも、契約時と比較して保険金の価値が下がってしまいます。個人年金保険の定額年金はインフレに弱いため、インフレに強い資金準備と並行して行えば安定しやすくなります。

中途解約すると元本割れする可能性がある

年金の受取前に個人年金保険を解約すると解約返戻金が支払保険料の総額を下回り、元本割れのリスクがあります。個人年金保険に限らず保険は中途解約にリスクがあるので、無理のない保険料を設定し、計画的に支払いましょう。

保険金は課税の対象となる

個人年金保険の保険金は課税の対象です。契約者と保険金受取人が同一の場合は所得税が課されますが、異なる場合は贈与税の課税対象になります。具体的には契約者が配偶者のために個人年金保険を契約するケースが考えられますが、年金が支給される初年度に贈与税の対象となり、所得税は非課税となりますが、2年目以降は課税部分が階段状に増加していく形で課税されます。翌年以降も含めれば所得税と贈与税の両方を支払う必要があります。

また、贈与税を支払わないために契約者と保険金受取人を同一の状態に変更した場合は、同じ保険であっても変更前と変更後で課税関係を分けるため、変更後の契約に対する保険金には贈与税はかかりませんが、変更前の契約に関しては贈与税の対象となり課税関係が非常に複雑になります。

個人年金保険は契約の形式を間違えると税金面で損をする場合もあるので、課税関係を理解してから加入することが大切です。

特徴を理解して老後の資金準備に利用する

将来に向けた資金準備の方法は1つではないので、個人年金保険に加入するべきかどうかは他の方法と比較したメリットを考えることで判断しやすくなります。

また、インフレに弱いというデメリットもあるので、インフレに強いといわれている不動産投資と組み合わせることも考えられます。個人年金保険の特徴を理解した上で老後の資金準備の手段への利用を検討しましょう。

(提供:Incomepress



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