トラスト【3347・東2】
川村賢司社長

 トラストは、アフリカ・オセアニアを中心とした海外市場に国産中古車を輸出するとともに、国内レンタカー事業や南アフリカ共和国でのカーディーラー事業を展開している企業だ。売上の約6割を占めるレンタカー事業が好調だが、今後は祖業である中古車輸出も再強化する方針。22年3月期の売上高は前期比21.1%増の243億3600万円を予定している。

川村賢司社長
Profile◉川村賢司(かわむら・けんじ)社長
1958年生まれ、大阪府出身。99年ホンダベルノ東海(現VTホールディングス) 監査役。2004年アイコーエポック代表取締役。09年エルシーアイ専務取締役。13年エスシーアイ取締役。17年日産サティオ埼玉代表取締役、日産サービス埼玉代表取締役。19年トラスト代表取締役社長(現任)。

世界150カ国に国産中古車輸出
「Jネット」を全国180店舗展開

 同社は自動車ディーラーグループのVTホールディングス(7593)を親会社に持つ企業で、中古車輸出事業、レンタカー事業、海外自動車ディーラー事業の3事業を展開している。

 中古車輸出事業ではアフリカ、北中南米、オセアニアを中心とした世界各国の個人消費者向けに、WEB サイトを通じて日本製中古自動車を輸出している。これまで150カ国以上に輸出を行っており、21年3月期は約4000台を輸出。21年3月期の売上は50億2300万円で全体の約2割となっている。

 レンタカー事業では、「Jネットレンタカー」のブランドを全国展開。直営とFC合わせて179店舗、保有台数は約2万台となっており、さらに新規出店を進めている。21年3月期の売上は124億7200万円。売上の約半分はVTホールディングスグループディーラーの代車需要だ。一般消費者向けにもTV、インターネットでの広告で知名度を拡大しており、近年は北海道にも進出。業績が好調に推移している。

「マーケット的に伸びているレンタカーだけでなく、『Jネットカーズ』ブランドの中古車直販もしっかり伸びてきている。今後は北海道など新展開した先が徐々に寄与していくので、順調に業績を拡大していけると考えています」(川村賢司社長)

 海外自動車ディーラー事業では、南アフリカ共和国でスズキディーラー4店舗を展開。2020年にヨーロッパ車の扱いを止めスズキ車のみのディーラーに集約したところ、収益が順調に推移し、今期は黒字化を予定している。21年3月期は新車約1200台、中古車約900台を販売。セグメント売上は27億8500万円で全体の約1割となっている。

トラスト【3347・東2】
▲「Jネットレンタカー」を全国規模で展開

輸出モデルをBtoBへ変換
新興国マーケットで販売拡大

 同社は1988年に創立し中古自動車の輸出を開始。海外の個人顧客へ直接中古車販売を行うBtoCのビジネスモデルを作り上げた、中古車輸出業界ではパイオニア的存在だ。2003年にはVTホールディングスの子会社となり、04年に東証マザーズに上場。09年にはJネットレンタリースを子会社化し、15年には東証二部に市場変更となった。

 同社が採用しているBtoCでの輸出は、前受金制で代金の未収がなく手堅い。しかし、この10年間で日本から輸出される中古車の数が倍増し、BtoBで中古車輸出を行う同業他社との競争が激化、販売業績が伸び悩んでいる。

「BtoCは当社の基幹のビジネスモデル。しかし一方で、以前発展途上国と言われていた国も成長を遂げ、現地ディーラーの数も多くなってきた。当社もBtoB取引を軌道にのせ、現地ディーラーや顧客と新しいパイプを作っていかなくては。BtoBは売掛金が発生するため、できる限り回収の堅いマーケットを探しながら進めていきます」(同氏)

 次のマーケットとして同社が期待を寄せる国がバングラディシュだ。同国は輸出入の決済方式にLC(銀行を仲介とした信用状取引)を採用しているので、代金の取りはぐれがないという。今年は1500台の輸出を計画している。

「バングラディシュはアフリカ諸国に比べると、比較的新しく価格の高い中古車が売れます。同国のマーケットを開拓するのは大変でしたが、需要が高く成長性が大きい国で、いま非常に売上が伸びてきている。これからまだまだ成長すると思っています」(同氏)

トラスト【3347・東2】
(画像=株主手帳)

新規出店促進で店舗網を構築
中古車輸出で売上100億円を

 同社の22年3月期の売上高は243億3600万円を計画。好調なレンタカー事業では、さらに既存出店エリアと空白エリアへの新規出店を推進、利便性の高い店舗網を構築していく。また企業向けに代車事業だけでなく商用車レンタルも積極的に展開。一部店舗では一般消費者向けに試験的なオートバイレンタルもスタートしている。海外自動車ディーラー事業では、既存4店舗の売上拡大と利益向上を目指す。

 中古車輸出事業では、21年3月期のセグメント売上の約1・5倍の75億円を目標としている。WEBサイトを通じたBtoC販売の拡充と継続的なBtoB販売先の新規開拓、部品販売の強化により売上の拡大に努める予定だ。

「中期計画として、24年3月期には、中古車輸出事業だけで100億円の売上を目指しています。海外市場は飽和しているという人もいるが、展開次第ではまだまだ伸びる。そこに行く道のりをしっかり見つけて、当社の輸出事業をもう一度成長事業にしたいと思っています」(同氏)

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▲南アフリカ共和国ではスズキ車のディーラーを手掛ける(写真はBryanston店)

2021年3月期 連結業績

売上高200億8000万円前期比 0.3%減
営業利益5億2700万円同 63.6%減
経常利益5億4100万円同 60.7%減
当期純利益4900万円同 85.9%減

2022年3月期 連結業績予想

売上高243億3600万円前期比 21.2%増
営業利益16億1100万円同 205.3%増
経常利益14億9500万円同 176.3%増
当期純利益4億700万円同 715.1%増

※株主手帳12月号発売日時点

(提供=青潮出版株式会社