バイク王&カンパニーは、一般ユーザーから年間約10万台の中古バイクを買い取り、オークションと店舗で販売している。ユーザーの家まで行って査定する「出張買取」のビジネスモデルで業容を拡大。最近では小売注力と買取車の高付加価値化によって業績が好転し、5期連続の増収が目前だ。今後は売買のみならず、メンテナンスなどバイク周辺の事業をさらに拡大していく。
バイク人気再燃で追い風
高付加価値車輛買取進む
同社は「バイク王」ブランドで中古バイクの買取・販売を全国展開している。この10月に発表された2021年11月期第3四半期の売上高は197億3900万円(前年同期比20・7%増)、営業利益は14億3500万円(同126・9%増)と好調だ。「コロナ禍で密を避けられるアウトドアブームが広がり、それとともにバイクが見直され、業界全体へ追い風となった。そして当社では16年から小売の強化を進めてきており、それが昨年からやっと成果に結びついたと考えています」(石川秋彦社長)
同社はTVCMなどで広げた知名度をもとに、一般ユーザーから電話やネットを通じ中古バイクの査定・買取依頼を受ける。それに基づき全国63店舗の買取・販売複合拠点から社員がユーザーの自宅を訪問し、買取を行う。同社は年間で約10万台の中古バイク買取を行っているが、そのうち8万台以上が原付二種以上(排気量51cc以上)の「高市場価値車輌」だ。買い取った車両は2つのチャネルで販売する。売上の57・9%を占めるのが、業者向けオークションを介した卸売の「ホールセール」。20年11月期の売上は129億4200万円となっている。その一方、売上の39・3%をあげているのが、全国のバイク王店舗で中古車を小売販売する「リテール」だ。リテール販売額は前期比25・6%増の87億7100万円と大きく伸びている。
仕入れ戦略を大転換
小売強化で業績が復活
同社の設立は1994年。当時ほとんどなかった出張買取で中古バイクを仕入れ、オークションで販売する卸売のビジネスモデルで成長。積極的な広告宣伝で知名度を上げつつ、2005年にはJASDAQ市場に上場、06年には東証二部に上場した。
リーマンショック前には全国に買取専門店舗100店以上を展開するが、このころから同業他社との競合が激化。また知名度が高くなったことで、低価格な原付ファミリーバイクの買取が増え、社員1人当たりの生産性が落ち込んだ。店舗の固定コストも負担となっていた。
この状況を打ち破るため、同社は16年を契機に、原付二種以上の買取比率を上げるという仕入れ戦略を実施。また店舗数を減らすとともに、買取専門店の小売併設化を急激に進めた。16年には62店舗中18店舗だった小売併設店を、17年には46店舗まで増やした。
「買取プロセス管理を徹底することで、高市場価値車輌を適正価格で仕入れられる仕組みができた。また、商品を安定提供できる環境が整ったので、16年から17年にかけて一気に小売を加速させました」(同氏)
小売することで販売単価は上がるが、在庫期間が伸びれば経営への負担になる。同社は小売在庫期間を3カ月間と定め、売り切れない商品はホールセール用に回して一定の回転率を維持している。加えて、ホールセール用バイクの整備水準向上にも着手。これによりリテールとホールセール両方の単価が上がり、増収増益につながっている。
売買だけでなく周辺を整備
「体験」売る準備進める
同社は16年を契機に、「バイクを売るならバイク王」から「バイクの“ことなら”バイク王」への脱却を宣言。バイクの買取だけでなく販売および周辺サービスの種類を増やすとしている。「現在バイクマーケットは、新車、中古車、外国車を含めて年間約150万台が流通している状況と考えています。そして50cc以下のファミリーバイクが減り、それ以上のバイクは少しずつ増えている。またバイク免許を取得する人の数も増えていて、マーケットそのものが交通の手段に加えて、趣味趣向で使用される方も増えつつあるのではないかと考えています。その中で当社はこれから小売店舗を通し、アフターサービスなどのソフト面の充実をさらに図っていく」(同氏)
現在、全体の約3分の1の店舗に整備工場を併設し、小売販売前の整備と購入後のメンテナンスを行っている。店舗によってはバイクレンタルも手掛けるようになった。また7月にECサイト「バイク王ダイレクト」をスタートさせ、中古バイクだけでなくバイク用品もネットで買える環境を構築している。今後はバイクと親和性の高いキャンプ用品や、高齢者向けのセニアカーなどの取り扱いも増やしていく。
「『バイクのことなら』の“こと”とは、売買だけでなく体験も含まれる。それを準備していくことで、結果として支持されるような会社になれると思っています。所有するだけでなく、利用、体験の分野でも、当社のサービスが全国津々浦々に提供できるような環境を整えていきたい」(同氏)21年11月期の業績は、売上高247億円(前期比10・5%増)、営業利益は110%増の14億9000万円を見通している。
2020年11月期業績
売上高 | 223億4900万円 | 前期比 11.1%増 |
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営業利益 | 7億0700万円 | 同 235.8%増 |
経常利益 | 8億5900万円 | 同 139.0%増 |
当期純利益 | 5億9400万円 | 同 188.8%増 |
2021年11月期業績予想
売上高 | 247億円 | 前期比 10.5%増 |
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営業利益 | 14億9000万円 | 同 110.6%増 |
経常利益 | 16億5000万円 | 同 91.9%増 |
当期純利益 | 10億9000万円 | 同 83.4%増 |
※株主手帳12月号発売日時点
(提供=青潮出版株式会社)